防災・災害

「だいち2号」によるミャンマー洪水被害の観測結果について

概要

  • ミャンマーで発生している洪水について、JAXAは2015年7月22日から継続的に「だいち2号」による観測を実施している。
  • 広域観測モードの観測により浸水域を検出し、広範囲にわたる被災状況を把握した。
  • 高分解能モードの観測により、サガイン地区、マンダレー地区、シャン州、バゴー地区、チン州、モン州などにおける被災状況をより高い解像度で把握した。

ミャンマーで2015年7月下旬から発生している洪水について、JAXAはセンチネル・アジアおよび国際災害チャータを通じた現地機関からの要請に基づき、7月22日から継続的に「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ、パルサー2(PALSAR-2)による観測を行い、データを現地の防災機関(Myanmar Peace CenterおよびMyanmar Earthquake Committee)に提供しました。

また、データの提供と併せて、JAXAでも独自にデータの解析を行い、パルサー2のデータから被災域の抽出を行いました。
図1: 各図の観測範囲

図1: 各図の観測範囲

図2は2015年7月24日に広域観測モード(100mの分解能で東西約350km幅を観測)で取得された画像と、洪水前の2015年4月3日に同じ条件で取得された画像を比較したもので、ミャンマーのサガイン地区とマグウェ地区の全体、およびその周辺の8つの州や地区の一部が含まれます。観測範囲の図を図1に示します。

パルサー2の画像では水面が写りにくい(画像上で暗くなる)性質があることから、洪水後に画像が暗くなっている領域は、浸水によってできた水面を表している可能性があります。

マウス等の操作により、画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、洪水前後の画像を視覚的に比較することができます(対応していないブラウザでは、単純に2つの画像が並べて表示されることがあります)。

図2: ミャンマー・サガイン州、マグウェ州周辺の洪水前後の画像比較

また、この観測は、地表の状況をより詳しく把握するために二偏波モード(HH+HV)を用いています(注)。図3左は、洪水後のHH偏波を赤、洪水後のHV偏波を緑、洪水前のHH偏波を青に割り当てて合成した偏波カラー合成画像です。この画像では、大まかに、青色が浸水によってできた水面、赤や茶色は森林部や都市部の浸水(水没はしていないが木や建物の周囲に水がある状態)、緑色が通常の森林、明るい白やピンク色は通常の市街地を主に表していると考えられます。

さらに図3右は、画像処理によって、浸水によってできた水面(水色)と、森林部や都市部の浸水(赤色)を推定したものです。ただし、この情報には、洪水による浸水だけでなく、観測の間に起こった田畑等の季節変化も含まれている可能性があります。

図3: 偏波カラー合成画像(左)および浸水域の推定図(右) 浸水域の推定図(右)は、浸水によってできた水面(水色)と、森林部や都市部の浸水(赤色)を示す。 (クリックで拡大画像へ)
偏波カラー合成画像

偏波カラー合成画像

および浸水域の推定図

および浸水域の推定図

図4は、チン州とサガイン地区にまたがるチンドウィン川周辺の拡大図で、2015年8月11日に高分解能モード(分解能10m、観測幅70km)で取得された画像と、洪水前の2015年2月10日に同じ条件で取得された画像とを色合成したものです。この画像では、赤色が浸水などの変化が起きていることを示し、チンドウィン川の水量が増大していることや、西部のチン州で広範囲にわたる浸水が起きていることが分かります。

図4: チン州、サガイン地区のチンドウィン川周辺地域

図4: チン州、サガイン地区のチンドウィン川周辺地域(クリックで拡大画像へ)

図5~8には、同様に2015年8月6日に高分解能モード(分解能10m)で取得された画像と、洪水前の2014年9月18日に同じ条件で取得された画像とを色合成した各地域の画像を示します。

図4: 2016年1月6日および1月11日の観測範囲

図5: マンダレー地区マンダレー市周辺(クリックで拡大画像へ)

図5: 2016年1月11日の浸水域の推定図

図6: シャン州タウンジー県周辺 北側のダム湖は水量が減少(水色枠部分)している一方、南側では浸水が発生(赤色枠部分)していると見られる。(クリックで拡大画像へ)

図7: バゴー地区周辺

図7: バゴー地区周辺(クリックで拡大画像へ)

図8: モン州モーラミャイン周辺

図8: モン州モーラミャイン周辺(クリックで拡大画像へ)

(注): PALSAR-2は、電界が地面に水平向きに振動する「水平偏波」と、地面に垂直向きに振動する「垂直偏波」と呼ばれる、性質の異なる2種類の電波を観測に使用できます。今回用いられた二偏波モード(HH+HV)は、衛星から地表に電波を照射する際には水平偏波(H)を送信し、地表から反射した電波を衛星で受信する際には水平偏波(H)と垂直偏波(V)をそれぞれ受信することにより、水平送信-水平受信(HH)と、水平送信-垂直受信(HV)の2種類のデータを同時に取得できます。HHとHVの違いは地表の状態によって変わることから、1つの偏波(HHのみなど)を受信する単偏波モードと比べ、地表の状態についてより多くの情報が得られます。
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