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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるネパールの洪水観測の結果について
ネパール南東部のスンサリ郡(Sunsari district)で2008年8月18日(日本時間、以下同じ)、ダムの決壊により大規模な洪水が発生しました。宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)では、センチネルアジア(注1)を通じた現地機関からの要請を受け、2008年8月24日(13時36分頃)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。
図1左は、2008年7月21日(洪水前)にPALSARで取得された被災地周辺の画像です。図1右は、2008年8月24日(洪水後・緊急観測)に取得されたほぼ同じ地域の画像です。合成開口レーダによる画像では、水面などの平坦な面は暗く写る傾向があり、災害後の画像(右)の左下に現れた暗い領域は、この洪水による浸水域と考えられます。
今回の緊急観測は、被災地の土地の状況をより詳しく把握するためPALSARの二重偏波モード(FBD)を用いて行われました(注2)。図3は災害後の水平-水平偏波(HH)の画像に赤、同じく災害後の水平-垂直偏波(HV)の画像に緑、災害前の水平-水平偏波(HH)の画像に青を割り当てたカラー合成画像です。偏波の性質から、この画像では青色が浸水域を表し、赤が農作地などの浸水していない土地、緑色が森林など植生の多い地域、明るいピンク色は市街地などを表していると考えられます。
JAXAでは、これらの緊急観測データを、センチネルアジアを通じて現地機関に提供しました。
(注1) 「センチネルアジア」は、アジア太平洋地域での自然災害の被害の軽減を目的として、災害発生時に各国機関からの要請に応じて人工衛星が取得した被災地の画像をインターネット上で共有するシステムで、JAXAを含むアジア20カ国の宇宙機関・防災機関および8つの国際機関が加盟しています。
(注2) PALSARは、電界が地面に水平に振動する「水平偏波」と地面に垂直に振動する「垂直偏波」と呼ばれる、性質の異なる2種類の電波を観測に用いることができます。今回用いられた二重偏波モードFBD(HH+HV)では、衛星から水平偏波(H)を地上に照射し、地上で水平偏波(H)と垂直偏波(V)に分離した反射波をそれぞれ受信することにより2種類の画像を同時に取得します。これにより、1つの偏波のみ受信する単偏波モードと比べ、地表の状態についてより多くの情報を得ることができます。
JAXA EORC