Calibration感度校正

打ち上げ前校正

「打ち上げ前校正」については、英語版もあわせてご覧ください。

TANSO-FTS

TANSO-FTSのバンド2Sには、バンドを分離する光学系での多重反射に起因するチャネリングがあります。チャネリングの大きさは安定しており、輝度換算係数の小さい振動特性で補正することで、チャネリング補正済みの分光放射輝度が得られます。


レベル1BデータからTANSO-FTSバンド2P(灰色の太線)および2S (実線)の高ゲイン分光放射輝度への輝度換算係数

輝度変換テーブルとL1Bプロダクトの更新については、英語版に記載しています。

TANSO-CAI

注記: TANSO-CAIのレベル1B処理は、国立環境研究所が担当しており、そこでTANSO-CAIデータの感度校正が実施されます1。そのため、感度校正に関する以下の記述は、宇宙航空研究開発機構からの提言となります。
1 実際のTANSO-CAIレベル1B処理アルゴリズムに関する技術情報は、GDASから取得できます。)

TANSO-CAIレベル1Aデータには、入力放射輝度の総量に依存する信号およびオフセット、および、暗電流が含まれます。観測された分光放射輝度は、基本的に次式を使用して計算されます:

(1)

ここで、は、それぞれ、出力、暗電流レベル、画素番号nの応答を表します。は、検出器の積分時間。は、先頭3つのプリスキャン画素の出力の平均で、奇数と偶数の画素で別々に計算されます。暗電流レベルは積分時間の関数であり、打ち上げ後は時間に関わらず一定であると仮定しています。は、打ち上げ前校正に基づいています。感度劣化の補正について、以下に説明します。

各バンドの全ての画素は、打ち上げ前に、積分球を使用して同時に校正されました。積分球の内側は硫酸バリウム(BaSO4)でコーティングされており、開口部から放出される放射線は、特にバンド1(UV)と4(SWIR)において、非ランバートな角分布になっています。積分球の分光放射輝度の校正は、開口部に垂直な方向において実施され、角度分布については打ち上げ前に校正されませんでした。TANSO-CAIは広視野を備えるため、中央の画素以外の打ち上げ前データは、次のように補正する必要があります。バンド2と3の望遠鏡の光学系の口径食が大きいのに対して、バンド1と4の口径食は非常に小さく、角度分布の補正が可能です。画素間の不均一性をチェックするに当たり、1年を超えて全44パスで取得されたTANSO-CAIのデータを素子毎に平均して得られる地球アルビードは均一であると仮定します。レイリー散乱とサングリントを補正することにより、バンド1の画素間の不均一性を計測し、その平均値を用いて補正することができます。バンド2については、画素間補正は必要ありません。バンド3については、局所的なバンプ構造が1年間の平均データを使用して補正されます。バンド4は、暗電流が増加したいくつかの画素を除いて、1年間の平均データを使用して補正されます。補正された輝度換算係数は、TANSO-CAIレベル1Bプロダクトに適用されます。

ピクセル間非線形補正

ピクセル間非線形補正については、英語版に記載しています。

Issues for TANSO-CAI (with Electronic Scanning)

「Issues for TANSO-CAI (with Electronic Scanning)」については、英語版に記載しています。

相互校正

TANSO-FTS (SWIR)

GOSATと、NASAジェット推進研究所(JPL)による軌道上炭素観測衛星(OCO)は、どちらも、0.76 µm帯の酸素バンド、および、1.6 µm帯と2.0 µm帯の弱CO2バンドおよび強CO2バンドの吸収を計測します。それぞれのデータプロダクト間の不確かさやバイアスを確認するために、OCOおよびGOSATのチームは、数々の相互比較研究を計画しました。その中での1つ目は、打ち上げ前の絶対感度校正の検証です。相互比較キャンペーンは2008年にJPLで実施されました。OCOの基準検出器と、GOSATの3つの放射計で、OCOの積分球および放射標準器を計測しました。OCOの校正結果とGOSATによるOCO積分球の測定結果の間の総合的な相違は、0.76 µm帯で1.5%、1.6 µm帯で2.7%±1.1%、2.0 µm帯で0.2%±4.1%でした。GOSATの飛行前校正を検証するために、相互校正実験が宇宙航空研究開発機構の筑波宇宙センターで続けられ、ここでは同じ放射計で2個のGOSATの積分球を測定しました。相違は、0.76 µm帯で1.8%、1.6 µm帯で1.6%、2.0 µm帯で1.4%より小さくなりました。

航空機搭載可視赤外イメージング分光計(AVIRIS)を載せたER2航空機で、2009年10月9日と2011年6月20日の2回、GOSATの通過時にRRV上を飛行しました。AVIRISとGOSATの間の相互校正では、代替校正の結果からそれぞれ別々に類似した劣化傾向を確認しました。

スオミNPP衛星(SUOMI-NPP)上の、適正に校正された可視赤外イメージャー・放射計(VIIRS)との相互比較でも、割り当て誤差以内で、TANSO-FTS RDEモデルとの長期一致を示しています[Upretyら、2015年]。

TANSO-FTS (TIR)

大気サウンディング赤外干渉計(IASI)の同時通過を使用して、高緯度で分光放射輝度を比較しました。ISAIデータは、GOSATの視野の100 km以内、および、直下視から10 °以内で見ることができます。200 Kと270 Kでの輝度温度の差は ±1 Kより小さいです。地表面からの放射が優勢な10 µm近辺の大気の窓領域では、IASIとGOSATが正確に同じ場所を同じ時間に捉えることは、非常に困難です。

TANSO-CAI

AVIRIS(同時の航空機飛行)とTANSO-CAIの間の予備的比較で、代替校正と同様の校正結果が得られました[久世ら、2011年]。

軌道上校正

TANSO-FTS (SWIR)

スペクトラロン拡散板の裏面は、月1回、短時間露出されます。もし劣化が露出時間に比例するなら裏面は劣化していないはずですので、裏面の校正データを用いて相対的な感度劣化の監視が可能です。本解析に際し、太陽と地球の距離の季節変動も補正しました。
下の図は、太陽照度拡散板の校正観測結果の、表面と裏面の比率を示します。この図は、TANSO-FTSバンド1の拡散板表面の大きな劣化を示しますが、劣化は時間と共に緩やかになっています。図中の縦線は年1回の代替校正キャンペーン時期を示します。


図 3(a)

下の図は、拡散板の裏面を使用する月1回の太陽照度校正データを示します。曲線は、機器自体の軌道上の感度変化を示します。打ち上げ後1年目には、拡散板とTANSO-FTSを組み合わせた出力の劣化は急速でした。ただし、それ以降の年では劣化はかなり緩やかとなっています。図中の縦線は年1回の代替校正キャンペーン時期を示します。


図 3(b)

バンド1のS-偏光の劣化は、P-偏光よりやや速く進行します。最も劣化が進みやすいのは、FTSビームスプリッターの効率です。スペクトラロン拡散の双方向反射率分布関数(BRDF)、および、太陽からの距離を補正した後も、季節変動が残ります。原因として可能性があるのは、バンド1の温度依存性のある変調効率、不完全なBRDF補正、および、地球照によるコンタミネーションです[Toonら、2015年]。打ち上げ前のデータは、変調効率の温度依存性を示しています。

図 2
TANSO-FTSおよびCAIの軌道上通常運用計画。

TANSO-FTS (TIR)

TIR分光放射輝度は、深宇宙の観測と搭載された黒体の観測により、高頻度で校正されます。軌道上校正の精度は、温度センサーが劣化しない限り変化しません。

TANSO-CAI

毎月行っている”夜間観測モード”での観測では、TANSO-CAIセンサの暗時出力を監視しています。
下図は各バンドにおける、奇数画素と偶数画素それぞれの暗時出力平均値の長期の時間変動を示しています。
バンド1、2、3では暗時出力が徐々に増加していることが分かります。

Fig Temporal variations in the dark current levels averaged over the even number pixels or the odd number pixels of TANSO-CAI Band-1. Temporal variations in the dark current levels averaged over the even number pixels or the odd number pixels of TANSO-CAI Band-2. Temporal variations in the dark current levels averaged over the even number pixels or the odd number pixels of TANSO-CAI Band-3. Temporal variations in the dark current levels averaged over the even number pixels or the odd number pixels of TANSO-CAI Band-4.
Temporal variations in the dark current levels averaged over the even number pixels or the odd number pixels of each TANSO-CAI band.

バンド4では、打ち上げからの時間の経過とともに感度の悪くなる素子(異常素子)が確認されています。
異常素子が発見された時期と素子番号を表にまとめました。
異常素子は下図に見られるような縦線として目視で確認することができます。

最新の暗時出力係数はこちらからダウンロードできます。

過去分のcsvファイルに関しては下記のページからダウンロードすることができます。
csv file list

異常素子確認履歴
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
2009 154
(04/29)
18
(08/27)
221
(10/26)
174
(12/25)
2010 147
(03/25)
481
(05/24)
351
(09/24)
310
(10/24)
383
(12/23)
2011 248
(06/24)
428
(08/23)
121
(12/24)
2012 229
(04/25)
2013 375
418
(02/25)
42
(05/23)
291
(06/25)
254
(08/23)
2014 420
(01/24)
76
377
(08/25)
238
(09/24)
206
(10/24)
2015 459
(01/25)
356
(08/26)
114
(09/25)
77
(12/24)
2016 240
(03/26)
382
(08/26)
24
(09/25)
2017 166
410
(06/25)
512
(08/24)
2018 233(01/25) 207
426
(03/25)
198
(09/24)
2019 232
(10/22)
2020 452
(04/25)
38
(05/25)
146
(09/22)
34
272
(11/28)
2021 266
(08/24)
299
465
(12/22)
2022 413
(01/21)
346
(02/20)
124
(05/21)
205
439
(08/25)
148
(09/24)
2023

313
(03/23)
196
(07/21)
2024 169
(01/23)

Fig
Example of bad pixels (yellow-colored lines) in TANSO-CAI Band 4(CAI L1A pixel No#1 (East) ~ No#512(West))

月校正

月表面は、拡散性があり短波長赤外域での反射率が時間的に安定しています。夜間に、ピッチ方向のマヌーバにより、GOSAT機器の視野を満月の中心に向けます。最初に、TANSO-FTSは9.0 mrad幅の月面を捉えます。これはIFOVの15.8 mradより小さいため、二次的な校正標準として空間平均されたアルビードを全SWIRバンドで測定することができます。次に、衛星を若干回転させることによって、TANSO-CAIは、月表面全体を垂直走査できます。月校正は、TANSO-CAIの軌道上における唯一の校正方法です。

2年毎に、4月または5月の夏季のVCC直後に、月校正がTANSO-FTSとCAIの両方で実施されました。月面感度校正は、誤差範囲内でVCCと整合しています[塩見ら、2013年]。ソーラーパドルの異常後、月校正はバッテリーの余分な電力消費を避けるために中止されています。

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