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航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR-L)によるタイ国における洪水観測結果について(3)
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、タイ政府によるバンコク地域の洪水災害管理の支援のため、タイ地理情報・宇宙技術開発機構(GISTDA: Geo-Informatics and Space Technology Development Agency)と協力して、2011年11月5日から、航空機搭載レーダ(Pi-SAR-L)システムの運用によるバンコクの洪水観測を実施しています。
AXAの解析チームは、Pi-SAR-Lの複数の観測飛行によるバンコク首都圏の観測データを地図にあわせて、つなぎあわせ(モザイク処理)、そのデータから浸水域を抽出したものをGISTDAに提供しています。GISTDAでは、JAXAが提供したPi-SAR-Lなどの情報をタイ地球観測衛星(THEOS)、現地情報を用いた浸水域マップに統合し、浸水域情報を最新のものに更新しています。
Pi-SAR-Lは、レーダを用いた観測装置で、天候に影響されず地表面の観測を行うことができます。また、地球観測衛星「だいち(ALOS)」の後継機であるALOS-2に搭載されるレーダと同じく、3mという高分解能のデータを取得できます。このPi-SAR-Lのデータと、タイ側が取得しているタイ地球観測衛星(THEOS)などからのデータを組み合わせることにより、バンコク全域の洪水地図を日々更新することができます。
下図は、2011年11月19日の首都バンコクの浸水域を示したものです。
図1、2にPi-SAR-Lによって11月19日に観測されたデータのうちバンコク周辺のものをつなぎ合わせたモザイク画像と、その画像を用いて冠水域と推定される箇所を抽出した結果を示します。この画像から、ドンムアン空港をはじめ、バンコク北部では依然、冠水が続いていることがわかります。また、バンコク中心部・南部ではチャオプラヤ 川流域を中心に若干の冠水に留まっているものと思われます。図3はTHEOSによる11月19日の観測結果から抽出した冠水域抽出結果と、前述のPi-SAR-Lのによる冠水域抽出結果を統合したマップを示しています。
バンコクの北部においては両者の結果が一致していることがわかります。また、観測当日はバンコク中心部から南部にかけて雲があることで、THEOSの光学センサで観測することができなかった箇所を、Pi-SAR-Lの観測が補っている様子がわかります。
この浸水域情報は、タイ政府の洪水対策本部(FROC)において洪水対策の基本情報として活用されるとともに、GISTDAのウェブサイト上でタイ国民等に公開されています。
JAXAは、2011年11月5日から11月27日まで、タイ国においてPi-SAR-Lの観測を行うとともに、観測したデータの処理を実施し、GISTDAへの提供を実施する予定です。