2001年11月30日
(1)高度変更に伴う一般的な注意 降雨レーダ(PR)観測の主な変更点 標準データバージョン番号の変更 (2)1B21アルゴリズム アルゴリズムの変更点 メインローブクラッタ除去の注意 (3) 1C21アルゴリズム (4) 2A21アルゴリズム (5) 2A23アルゴリズム (6) 2A25アルゴリズム (7) 3A25アルゴリズム (8) 3A26アルゴリズム
(1)高度変更に伴う一般的な注意
降雨レーダ(PR)観測の主な変更点
標準データバージョン番号の変更
(2)1B21アルゴリズム
アルゴリズムの変更点
メインローブクラッタ除去の注意
(3) 1C21アルゴリズム
(4) 2A21アルゴリズム
(5) 2A23アルゴリズム
(6) 2A25アルゴリズム
(7) 3A25アルゴリズム
(8) 3A26アルゴリズム
(1) 高度変更に伴う一般的な注意
感度が約1.2d程度低くなる。即ち、これまで観測できた弱いエコーが観測できなくなる可能性がある。
フットプリントサイズが約1.3倍になるとともに走査幅が高度のときの約215kmから約245kmになる。
鉛直方向の観測可能高度が直下付近で約1.5km低くなる。
送信ビーム方向と受信ビーム方向のミスマッチが軌道上で処理・平均化する32パルスのうち1パルスについて発生する。このミスマッチしたビームでの受信電力は、送受の中間方向を6dBゲインの低い観測したときと等価である。
入射角が若干変わる。特に広角ビームで大きくなるがその大きさは約0.5度である。
以上の結果、これまでのデータに比べてほんの少しデータの質が落ちる。また、シグマゼロの統計等には明確な変化が現れている。この他、ビームミスマッチによりZの値に不確定要素が存在する。
[標準データ番号の変更] 竹葉 豊幸
高度変更前後を判断するために、プロダクト中のメタデータプロダクトバージョン番号部分がこれまでの整数型から文字型に変更された。高度変更が開始された平成13年8月7日の軌道番号21259以降観測分データには「5A」が設定されている。
(2) 1B21 アルゴリズム 高橋 暢宏
現在の1B21アルゴリズムは高度データの処理のみに用いられる。高度402.5kmに合わせたサンプルレンジの設定テーブルを変更した。
代替システムノイズサンプルを用意するようにした。これは、観測可能高度が変化したために背の高いエコーが通常のノイズサンプルに入り込んだときに用いる。
ビームミスマッチの補正アルゴリズムを付加した。このアルゴリズムでは、連続する2つのビームのデータを用いてその中間方向の受信電力を推定するものであり、補正エラーは、地表面エコー付近に現れ最大約0.7dBとなる。B降雨域での補正エラーはおよそおよそ0.1dB以下である。
クラッター除去ルーチンにおけるサーチウィンドウ幅を補正した。これは、高度402.5kmにおける入射角がわずかに変化する事に起因している。このことにより、1B21では、binClutterFreeBottomに若干の変化が出る可能性がある。
[1B21 V5A メインローブクラッタ除去の注意] 阿波加 純
1B21 V5Aにおけるメインローブクラッタ除去の様子はV5の場合と同様である。すなわち、ごく僅かであるが特に山岳地帯において地表面エコーを強い降雨エコーと誤判定する場合があるので注意が必要である。
(3) 1C21 アルゴリズム 清水 収司
アルゴリズムに変更はない。
高度上昇のより感度が低下した分、“normalSample”(レーダ反射因子)で は観測最小反射因子が約1.2dB高くなる。
(4) 2A21 アルゴリズムRobert Meneghini
アルゴリズムには、変更を加えていない。
地球の曲率ならびに走査幅の増加により、地表面の地点に垂直な法線方向に対る入射角は、直下点以外の地点においてわずかに増加している。
軌道高度変更後、TRMMの姿勢は信頼性を減少したように思われる。それ故、地表面上の局所点に於ける法線に対する入射角の見積もりは、同様にその信頼性を減少している。この不確定性は、表面の規格化レーダ散乱断面積の分類における誤差ならびに非降雨時のNRCSの分散の増加に波及する。
高度の増加は、最後のパルスのペア(32のパルスペアの一つ)の送信と受信の同期を失わせる原因となる。従って、NRCSの平均値は、軌道高度変更前の平均値よりわずかに変化するゆえ、そしてこの変化は表面のタイプと入射角の関数であるゆえ、この影響の補正法はNRCSに対しては誤差になるかもしれない。
約1.2 dBの感度の低下の故に、降雨/非降雨の判定の閾値は変化した。このことは、降雨のないときのNRCSの統計値をわずかに修正し、表面参照法によって見積もられる降雨による平均的な経路積分減衰値(PIA:Path Integrated Attenuation)を修正するであろう。
海上の場合、鉛直入射近傍では、高度変更後の非降雨時のNRCSの値は、高度変更前の値よりもわずかに大きくなっている。また、走査端近傍では、高度変更後の規格化レーダ散乱断面積の値は、0.3-0.5dB程度小さくなっている。
(5) 2A23 アルゴリズム 阿波加 純
アンテナスキャン角が大きくなるとブライトバンドがぼやけるが、V5Aではこの影響がより大きくなっているため、アンテナスキャン角の端におけるブライトバンドの検出割合がV5に比べて低くなっている。
(6) 2A25 アルゴリズム 井口 俊夫
2A25の処理プログラムは高度変更後も高度変更前と全く変わっていない。プログラムは1行も書き換えられていない。(知られているバグもすべてそのまま残っている。)しかし、高度変更に伴い、データの質に違いが生じている。
地表面クラッターの影響を受けずに有効とみなされるデータのスキャン端における最低高度が、軌道変更前より高くなった。これは、フットプリントの大きさが大きくなった事に対応している。海上においては、以前は高度2kmではほぼクラッターの影響を受けなかったが、軌道変更後は2km
軌道変更後フットプリントの大きさの増加に伴い、降雨のフットプリント内での非一様分布の影響が大きくなっていると考えられるが、それに対する対策に何の変更も加えていない。
最低信号検出閾値が約1.2dB増加した事に伴い、降雨レーダは弱い雨を検出しそこなう率が増えている。これは結果として、雨が降っているという条件下で取った条件付降雨強度の平均値の増加につながっている。統計を使うときには注意が ーダ反射因子に変換する変換係数が変わったため、たまたま閾値を超えた雑音が降雨強度に変換されたときにその値は以前より大きなものとなっている。このような雑音が降雨と誤判断される割合は雨の少ない高度の高いところほど多い。そ のため、高高度において降雨ありの条件で計算した降雨強度が軌道変更後増加したように見えるが、これは現実ではない。
他のレベル1および2のPRプロダクトに関する注意書きをあわせて読むこと。
(7) 3A25 アルゴリズムRobert Meneghi
アルゴリズムには、変更を加えていない。しかしながら3A25は、レベル1,2のプロダクトの統計を計算するため、3A25の出力は、これらの下位プロダクトの変化の出力は、これらの下位プロダクトの変化を反映する。とりわけ、我々は、条件付(降雨のみの統計)の平均降雨強度とレーダ反射因子が僅かに増加し、条件無し(降雨、無降雨のすべての統計)の平均 降雨強度とレーダ反射因子は、僅かに減少すると予想する。雨域の頂きとブライトバンドの検知については、低い雨に対してとりわけ劣化するであろう。高度変更前ならば高度2kmにおいて検知されたであろういくつかの雨は、高度変更後は表面クラッターによって曖昧にされてしまうであろう。
2001年8月の3A25のデータは高度変更前7日間(8月1日から7日)と高度変更後8日間(8月25日から31日)の両方の下位プロダクトデータを合成して作成している。全部で15日分の統計であるため、プロダクトのサンプリング誤差は、典型的な値(一ヶ月平均値)よりも大きいであろう。
(8) 3A26 アルゴリズムRobert Meneghi
3A26は、様々な降雨強度の閾値の降雨の覆う面積の割合を計算し、対数正規分布に基づいて時空間平均された降雨強度を見積もる。感度の低下の故に、弱い降雨強度の覆う面積の割合は減少するであろう。対数正規分布のカーブフィッティングの手順は、弱い降雨強度の分布に依存するため、時空間平均された降雨強度は、変化することが期待される。3A26のアルゴリズムには、変更を加えていない。