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航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR-L)によるタイ国における洪水観測結果について
タイの首都バンコクでは、大洪水による甚大な被害が拡大しています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、タイ政府によるバンコク地域の洪水災害管理の支援のため、タイ地理情報・宇宙技術開発機構(GISTDA: Geo-Informatics and Space Technology Development Agency)と協力して、航空機搭載レーダ(Pi-SAR-L)システムの運用によるバンコクの洪水観測を開始しました。
Pi-SAR-Lは、レーダを用いた観測装置で、天候に影響されず地表面の観測を行うことができます。また、地球観測衛星「だいち(ALOS)」の後継機であるALOS-2に搭載されるレーダと同じく、3mという高分解能のデータを取得できます。このPi-SAR-Lのデータと、タイ側が取得しているタイ地球観測衛星(THEOS)などからのデータを組み合わせることにより、バンコク全域の洪水地図を作成することができます。
Pi-SAR-Lは、11月5日から11月下旬まで、タイ国において観測を行う予定です。初回の観測は11月5日に実施しました。また、7日から9日までのPi-SAR-Lの観測データを用いて、洪水マップを作成しました。
図1は、Pi-SAR-Lによって11月5-7日に観測された領域を示しています。図2は、Pi-SAR-Lによって11月5-7日に初めて観測されたバンコク地域の観測データをつなぎあわせて作成したカラー合成画像です。
また、背景画像は、陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)の画像です。
Pi-SAR-L画像の中では、表面が水で覆われているところは黒色になります。バンコクの周辺の西側及び東側の地域ともに、水で覆われていることがわかります。このうち、沿岸沿いは、塩田、えび養殖池などと思われますが、それ以外の地域では、水田あるいは洪水により冠水しているところです。
図3は、ドンムアン空港付近の画像です。洪水により、冠水している場所が水田とともにはっきりわかります。
左図: 11月5-7日観測のPi-SAR-L画像、右図: 11月5-7日観測のPi-SAR-L画像による冠水域抽出画像、いずれもドンムアン空港付近の拡大図
図4は、11月7 - 9日の観測データを用いて作成された洪水マップです。緑色の場所が、冠水域と見られる場所で、バンコク中心部に洪水による浸水がはじまっていることがわかります。なお、沿岸の緑色の部分は、塩田、えび養殖池、東部・西部の北部は、水田も含まれています。
Pi-SAR-Lの観測により、GISTDAとJAXAは、2-3日ごとにバンコク都市域の洪水マップを作成・更新しています。
本年、JAXAは、ALOS、ALOS-2に搭載されるLバンド合成開口レーダをはじめとした衛星・航空機等の地球観測データを利用して、タイ国のGISTDAと、洪水、沿岸浸食、米収量の3分野をテーマとした共同研究を実施しています。今回の洪水の観測・解析は、この共同研究の一環として行われました。
図4: 11月7 - 9日のデータによる洪水マップJAXAはこの共同研究を継続するとともに、研究成果を陸域観測技術衛星(ALOS-2)へと反映していく予定です。