防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるマヨン山火山活動にともなう観測結果

フィリピン・ルソン島アルパイ州のマヨン山において、2009年12月14日から火山活動が活発化し、20日には火口から流れ出た溶岩が確認されました。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)では2010年1月20日午後11時26分頃(日本時間、以下同じ)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による当該地域の観測を実施しました。本観測で得られた画像と、2009年12月5日に取得した同じ軌道から得られた画像とを比較し、火山活動にともなう地殻変動検出及び被害域抽出を実施しました。
図1: 全体図
図1: 全体図 赤枠がマヨン山の位置であり、図2の領域を示す。 (クリックで拡大画像へ)

図2左は差分干渉処理から得られたコヒーレンス画像です。一般的にコヒーレンス画像は、取得された異なる時期の画像の地表面状況が、どの程度同じであったかの指標となります。地表面状況がほぼ同じところは白くなり(干渉性が良い、と言います)、変化したところは黒くなります(干渉性が悪い)。

マヨン山南東領域(黄色枠内)に周囲に比べて著しく干渉性が悪い領域が確認できます。これは、今回の溶岩流出により地表面状況が変わった結果であり、山頂付近から長さ5km程度、幅にして数百mから1km程度に溶岩が流出したと推定されます。これらの位置、被害状況は、2009年12月25日に実施されたALOS搭載の高性能可視近赤外放射2型(アブニール・ツー)、パンクロマチック立体視センサによる緊急観測結果(*1)とも一致しています。

図2右は差分干渉画像(地殻変動図)です。溶岩流跡に相当するところに変動しているようにみえる筋状の領域が確認できますが、これは干渉性が悪いためのノイズと考えられます。今回の火山活動による大きな地殻変動は、確認されませんでした。
図2: (左)コヒーレンス画像。(右)差分干渉画像。
図2: (左)コヒーレンス画像。(右)差分干渉画像。 (クリックで拡大画像へ)
図3は、PALSARによる溶岩流出前後の変化抽出画像です。この画像は溶岩流出後(2010年1月20日観測)のPALSAR画像を赤色に、溶岩流出前(2009年12月5日観測)のPALSAR画像を緑色と青色に着色してカラー合成したものです。地表面の変化を反映し、レーダの反射強度が変化する性質があります。画像中の赤や青に色づいている領域は、2枚の画像のレーダの反射強度が変化したことを表し、溶岩流出前後で何らかの変化が発生したことを表します。
図3: 溶岩流出前後のPALSAR変化抽出画像
図3: 溶岩流出前後のPALSAR変化抽出画像 (クリックで拡大画像へ)
図4左は図3のマヨン山周辺を拡大した画像です。溶岩流出によりレーダの反射が強くなり、溶岩流跡として赤色が強調されています。この画像から推定される溶岩流出範囲は、図2左のコヒーレンス画像から推定される範囲とよく対応しています。また、等高線に相当する情報を付加した図4右より、溶岩流が等高線とほぼ垂直に交わり、斜面に沿って流れた様子が確認できます。
図4: マヨン山周辺の拡大図
図4: マヨン山周辺の拡大図 左:変化抽出画像、右:変化抽出画像に等高線に相当する情報を付加した画像 (クリックで拡大画像へ)
図5は2009年12月5日の画像と2010年1月20日の画像を重ねてアニメーション表示した画像で、約1秒で切り替わります。溝に沿った溶岩流出跡(画像赤枠内)が確認できます。
図5: マヨン山周辺画像のアニメーション
図5: マヨン山周辺画像のアニメーション (約1秒間隔で2009年12月5日の画像と2010年1月20日の画像が切り替わります)

今回の結果は、前回の結果以上の情報を提供するものではありません。しかしながら、前回と同じ結果であるということは、画像から推定された溶岩の流出範囲が正しかったということの裏づけとなるものです。

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