防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による2010年チリ地震にともなう緊急観測 (8)

2010年2月27日15時34分頃(日本時間、以下同じ)、チリ中部の沿岸(チリの首都サンティアゴの南西325km、深さ35km)を震源とするマグニチュード8.8の地震が発生しました(地震の規模及び位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は地震による被害状況を把握するため、3月31日13時頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による緊急観測を実施しました。本観測では2010年2月13日に取得した同じ軌道からの画像と比較し、地殻変動検出を実施しました。「だいち」は夜間に南から北へ飛行しながら、大きな被害の報告されている都市・コンセプシオンを含む領域を観測しました。なお、本解析には高精度軌道情報を使用しました。

青枠は図2で示すPALSAR観測領域を表します。赤い星印は本地震の震央位置を示しています。
図1: 全体図(数値標高データはSRTM3を使用)
図1: 全体図(数値標高データはSRTM3を使用) (クリックで拡大画像へ)
図2: (左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)、(右)地震後のPALSAR強度画像 (クリックで拡大画像へ)
図2: (左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)
図2:(右)地震後のPALSAR強度画像

地震に伴う地殻変動を検出するため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析を行いました。図2左は地震前(2010年2月13日)と地震後(2010年3月31日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図2右は地震後の強度画像を示したものです。図2左の差分干渉画像から、コンセプシオンを含む沿岸部に非常に多くの明瞭な干渉縞が確認でき、この画像内で、海岸に向かって少なくとも30周期(約3.5m)の衛星に近づく向きの地殻変動(隆起もしくは西向きの水平変位を含む※注2)があったことが分かります。今回「だいち」による観測から、コンセプシオン周辺の沿岸部で3.5m以上の地殻変動が生じた事が明らかになりました。

JAXAでは今後も「だいち」によるチリ地震に関する観測を継続していく予定です。
図3: これまでに実施した観測の結果(昇交軌道のみ)。赤枠が今回の観測領域
図3: これまでに実施した観測の結果(昇交軌道のみ)。赤枠が今回の観測領域 (クリックで拡大画像へ)

(注1) パルサー(PALSAR):

フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。

(注2) 差分干渉処理:

PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星-地面間の距離』に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星-地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。青→緑→黄→赤→青の色の変化は、地面が衛星に近づくことを表わします。(今回の観測では画像の西側から東側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく、すなわち西向きの水平変動もしくは隆起を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を示します。

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