防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるフィリピンの台風被害にともなう観測結果

2009年9月26日にフィリピンのマニラ北部を台風16号「ケッツァーナ」が通過し、首都圏を中心に記録的な大雨をもたらしました。この影響により、各地で洪水や浸水などの被害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(以下, JAXA)では9月26日午後11時35分(日本時間,以下同じ)頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による観測を実施しました。

図1左は、2009年9月26日(水害後)にPALSARで取得されたフィリピン・マニラ近郊の画像、図1中央は2009年6月26日(水害前)、図1右は水害前後のカラー合成画像です。この観測は二重偏波モード(FBD HH + HV)を用いて行われ(注1)、図1右は水害後の水平-水平偏波(HH)の画像に赤、同じく水害後の水平-垂直偏波(HV)の画像に緑、水害前の水平-水平偏波(HH)の画像に青を割り当てたカラー合成画像で、青色や水色が浸水域の可能性が高い地域です。赤色や黄色は農作地などの浸水していない土地、緑色が森林や畑など植生の多い地域、淡い緑色やピンク色は市街地を表していると考えられます。
図1: 水害前後の観測結果とカラー合成画像
図1: 水害前後の観測結果とカラー合成画像 (クリックで拡大画像へ) 左 :水害後(2009年9月26日) 中央:水害前(2009年6月26日) 右 :水害前後カラー合成画像(R:G:B=災害後[偏波HH]:災害後[偏波HV]:災害前[偏波HH])
図1右の白枠1部分を拡大したのが図2で、暗い領域がベイ湖の湖面です。このベイ湖周辺の陸地に青色部分が所々広がっており、湖面に近い陸地が浸水しているものと考えられます。
図2: 図1右の白枠1の拡大図
図2: 図1右の白枠1の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図2で示されたベイ湖北部の白枠2を拡大したのが図3で、「陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるフィリピンの台風被害にともなう緊急観測結果」図3にて示されたマニラの南東約30kmにあるCanioganという町付近を表しています。湖面に接する陸地が青色で表されており、広く浸水しているものと思われます。その浸水域は明るいピンク色で表される市街地に迫っていることが推測されます。
図3: 図2の白枠2の拡大図
図3: 図2の白枠2の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4は図1右の白枠3の拡大図で、マニラ北部の内陸部に位置します。青色で表されている部分が浸水域と思われ、このような内陸部でも広い地域に渡り浸水している状態であると考えられます。
図4: 図1右の白枠3の拡大図
図4: 図1右の白枠3の拡大図 (クリックで拡大画像へ)

JAXAでは今後も「だいち」によるフィリピンの台風被害に関する観測を継続していく予定です。

(注1): PALSARは、電界が地面と平行に振動する「水平偏波」と地面に垂直に振動する「垂直偏波」と呼ばれる2種類の電波を観測に用いることができます。今回用いた二重偏波モードFBD(HH+HV)では、衛星から水平偏波(H)を地上に照射し、地上からの反射波の水平偏波(H)と垂直偏波(V)をそれぞれ受信することにより2種類の画像を同時に取得します。これにより、1つの偏波のみ受信する単偏波モードと比べ、地表の状態についてより多くの情報を得ることができます。また、この解析では水面が暗く写るという合成開口レーダの特性を利用し、災害前に明るく、災害後に暗くなった領域を浸水域と推定しています。レーダ画像は、暗い領域が必ずしも完全に水域と一致するとは限りませんが、広い範囲の状況を大まかに把握することに役立てられています。これらの観測データの一部は国際機関にも提供されました。

図5: 全体図
図5: 全体図 青枠はPALSAR画像の観測位置を示す。(クリックで拡大画像へ)
©JAXA EORC