防災・災害

「だいち2号」とCOSMO-SkyMedによる霧島山新燃岳の観測結果について

Posted: Mar. 19, 2018, 9:00 (UTC)
Updated: Mar. 22, 2018, 5:00 (UTC)

概要

  • 2018年3月1日、九州南部にある霧島山新燃岳が噴火した。
  • JAXAでは3月6日より「だいち2号」による観測を行い、噴火口内から溶岩ドームが形成されている様子を捉えた。
  • イタリアのCOSMO-SkyMedによる緊急観測の要請を行い、提供されたデータから溶岩ドームの拡大している様子がより明瞭に捉えられ、その移動量を検出した。
  • (2018年3月22日追記)3月19日のCOSMO-SkyMed観測画像から、火口外へ流出した溶岩はまだ流動しており、火口内の溶岩ドームの拡大速度は減速していることが確認された。
  • 夜間あるいは雲や噴煙の下での地表の様子を観測可能な「だいち2号」やCOSMO-SkyMedの特性を生かし、火山活動の監視に貢献している。

2018年3月1日、九州南部に位置する霧島山新燃岳(図1)が噴火しました。その後、噴火が断続的に起こり、3月6日には火口内に溶岩が確認され、同日14時30分過ぎに爆発的噴火が発生しました。爆発的噴火は翌日3月7日も続き, 3月9日には火口の北西側から溶岩が流出していることが確認されました。その後、噴火活動は収まりつつあるものの、3月16日午前の段階でも火山性地震が継続しています。

JAXAでは気象庁等の要請に基づき、日本時間2018年3月6日23時30分頃に「だいち2号」(ALOS-2)に搭載されているLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2: パルサー2)で緊急観測を開始し、観測データを関係機関に提供しています。また、JAXAとASI (Agenzia Spaziale Italiana; イタリア宇宙庁)との協定により、Xバンドの合成開口レーダを搭載したCOSMO-SkyMedによる緊急観測の要請を行い、そのデータが提供されています。表1, 表2に観測データの概要を示します。

図1: 九州南部の地図、 赤三角が新燃岳の位置を表す

図1: 九州南部の地図、 赤三角が新燃岳の位置を表す。

表1:だいち2号(ALOS-2)によって観測されたデータリスト
観測時刻(UTC) 軌道番号 観測モード 軌道 観測方向 ビーム番号
2018年1月22日3時18分 23Stripmap 南行 U2-7
2018年3月5日3時18分 23 Stripmap 南行 U2-7
2018年3月6日14時30分 124 Stripmap 北行 U3-11
2018年3月9日3時4分 21 Stripmap 南行 U3-13
2018年3月10日3時25分 24 Spotlight 南行 -
2018年3月10日14時16分 122 Spotlight 北行 -
2018年3月11日14時36分 125Stripmap 北行 U2-8
2018年3月14日3時11分 22 Stripmap 南行 U3-10
2018年3月15日14時23分 123 Stripmap 北行 U3-14
表2:COSMO-SkyMedによって観測されたデータリスト
観測時刻(UTC) 軌道番号 観測モード 軌道 観測方向 ビーム番号
2018年3月7日20時12分 Spotlight 北行 24 S2
2018年3月8日8時53分 Spotlight 南行 23 S1
2018年3月9日21時12分 Spotlight 北行 27 S4
2018年3月10日22時56分 Spotlight 北行 17 S1
2018年3月11日8時59分 Spotlight 南行 16 S2
2018年3月12日8時59分 Spotlight 南行 16 S3
2018年3月15日8時59分 Spotlight 南行 16 S4
2018年3月19日8時59分 Spotlight 南行 16 S1
COSMO-SkyMedは同型の衛星4機によるコンステレーションで観測を実施しており, S1-S4は衛星が異なることを示す。
図2は「だいち2号」によって撮像された新燃岳火口付近の観測画像です。撮像日によって観測の方角や角度が異なるため、本記事では「だいち2号」の観測画像のうち、新燃岳の東側から観測(北行軌道左観測,もしくは南行軌道右観測)したものを載せています。噴火前の(1)1月22日の画像と比べて, (2)3月5日の画像では火口内で少し変化があることが見えており、(3)6日には溶岩ドームが形成されたことが確認できました。その後、溶岩ドームは拡大を続け、(4)3月9日の画像からは溶岩ドームが火口の縁まで達し、(5)3月10日の画像からは溶岩が北西方向に流出している様子が捉えられました。溶岩ドームはなおも拡大を続け、(9)3月15日の画像では、火口全体をほぼ埋め尽くすほど広がっています。図3では, この溶岩ドーム拡大の様子をアニメーションでご覧いただけます。
図2:噴火に伴う火口周囲の「だいち2号」による撮像画像。左上の番号は表1と対応する。(クリックで拡大画像へ)
  • 図2: (1)
  • 図2: (2)
  • 図2: (3)
  • 図2: (4)
  • 図2: (5)
  • 図2: (6)
  • 図2: (7)
  • 図2: (8)
  • 図2: (9)
図3は、赤色に6月7日のHV偏波、緑色に5月24日のHV偏波、青色に5月24日のHH偏波の強度画像を割りあてたカラー画像で、火砕流が赤色に見える着色になっています。この図から、山頂から特に西側と南東に向かって火砕流があったことがわかります。また、山頂付近では火山灰の降灰によるものと考えられる変化が見えています。
このアニメーションは異なる角度から撮影した画像を使用しているため、火口外の山体の形状が大きく変化して見える場合があります。火口内の溶岩ドームの拡大の様子を知る目安としてご覧ください。

図3:「だいち2号」の観測画像による火口周囲の変動アニメーション動画

図4はCOSMO-SkyMedによって撮像された新燃岳火口付近の観測画像です。COSMO-SkyMedはより波長の短いXバンド(波長約3.1 cm)のマイクロ波を用いているため, 解像度が非常に高くより細かいものを判断することができます。一連の噴火によって形成された溶岩ドームの輪郭や表面のしわ模様などをより鮮明に確認することができます。3月15日と3月19日の観測画像を比較すると火口外に流出した溶岩はゆっくりと流れていることがわかります。また、火口内の溶岩ドームもまだ拡大しています。図5では3月11日、12日、15日の3枚の画像を用いたアニメーションを示しました。溶岩ドームの拡大している様子がより鮮明にご確認いただけます。

図5:COSMO-SkyMedの観測画像による火口周囲の変動アニメーション動画

図4:噴火に伴う火口周囲のCOSMO-SkyMedによる撮像画像。左上の番号は表2と対応する。(クリックで拡大画像へ)
  • 図4: (1)
  • 図4: (2)
  • 図4: (3)
  • 図4: (4)
  • 図4: (5)
  • 図4: (6)
  • 図4: (7)
  • 図4: (8)
図6は火口内に噴出した溶岩の移動量をピクセルオフセット法によって求めたものです。ピクセルオフセット法とは2枚の画像を精密に位置合わせした際の局所的なズレを変位量として検出する手法です。この手法をCOSMO-SkyMedによって撮像された画像に適用したところ、3月11日から12日の24時間の間に電波照射方向(おおよそ西方向)に最大約12 m、衛星進行方向(おおよそ南方向)に最大約15 mほどの動きが確認されました。この動きは図5のアニメーションでもご確認いただけます。
図6

図6:COSMO-SkyMedによって3月11日と12日に撮像された画像を用いたピクセルオフセット法による溶岩の移動量。左は電波照射方向の移動量、右は衛星進行方向の移動量を示している。

2018年3月22日追記

図7は図6と同様に溶岩の移動量をピクセルオフセット法によって求めたものです。3月15日から19日の4日間に電波照射方向(おおよそ西方向)に最大約15 m、衛星進行方向(おおよそ南方向)に最大約20 mほどの動きが確認されました。これは4日間の累積変位ですので、溶岩の移動速度としては減速していることになります。
図7

図7:COSMO-SkyMedによって3月15日と19日に撮像された画像を用いたピクセルオフセット法による溶岩の移動量。左は電波照射方向の移動量、右は衛星進行方向の移動量を示している。

JAXAでは今後も「だいち2号」で新燃岳の観測を続けていく予定です。

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