防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(11)

2011年3月11日14時46分頃(日本時間、以下同じ)、東北地方の太平洋沖(北緯38.32°、東経142.37°、深さ32km)を震源とする、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が発生しました(地震の規模・位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宮城県栗原市で震度7、岩手県から栃木県にかけての広い範囲で震度6強が観測されるなど、極めて強い揺れが広範囲に渡って観測されました。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しています。ここでは、震災後の2011年3月13日観測のデータから浸水域を抽出した結果および2011年3月18日22時18分頃に新たに観測されたデータの解析結果を報告します。

(1)2011年3月13日の浸水域抽出結果

震災後の2011年3月13日22時11分頃に観測されたデータと震災前の2011年3月3日観測のデータを比較することにより、津波による浸水域と思われる領域を抽出しました。表1に抽出した浸水域の面積を、図1、2にそれぞれ宮城県、福島県の浸水域抽出結果を示します。表1中の番号は図1、2中に示した番号に相当します。
表1:2011年3月13日観測のデータから抽出した浸水域の面積
番号 県名 地域名 面積[km2]
1 宮城県 仙台塩釜港 3.7
2 名取川北部 24.3
3 名取川南部 43.3
4 亘理町 13
5 山元町 20.7
6 新地町 2.5
7 福島県 相馬市 *
8 相馬市南部 0.4
9 相馬市-南相馬市境 5.7
10 南相馬市鹿島 3.4
11 南相馬市真野川南 1.4
12 南相馬市原町火発南 0.6
13 南相馬市原町 2.4
14 南相馬市原町区米々沢 2.5
15 南相馬市小高区小高 5.5
16 南相馬市小高区浦尻 3.8
17 浪江町-双葉町 7.1
*元々大部分が水域であるため面積を算出していない。
図1: 2011年3月13日観測のデータから抽出した宮城県の浸水域
図1: 2011年3月13日観測のデータから抽出した宮城県の浸水域 (クリックで拡大画像へ) (黄色枠線内が浸水域を示す。画像は震災前の2011年3月3日観測の画像を赤に、震災後の2011年3月13日観測の画像を緑、青に割り当てたカラー合成画像)
図2: 2011年3月13日観測のデータから抽出した福島県の浸水域
図2: 2011年3月13日観測のデータから抽出した福島県の浸水域 (クリックで拡大画像へ) (黄色枠線内が浸水域を示す。画像は震災前の2011年3月3日観測の画像を赤に、震災後の2011年3月13日観測の画像を緑、青に割り当てたカラー合成画像)

(2)2011年3月18日の観測結果

2011年3月18日22時18分頃に新たに観測されたデータの解析結果を以下に報告します。図1に観測位置を、図2、3に震災前観測データとのカラー合成画像の広域図を、図4に拡大図を示します。
図1: 2011年3月13日観測のデータから抽出した宮城県の浸水域
図1: 全体図 (クリックで拡大画像へ)

図1は今回観測した範囲を示したもので、赤枠がPALSARでの観測位置を示しています。

図2: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図
図2: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図 (R:2011年3月3日観測 入射角34.3度 GB:2011年3月18日観測 入射角50.0度) (クリックで拡大画像へ)

図2は、PALSARでの災害前の2011年3月3日観測の画像を赤に、災害後の2011年3月18日の画像を緑と青に割り当てたカラー合成画像です。図2の黄枠の範囲を拡大したものを図3に示します。

(2)2011年3月18日の観測結果

図3: 宮城県(左)~福島県沿岸部(右)のカラー合成図 (クリックで拡大画像へ)
図1: 2011年3月13日観測のデータから抽出した宮城県の浸水域
図3(a): 宮城県
図2: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図
図3(b): 福島県沿岸部
図3のうち、比較的津波被害が大きかったと見られる沿岸部を更に拡大したものを図4(c)~(g)に示します。
図4(c): 宮城県仙台市北東部の拡大図
図4(c): 宮城県仙台市北東部の拡大図
図4(d): 名取市・岩沼市・亘理郡付近の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(d): 名取市・岩沼市・亘理郡付近の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(e): 相馬市東部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(e): 相馬市東部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(f): 南相馬市北部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(f): 南相馬市北部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
(c)は仙台港付近、(d)は名取市から亘理郡、(e)は相馬港・松浦湾周辺、(f)および(g)は南相馬市付近のカラー合成画像です。海岸付近の赤色に変色している箇所は災害後に反射が弱くなったところで、津波による冠水の被害がまだ続いている可能性が考えられます。
図4(g): 南相馬市南部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(g): 南相馬市南部の拡大図 (クリックで拡大画像へ)

JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

なお、取得された画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体等に提供しています。

*1 パルサー (PALSAR):

フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。

©JAXA EORC