防災・災害

民間高分解能衛星画像および「だいち」画像を用いたネパール地震に伴う山間部被害抽出の結果について

概要

  • 災害復旧活動支援のために米国Digital Globe社が高分解能衛星画像を無償公開している。
  • 公開画像と「だいち」による観測画像の比較から崩落状況の抽出を試みた。
  • ポカラの北に位置する山岳地方の三地点で、雪崩もしくは地すべりによる崩落を確認した。
  • 得られた情報は防災対応関係機関へ提供しています。

2015年4月25日(現地時刻)にネパールで発生した地震について、米国Digital Globe社(以下DG社)は現地における災害復旧活動を支援するために、被災地域を撮像した高分解能衛星画像をインターネットで全世界に無償公開しています*。宇宙航空研究開発機構(JAXA)ではこの画像と陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)が過去に撮像した画像を比較し、ポカラの北にある高山域(図1)において被害状況の抽出を試みました。

図1: 河川への崩落が確認された3地点と使用した「だいち」PRISM画像

図1: 河川への崩落が確認された3地点と使用した「だいち」PRISM画像。背景は2011年3月10日に撮像された「だいち」AVNIR-2画像。
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A地点(北緯28°31’32.64”東経84° 26’27.10”付近)では、2015年4月29日にDG社が撮像した画像によって、隣接する二箇所で雪崩または土砂崩れと思われる崩落が直下を流れる川の河床に達していることを確認しました(図2a)。地震前(2010年1月20日)に「だいち」搭載センサPRISM(パンクロマチック立体視センサ)によって同じ場所を観測された画像(空間分解能2.5m)を見ると(図2b)、細い谷筋が認められるものの河床を覆うほどの崩落はないため、地震によって生じた崩落である可能性が高いと考えられます。さらにPRISMによって得られた標高データを用いて鳥瞰図表示すると、非常に急峻な斜面を落下していることが分かりました。4月29日現在、崩落地点の上流側に河川水の滞留は確認できません。しかし、これから夏季にかけて氷河や積雪の融解水、降水量の増加によって河川流量が増加するため、河道閉塞による天然ダムの形成や決壊洪水の可能性を否定できません。今後も衛星画像などにより河川の流れと地形の変化を注視していく必要があります。
  • 図2: 地点Aで確認された河川への崩落の様子
  • 図2: 地点Aで確認された河川への崩落の様子
  • 図2: 地点Aで確認された河川への崩落の様子
図2: 地点Aで確認された河川への崩落の様子。河川の上流に氷河及び氷河湖が確認できる。破線は崩落の向きを示す。
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B地点(北緯28°34’19.32”東経84°11’12.74”付近)はアンナプルナⅡ峰(7973m)東壁直下に位置し、2015年4月27日にDG社が撮像した画像によって、雪崩または土砂崩れと思われる崩落が直下を流れる川の河床に達していることを確認しました(図3a)。この場所は地震前(2010年1月20日)にPRISMセンサによって観測されており(図3b)、ごく近い位置に集落(バラタン村)があります。また周囲は急峻な山で囲まれているため(図3c)、新たな崩落に警戒する必要があります。
  • 図3: 地点Bで確認された河川への崩落の様子
  • 図3: 地点Bで確認された河川への崩落の様子
  • 図3: 地点Bで確認された河川への崩落の様子
図3: 地点Bで確認された河川への崩落の様子。破線は崩落の向きを示す。
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C地点(北緯28°40’32.00”東経83°56’11.47”付近)では、2015年4月29日にDG社が撮像した画像によって、隣接する二箇所で雪崩または土砂崩れと思われる崩落が直下を流れる川の河床に達していることを確認しました(図4a)。この場所は地震前(2009年11月6日)にPRISMセンサによって観測されています(図4b)。さらにPRISMによって得られた標高データを用いてこれを鳥瞰図表示すると、非常に急峻な斜面を落下したことが分かりました(図4c)。4月29日時点では天然ダムの形成は確認できませんが、今後、継続的に河川の流れや地形の変化を注視する必要があります。下流にはB地点があります。
  • 図4: 地点Cで確認された河川への崩落の様子
  • 図4: 地点Cで確認された河川への崩落の様子
  • 図4: 地点Cで確認された河川への崩落の様子
図4: 地点Cで確認された河川への崩落の様子。破線は崩落の向きを示す。
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ネパール山間部には小規模ながら多数の集落が存在していますが、交通や通信手段も限られているため、地震にともなう被害状況の把握は難しくなっています。画像は既に国際総合山岳開発センター(International Centre for Integrated Mountain Development; ICIMOD)の現地スタッフに提供され、対応が開始されました。JAXAでは今後も関係機関と協力し、ネパールの観測を継続する予定です。得られた情報は関係機関に提供するとともに随時本Webサイトで公開します。

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