観測の概念
海色海温走査放射計(OCTS)は、可視光域から熱赤外域の観測波長12バンドを用いて、高感度観測を行うセンサです。可視・近赤外域のスペクトル観測では、海水溶存物質や、植物プランクトンなどの状態が分かります。また、赤外域バンドは海面温度を観測するものですが、より正確に測定するために4つの観測バンドが設定されています。
OCTSは、衛星進行と直交する方向(東西方向)の走査により、観測視野が約1400kmで、南北方向の走査も可能です。3日間で全地表面の観測ができます。地表距離換算での空間分解能は約700mです。
![]()
海色海温走査放射計(OCTS) 観測の概念図 赤道上では太陽光の海面によるサングリッター(鏡面反射成分)が強いため、衛星からの海洋観測は困難です。このサングリッターを避けるため、OCTSはチルト機能により観測視野を衛星進行方向に±20度傾けることができます。
センサの動作は、放射線など宇宙環境特有の要素の影響を受けやすく、検出器の感度やレンズの透過率などが変化することがあります。これらの変化を校正するため、OCTSは太陽光やハロゲンランプを使用した光学的校正機能を有しています。例えば、衛星が北極上空を通過する際には太陽光がOCTS内部の太陽光校正モジュールに入るので、ミラーの回転ごとに、深宇宙と黒体を観測し、低温と常温での校正データを取得します。
更に、OCTSは電子的校正機能により、電気系の動作確認を行います。また、OCTSの観測データは、2種類のデータとして地上へ伝送されます。一つは精画像データと呼ばれ、観測及び校正データ全てが含まれており、直接送信系(DT)または軌道間通信系(IOCS)により送信されます。もう一つは粗画像データと呼ばれ、6km×6kmの領域から1画素を代表データとして送信します。送信は局地ユーザ送信系(DTL)で行われ、船舶等による受信も可能です。
ミッション計画
OCTSは主に海域観測センサとしての役割を持ち、クロロフィルや海中に含まれる様々な物質の量、海面温度、雲形成過程などを観測します。海洋は自然環境のみならず、私たちの生活にも大きな影響を与えます。地表の70%は海で覆われているため、海面温度は気温変化に大きく関与しています。また、漁業にとって海の情報は非常に重要なものです。OCTSデータは海洋の状態と、その現象の理解に広く貢献することが期待されています。
注)海の植物プランクトンはイワシやマグロなど多くの魚類のエサとなるため、海洋生産性を測る目安になります。
センサの構成/動作
OCTSは、光学系よりなる走査放射計ユニット(SRU)、デジタル信号処理等のための電気回路ユニット(ELU)などで構成されています。
![]()
内部構成図 走査ミラーが反射した観測光は、光学部へ導かれます。走査ミラーはモータにより1回転/秒し、衛星直下点を進行方向と直角方向に走査します。走査軸は進行方向前方または後方に20゜まで傾けることが出来ます。集光・分光部では、リッチ・クエチエン型望遠鏡を通して光が集められた後、ダイクロイック・フィルターで可視近赤外の2バンド及び赤外域1バンドに分光されます。ここで光信号は電気信号に変換されます。
赤外線検出器は大型の放射冷却機で100Kまで冷やされます。放射冷却機は約4Kの深宇宙に面しているため、深宇宙に熱を逃がすことで検出器の熱を放射します。
電気信号はアナログ信号処理部で指定されたゲインにより増幅され、デジタル信号に変換されます。デジタル信号はデジタル信号処理部で編集され、バス・モジュールに伝送されます。
地球観測データ解析研究センター