防災・災害

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるパキスタン・フンザ川の土砂崩れにともなう堰止湖の観測結果(2)

2010年1月4日、パキスタン・フンザ地方の渓谷で土砂崩れが発生し、インダス川の支流であるフンザ川を堰き止めました。これにより雪解け水や雨が行き場を失い、自然のダム湖が発生し、フンザ川沿いの村やパキスタン北部と中国西部を結ぶ幹線道路(カラコルム・ハイウエー)を水没させています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2010年5月30日に引き続き、2010年6月13日14時56分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のパンクロマチック立体視センサ(プリズム) *1と高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*2により現地の観測を実施しました。

図1は今回観測したアブニール・ツー画像の様子を示したものです。土砂崩れが発生した地点はパキスタン・フンザ地方にあり、パキスタンの首都イスラマバードから北北東約328kmに位置しています。アブニール・ツーのバンド3, 2, 1を合成したトゥルーカラーで表示しており、人の目で見た色に近く見えます。白く見えるのは氷河や積雪、雲です。図1の大半は雲で覆われていますが、雲の合間からフンザ川のダム湖の様子を確認することができました。
図1: 今回観測した画像全体
図1: 今回観測した画像全体 (クリックで拡大画像へ) 取得日時: 2010年6月13日14時56分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角度: 0.0° 黄枠:図2の範囲、ピンク枠:図3~5の範囲
図2はフンザ川が土砂崩れにより堰き止められてできた湖全体を拡大したものです。左は2010年6月13日(土砂崩れ発生から160日後)、中央は2010年5月30日(土砂崩れ発生から146日後)、右は2009年9月10日(土砂崩れ発生前)に観測した画像です。左側の2010年6月13日の画像はプリズムとアブニール・ツーから作成したパンシャープン画像*3で、中央と右側の画像はアブニール・ツーの画像で、バンド4, 3, 2を合成したフォールスカラー画像で表示しており、植生が赤く見えるため、浸水などにともなう変化の様子が分かりやすくなっています。2010年5月30日のアブニール・ツー画像からダム湖の面積は約1,060ヘクタールと算定されましたが、2010年6月13日のアブニール・ツー画像からは約1,239ヘクタールと算定され、増水により湖が拡大していることが分かりました。
図2: 土砂崩れによりできた湖の拡大(それぞれ18km四方)
図2: 土砂崩れによりできた湖の拡大(それぞれ18km四方) 左:土砂崩れ後(2010年6月13日) 中:土砂崩れ後(2010年5月30日), 右:土砂崩れ前(2009年9月10日) (クリックで高解像度画像へ)
図3は土砂崩れによりできた湖の上流部を拡大したものです。2010年5月30日と比較して2010年6月13日の画像では黄色丸の部分で湖の範囲が広がっていることが確認できます。
図3: 土砂崩れによりできた湖の上流部の拡大(それぞれ6km四方)
図3: 土砂崩れによりできた湖の上流部の拡大(それぞれ6km四方) 左:土砂崩れ後(2010年6月13日), 中:土砂崩れ後(2010年5月30日), 右:土砂崩れ前(2009年9月10日) (クリックで高解像度画像へ)
図4は湖の下流部を拡大したものです。黄色丸で囲んだところを見ると、フンザ川を堰き止めた土砂から水が流れている様子が確認でき、堰き止め湖から出水していることが分かります。しかし、堰き止め湖からの出水があるにもかかわらず湖の面積が拡大していることから、出水量よりも入水量が多いと推測されます。
図4: 土砂崩れによりできた湖の下流部の拡大(それぞれ2.5km四方)
図4: 土砂崩れによりできた湖の下流部の拡大(それぞれ2.5km四方) 左:土砂崩れ後(2010年6月13日), 中:土砂崩れ後(2010年5月30日), 右:土砂崩れ前(2009年9月10日) (クリックで高解像度画像へ)

図5は図4よりさらに下流側のフンザ川を拡大したものです。2010年6月13日の画像を2010年5月30日の画像と比較すると川幅が広がっていることから、堰き止め湖からの流出量はそれなりにあると考えられます。堰き止め湖ができる前の2009年9月10日の川幅と比較すると多少狭く見えることから、現状の流出量が堰き止め湖の下流域に影響をもたらすことは考えにくい状況です。

しかし、堰き止め湖の水量増加にともなうダム湖の決壊などには引き続き警戒する必要があります。
図5: 土砂崩れによりできた湖より下流のフンザ川の拡大(それぞれ2.5km四方)
図5: 土砂崩れによりできた湖より下流のフンザ川の拡大(それぞれ2.5km四方) 左:土砂崩れ後(2010年6月13日), 中:土砂崩れ後(2010年5月30日), 右:土砂崩れ前(2009年9月10日) (クリックで高解像度画像へ)

JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

*1: パンクロマチック立体視センサ(プリズム): 「だいち」進行方法に対して真下(直下視)と斜め下(前方視, 後方視)の画像をほぼ同時に取得することができる光学センサで、衛星直下で地上2.5mのものが識別できる能力(地上分解能)を有しています。

*2: 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー): 青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmを地上分解能10mで観測できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は西側から0.0度で取得しました。

*3: プリズムとアブニール・ツーによるパンシャープン画像: 地上分解能2.5mのプリズムと、地上分解能10mですがカラー情報を持つアブニール・ツーを用いて、擬似的に地上分解能2.5mのカラー画像にしたものです。

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