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(お知らせ)「だいち2号」と航空機搭載L-band SARを使った東日本大震災捜索活動について
概要
- L-band SARが乾燥した砂浜で70cm程度透過する性質を利用し、東日本大震災の津波で砂浜に埋まっている可能性のある手がかりの捜索を行った。
- 月一回の捜索を25人程度で行った結果、毎回1,000~1,500個程度、1年間で11,400個の埋没物を掘り出すことができた。
Lバンド波長で地球を観測している「だいち2号」や航空機搭載用のSARは、その波長の特性から、乾燥した砂浜で70cm程度の深さまで地中の埋没物の有無を知ることができます。この特徴を利用して宇宙航空研究開発機構 (以下、JAXA) は、仙台高等専門学校園田潤教授、東北大学米澤千夏准教授らが行う、東日本大震災の津波で砂浜に埋まっている可能性のある手がかりの捜索のために、「だいち2号」や航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR-L2; Polarimetric and Interferometric Airborne Synthetic Aperture Radar)により取得した画像の解析と提供を行っています。
東日本大震災後に発生した津波が襲来した範囲は広大であり、砂浜に埋もれた可能性のある手がかりを、地中レーダだけで捜索する事は効率的ではありません。津波による漂流物はある程度固まって砂浜に埋まっていると想定されます。そこで乾いた土をある程度透過する能力を持つ、だいち2号や航空機搭載合成開口レーダ (Pi-SAR-L2) のデータから地中物体を粗く探査し、反射が強い箇所で地中レーダを使って捜索しています。図1は、Pi-SAR-L2で得られた宮城県名取市現在捜索を行っている場所では、深さ20-30cmのところに多くの物が集中しており、その主な内訳は木、石、プラスチック類ですが、建物の梁、名前入りメガネケース、草履や靴、漁具なども含まれていました。
これまでに捜索が行われた場所で、2015年1月15日と2月12日の「だいち2号」データから得られたコヒーレンス画像を図3に示します。コヒーレンスとは、異なる時期に同じ観測モードで観測された2枚の画像を0~1の類似度で示したもので、2枚の画像の類似度が全くない場合は0、全く同じ場合は1となります。「だいち2号」が撮像した時点で捜索が終了した場所はコヒーレンスが下がっており、反射体である埋没物がなくなったことを示しています。このように、だいち2号や航空機搭載合成開口レーダ (Pi-SAR-L2) は、広範囲にわたる地中に埋まった手がかりの捜索に有用であることが示されました。今後も定期的に観測されるだいち2号と、不定期に観測されるPi-SAR-L2データを用いて、埋没物候補地の絞り込みと位置精度向上を行いながら、地上での捜索を継続していく予定です。
支援団体「復興支援プロジェクトSTEP」との協働捜索活動は、毎月第2日曜日に宮城県名取市閖上浜で行っています(図4)。また、本活動はJSPS科研費15H02997の助成を受けて行われています。関連情報
渡邉学, 米澤千夏, 園田潤、"L-band SARデータを用いた、東日本大震災津波による砂浜埋設遺留品捜索の試み"、(一社) 日本リモートセンシング学会第 58 回 (平成 27年度春季) 講演論文集、33-34、2015年
園田潤,渡邉学,米澤千夏,金澤靖,"地上・上空の複合レーダによる大規模自然災害の捜索手法の開発" 電子情報通信学会通信ソサイエティ大会通信講演論文集1, p.159, 2015.