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PR 1998年の月降水量全球分布


 降雨レーダ(PR)によって観測された1998年の月降水量全球分布です。1997年から1998年にかけて、ペルー沖の海水温度が上昇するエルニーニョ現象が発生しました。エルニーニョによって、大気の大循環のパターンが変わり、世界各地で異常気象が起こることは良く知られています。エルニーニョが発生すると、大気の対流活動の活発な領域が変わります。降雨が生成される過程で潜熱が大気に放出され、その場所や高度の違いが大気循環に影響を及ぼします。

 TRMMによって初めて、大気循環の駆動源である降雨の3次元分布を定量的に測定できるようになりました。そのデータから大気循環の駆動源の実態をより正確に把握することができるため、エルニーニョ発生消滅の過程の解明を含め、異常気象の解明など、広く気象現象の科学的理解に役立つことが期待されています。

 1年を通じて低緯度地域では、降水が多い領域が夏半球側に集中していることがわかります。このような季節変化の他、1998年冬季はエルニーニョの影響により、通常は西太平洋に見られる降雨の多い領域が中部太平洋に移動しています。5月には、モンスーンの開始に伴いアジアモンスーン域で急激に降水量が増加しています。またこの頃エルニーニョは急速に終息しました。熱帯において帯状に降水量の多い領域である、熱帯収束帯(ITCZ)の位置の変化も、この間に急激に起こっている様子がわかります。


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