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航空機搭載Lバンド合成開口レーダ2(Pi-SAR-L2)による伊豆大島の台風26号被害観測結果について
大型で非常に強い台風26号が2013年10月16日に伊豆大島を直撃し、大島町元町地区では大規模な土石流災害(土砂崩れ)が発生し、甚大な被害を受けました。 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、10月22日に航空機搭載Lバンド合成開口レーダ2(Pi-SAR-L 2: Polarimetric and Interferometric Airborne Synthetic Aperture Radar L-band 2) *1 により伊豆大島での台風26号被害の観測を行い、被災地の抽出を行いました。 図1に、今回の観測範囲を示します。
図2は、今回Pi-SAR-L2によって観測された伊豆大島の全体図です。赤にHH偏波、緑にHV偏波、青にVV偏波をそれぞれ割り当てています。図中の赤枠部分が、被害が大きかった大島町元町地区付近です。図3に赤枠部分の拡大図(約4km×2kmの範囲)を示します。
図4は、災害前の2000年8月30日にPi-SAR-L2の前身のPi-SAR-Lにより観測された大島町元町地区付近の画像(図3と同じ範囲)を示しています。図3と図4を比較すると、土砂崩れが発生したとみられる箇所において、図4では緑色だったところ(森林を示す)が図3では紫色になっていることがわかります。これらの紫色になっている箇所は、国土地理院の航空写真の土砂崩れ箇所と一致しています。
図6は、HH偏波とVV偏波の相関解析処理によって土砂崩れ箇所を抽出した画像です。図6の赤色の領域は、2000年と比べて樹木が減少した範囲を示しており、今回の土砂崩れ箇所を含むと考えられます。
今回Pi-SAR-L2では、伊豆大島を4方向から観測しました。この観測結果を元に、観測方向と土砂崩れが発生した斜面の向きや形状による、被災地抽出への影響を検証しました。図8左上の鳥瞰図は、図7(a)の観測データにHH偏波とVV偏波の相関解析処理の結果を赤色で重ね合わせて鳥瞰図にしたものです。図8(a)~(d)は、図7(a)~(d)の各観測データで同様の処理を行い、それぞれの観測方向から被災地を見ているように回転させたものです。併せて、HH偏波画像に変化領域を重ね合わせた図(大島町元町地区付近の約4km×2kmの範囲)も示しています。
図8(a)~(d)の変化抽出画像から、正面から土砂崩れ箇所を観測した場合(a)では変化が明瞭であるのに対し、北側または南側(横方向)から観測された(b)または(d)の場合、変化がやや不明瞭なところもあります。さらに裏側から土砂崩れ箇所を観測した(c)では、ほとんど変化が出ていません。
航空機観測は衛星と異なり、観測方向をある程度自由に決められます。観測方向により被災箇所の見え方が異なることから、より適切に検出するためには適切な方向から観測することが重要であることを確認しました。
*1: Pi-SAR-L2: Pi-SAR-L2は、1996年から2011年に渡って運用されたPi-SAR-Lの改良版であり、分解能や感度を今後打ち上げ予定のALOS-2に対応したものに引き上げた航空機SARです。スラントレンジ分解能は1.76mときわめて高く、水平・垂直偏波を用いて全偏波画像を得ることができるポラリメトリ(Polarimetry)機能を持ちます。