防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるインドネシア・ムラピ山の噴火に伴う緊急観測結果

2010年10月26日、インドネシア・ジャワ(Java)島の中央部に位置するムラピ山(Gunung Merapi, 2968メートル)で大規模な噴火が発生しました。噴火はその後も断続的に続いており、火砕流などによる死者は11月5日現在で70名を超えたと報じられています。

宇宙航空研究開発機構(以下、 JAXA)では11月2日午前0時29分(日本時間、以下同じ)頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ (PALSAR; パルサー)による観測を実施しました。
図1: 全体図
図1: 全体図 赤枠がPALSAR画像の観測位置を示す。

1. 干渉SARによる地殻変動検出

噴火に伴う地殻変動を検出するため、噴火前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析を行いました。図2は噴火前(2010年9月17日)と噴火後(2010年11月2日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)です。赤枠付近を拡大したものを図3に示します。
図2: PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)
図2: PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)(クリックで拡大画像へ)
解析の結果、山体の膨張や収縮といった地殻変動を示す干渉縞は捉えられませんでしたが、山頂の周辺東~南側斜面にかけて干渉性の低下が見られました。これは、火山性の噴出物によって地表面状態が変化した影響である可能性を示しています。
図3: ムラピ山付近拡大図
図3: ムラピ山付近拡大図(クリックで拡大画像へ)

2. 差分抽出

噴火に伴う地表面の変化を検出するため、噴火前後のPALSAR強度画像を比較して差分抽出を試みました。図4は噴火前(2010年9月17日)の強度画像を緑色と青色に、噴火後(2010年11月2日)を赤色に配色したカラー合成図です。
図4: 噴火前後の強度画像による差分抽出
図4: 噴火前後の強度画像による差分抽出 噴火前(2010年9月17日)を水色(青+緑)、噴火後(2010年11月2日)を赤色に配色したカラー合成画像(クリックで拡大画像へ)
図5は図4のムラピ山周辺を拡大したものです。ムラピ山の南側斜面の広い範囲で赤色になっている(噴火前と比較して、噴火後のほうが輝度値が高い)一方、山頂周辺の南南東斜面など、水色になっている(噴火前よりも噴火後のほうが輝度値が低い)部分も見られます。これらはいずれも火山活動に伴う地表面状態の変化を捉えている可能性があります。
図5: ムラピ山周辺の変化抽出画像
図5: ムラピ山周辺の変化抽出画像(クリックで拡大画像へ)

JAXAでは今後も「だいち」によるムラピ山噴火に関する観測を継続していく予定です。

(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮像が可能です。

(注2) 差分干渉処理:
PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星-地面間の距離』に変化があった場合、それを 高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星-地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。青→緑→黄→赤→青の色の変化は地面が衛星に近づくことを、逆の色の変化は地面が衛星から遠ざかることを表わします。(今回の観測では画像の西側から東側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく場合は西向きの水平変動もしくは隆起を、地面が衛星から遠ざかる場合は東向きの水平変動もしくは沈降、を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を示します。

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