プロダクト概要
EarthCAREの観測データは、さまざまなデジタル処理の過程を経て、ユーザが利用可能なプロダクトに仕上げられます。EarthCAREのプロダクトはJAXAとESAの両方で独自のものが作成されます。

EarthCAREプロダクトの種類

EarthCAREのプロダクトには、JAXAが開発する「JAXAプロダクト」とESAが開発する「ESAプロダクト」があります。JAXAプロダクトにはさらに、「標準プロダクト」と「研究プロダクト」の2種類があります。ESAプロダクトは主に欧州の研究者が開発したアルゴリズムによって作製され、JAXAプロダクトはJAXAサイエンスチームの研究者が開発したアルゴリズムによって作製されます。JAXAプロダクトとESAプロダクトはともにEarthCARE公式プロダクトです。プロダクトを作製するアルゴリズムにはそれぞれ得意・不得意な部分があるため、ユーザは、利用用途に応じてプロダクトを選択することができます。

ESAプロダクトとJAXAプロダクトはともにESAとJAXAのウェブサイトから提供されます。例えば、ESA L1b ATLIDプロダクトはJAXAのG-Portalウェブサイトから提供され、JAXA L2a CPR EchoプロダクトもESAのウェブサイトから提供されます。
プロダクトの種類 概要
ESAプロダクト 主に欧州の研究者が開発したアルゴリズムによって作製されたプロダクト
JAXAプロダクト 日本の研究者が開発したアルゴリズムによって作製されたプロダクト
標準プロダクト
アルゴリズムが比較的成熟しており、多くは過去の研究開発成果を応用させている。
プロダクトの開発・提供が強く推奨されている。
G-Portalウェブサイトから、他のJAXA地球観測ミッションの標準プロダクトとともに提供される。
研究プロダクト
アルゴリズムに開発要素が多く、チャレンジングでありつつ、科学的に価値が極めて高いプロダクト。
プロダクトの開発・提供が推奨されている。
JAXA地球観測センター または日本の大学・研究所等の研究機関から提供される。

EarthCAREプロダクトの処理レベル

EarthCAREプロダクトは、デジタル処理の段階によって「レベル1b」「レベル2a」「レベル2b」の各処理レベルのプロダクトに分けられ、処理レベルの定義はESAとJAXAで共通しています。

レベル2a以降のプロダクトを「高次プロダクト」、そしてそれらを作成するための処理を「高次処理」と呼ぶこともあります。

EarthCAREの場合の処理レベルの位置づけは、レベル1bは、センサから得られた観測データのデジタル信号を物理量(工学値)に変換したもの、レベル2aおよび2bは、各センサの工学値をもとに高次処理アルゴリズムによって気象学・大気物理学的な特性を示す値に変換したもので、レベル2aはセンサごとに作成するもの(センサ単体プロダクト)、レベル2bは複数のセンサによる情報を統合して作成するもの(センサ複合プロダクト、シナジープロダクト)、という基本的な考え方にもとづいています。

したがって、レベル1b、および2aプロダクトはおのおののセンサごと、レベル2bプロダクトは複数センサの組み合わせごとに提供されます。
プロダクトの処理レベル EarthCAREプロダクトにおける位置づけ 含まれるデータの例
レベル1b (L1b) センサ単体の観測データを工学値変換した物理量を含むプロダクト CPR L1b:受信電力、地表面レーダ断面積、ドップラー速度など
レベル2a (L2a) センサ単体による観測値をもとに、気象学・大気物理学的な特性を示す物理量に変換した高次プロダクト CPR L2a:雲水量、雲氷量、雲粒有効粒径、光学的厚さなど
ATLID L2a:消散係数、後方散乱係数、偏光解消度、大気境界層高度など
レベル2b (L2b) 複数のセンサによる観測値をもとに、気象学・大気物理学的な特性を示す物理量に変換した高次プロダクト CPR-ATLID複合 L2b:雲水量、雲氷量、雲粒有効粒径、光学的厚さなど
4センサ複合 L2b:短波・長波放射フラックスなど