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「だいち2号」による桜島の観測結果について

概要

  • 気象庁は2015年8月15日、桜島の噴火警戒レベルを3 (入山規制) から4 (避難準備) に引き上げると発表した。
  • JAXAでは8月16日夜、17日昼に「だいち2号」による観測を実施し、過去のPALSAR-2データを用いた解析から地殻変動分布を抽出した。
  • 8月16日の観測結果から南岳山頂火口の東側の広い範囲で最大16cm程度、衛星に近づく変位が観測された。
  • 「だいち2号」搭載の赤外カメラ (CIRC) による観測結果から南岳付近の地表面温度が周囲と比べ高く見えることが観測された。

気象庁は2015年8月15日、鹿児島県桜島の噴火警報として噴火警戒レベルを3 (入山規制) から噴火警戒レベル4 (避難準備) に引き上げると発表しました。気象庁からの要請に基づき、宇宙航空研究開発機構 (以下、JAXA) は8月16日夜、17日昼に「だいち2号」(ALOS-2) 搭載のパルサー2 (PALSAR-2) による緊急観測を実施し、国土地理院をはじめとする防災対応機関へデータを提供しました。また、JAXAでも独自に過去に観測されたPALSAR-2データと合わせて干渉SAR解析を行い、地殻変動分布の抽出を試みました。図1は今回のPALSAR-2による観測範囲を示したものです。

図1:PALSAR-2の観測範囲

図1:PALSAR-2の観測範囲 (赤:2015年8月16日夜、緑:2015年8月17日昼)

図2は、2015年8月16日23時33分頃 (日本時間) と2015年1月4日にPALSAR-2高分解能モード (3m分解能) で得られたデータを用いた干渉画像です。この結果、桜島の南岳山頂火口の東側の広い範囲 (図中、白枠の範囲) で、1月から8月の間に最大16cm程度の衛星方向に近づく変位が確認できました。図3は、図2の桜島付近を「だいち」による全球数値地表モデル (AW3D30) に重ね鳥瞰図表示したものです。

図2:PALSAR-2による干渉画像

図2:PALSAR-2による干渉画像 (前:2015年1月4日夜、後:2015年8月16日夜)(クリックで拡大画像へ)

図3:PALSAR-2による干渉画像

図3:PALSAR-2による干渉画像 (前:2015年1月4日夜、後:2015年8月16日夜)の鳥瞰図(ALOS全球数値地表モデル30m版 (AW3D30) を使用、クリックで拡大画像へ)

図4は、2015年8月17日13時5分頃 (日本時間) と2015年7月6日にPALSAR-2高分解能モード (3m分解能) で得られたデータを用いた干渉画像です。この結果、南岳山頂付近では最大5cm程度の衛星方向に近づく地殻変動が、東側では最大6cm程度の衛星から遠ざかる地殻変動が見られました (図中、白枠の範囲)。

図2と図4は、それぞれ衛星が東の上空、および西の上空から観測しており、同じ地殻変動でも観測方向が異なるため、解析結果に違いがあります。また、干渉SARによる地殻変動には気象条件などにより数cmの誤差があり、地殻変動がない領域でも周辺と異なる色になる場合があります。

図4:PALSAR-2による干渉画像

図4:PALSAR-2による干渉画像 (前:2015年7月6日昼、後:2015年8月17日昼)

図5は、ALOS-2搭載の地球観測用小型赤外カメラ (CIRC) によって2015年8月17日23時57分頃 (日本時間) 観測された桜島付近の画像です。図5右の拡大画像では、相対的に温度が低い山頂付近に、周囲と比較して5度程度、高く見える場所が確認できます。CIRCは200m四方 (200m分解能) の平均的な温度を示していますが山頂近くの高温域は火口内部の高温の領域を含んでいると考えられます。

図5:ALOS-2/CIRCによる桜島観測結果

図5:ALOS-2/CIRCによる桜島観測結果 (2015年8月17日23時57分頃)

参考

JAXAの火山噴火に対する観測の取り組み

JAXAは気象庁地震火山部との共同研究協定に基づき、火山噴火予知連絡会に設置された「衛星解析WG(火山WG)」により監視・観測体制の充実等が必要な火山と指定された47火山について、だいち2号による定期的な観測を実施しています。また、噴火等の異常時には火山WGからの要請を受け、だいち2号による緊急観測を実施しています。
JAXA EORC