画像ライブラリー
「だいち2号」による米国カリフォルニア州の森林火災の観測について
概要
Posted: Nov. 09, 2020, 9:00 (UTC)
- 2020年8月から米国カリフォルニア州で続いている森林火災について、「だいち2号」による2020年9月2日および10月14日の観測データを確認した結果、森林火災の被害範囲が時間とともに変化している様子がとらえられた。
- 米国航空宇宙局(NASA)の航空機搭載合成開口レーダ「UAVSAR」による詳細画像と比較したところ、火災被害の推定範囲に整合性が確認され、「だいち2号」による広域観測の有効性を確認した。
2020年8月から米国カリフォルニア州の各地で続いている大規模な森林火災・芝生火災(grass fire)について、 「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「パルサー2」(PALSAR-2)による観測データを確認しました。 本データは2020年9月2日および10月14日に広域観測モード(ScanSAR)で観測されたものであり、これらの画像と 同年6月24日観測の画像と比較することで、火災による被害範囲を推定しました。 また、米国航空宇宙局(NASA)/カリフォルニア工科大学ジェット推進研究所(Caltech JPL)が運用している 航空機搭載の合成開口レーダ「UAVSAR」で観測された詳細な画像との比較もおこないました。 図1はそれぞれの観測範囲を示したものです。
PALSAR-2画像は通常、モノクロ画像で森林は明るく表示されますが、火災等で立木が失われると暗く変化します。 この特徴を利用し2時期の画像をカラー合成することで、図2のように森林が消失した範囲が赤く表される画像を作成することができます (火災前の観測画像を赤色、火災後の画像を緑と青色に割り当てたカラー合成画像)。 この画像は、サンフランシスコの北約90kmのLNU Lightning Complex火災エリアの様子です。
マウス操作で画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像を視覚的に比較することができます(未対応のブラウザでは2つの画像が単に並べて表示されることがあります)。
図3は、6月24日-9月2日および9月2日-10月14日の二つの期間について、図2(c)と同様のカラー合成画像を作成したもので、 サンフランシスコの北約200kmで8月17日に発生したAugust Complex火災エリアの様子です。 黄色の線は、米国National Interagency Fire Center(NIFC)が公開している延焼範囲の情報です。 PALSAR-2画像からは、8月の火災発生後に一定範囲が激しく被害を受けた様子や、その後の9月から10月にかけて 延焼範囲は西方向に広がり、さらに点在している様子が確認できます。 なお、NIFCの延焼範囲は熱赤外センサを利用した航空機観測などにより得られたものですが、 PALSAR-2で赤く表されるのは立木が消失するような激甚な被災地だけといった違いがあるため、 後者の分布範囲のほうが狭くなっています。
青枠は、南側が図4(a)および(b)、北側が図4(c)および(d)で示す画像の範囲
マウス操作で画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像を視覚的に比較することができます(未対応のブラウザでは2つの画像が単に並べて表示されることがあります)。
また、NASAは航空機搭載の合成開口レーダ「UAVSAR」による観測を継続的に実施しています。 UAVSARはPALSAR-2と比較すると、一度に観測できる範囲は限定されるものの、より高解像度で詳細な画像を得ることが可能です。 そこで、UAVSARの2020年2月27日および10月16日の観測データから同様のカラー合成画像を作成し、 上記のAugust Complex火災エリア内の2ヶ所でPALSAR-2による火災延焼の推定範囲との比較を行いました。
マウス操作で画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像を視覚的に比較することができます
(未対応のブラウザでは2つの画像が単に並べて表示されることがあります)。
図4(b)および(d)のUAVSARによる画像は延焼推定範囲を細かく読み取れるのに対して、 (a)および(c)のPALSAR-2画像は解像度が粗いものの延焼推定範囲はおおまかに一致していることが分かります。 PALSAR-2の広域観測モード(ScanSAR)は1回の観測で約350km幅のデータを取得することができるため、 広域における被害の様子を把握することに有効であると言えることが分かりました。 なお、UAVSARの詳細は下記をご参照下さい。
関連リンク
JAXA EORC