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「だいち2号」によるインドネシア・アグン火山の観測結果
Posted: Dec. 6, 2017, 2:00 (UTC)
概要
- 2017年11月21日、インドネシアのバリ島にあるアグン山が54年ぶりに噴火活動を開始した。
- JAXAは12月1日(日本時間)に「だいち2号」による観測を行い、噴火口内の溶岩が出現した様子を捉えた。
- 干渉SAR(インターフェロメトリ)解析により、アグン山周辺での地殻変動は観測されなかったものの、火口の南側で干渉度が下がっており、これは降灰や火山噴出物の堆積などの地表変状が起こったと考えられる。
- データはセンチネルアジアを通じて現地関係機関へ提供しており、夜間あるいは雲や噴煙の下でも地表を観測可能な「だいち2号」の特性を活かし、火山活動の監視に貢献している。
2017年11月21日、インドネシアのバリ島にあるアグン山が54年ぶりに噴火活動を開始しました。宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、日本時間2017年12月1日午前1時38分頃(現地時間0時38分頃)に陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2;パルサー2)による観測を行いました。
図1は今回の観測範囲ならびに観測画像の全体図で、高分解能10mモード(2偏波)で観測されたデータのHH偏波を赤、HV偏波を緑、HH偏波/HV偏波比を青に割り当ててカラー合成しています。大まかに、青や黒が水面や裸地、緑色が植生、局所的に明るい緑や紫は市街地を表します。
図2中央は、図1白枠のアグン山付近を拡大したものです。ここでは視覚的な分かりやすさのために画像を回転し、画像の上方向を観測中の衛星の方向(およそ西南西)としています。図2左は比較のために噴火前の2017年10月6日に観測された画像です。今回の画像では火口内の様子が変わっており、溶岩が火口内に出現したものと思われます。合成開口レーダの画像では標高が高いものほど衛星に近づいて見える性質があり、逆に火口内の低い位置にある溶岩は衛星から遠い側(図2の画像上では火口縁よりも下側)にずれた像となって見えます。このずれから推測すると、火口縁から溶岩の表面までは依然として100メートル以上の落差があります。図2右は、今回の観測画像に火口内の見え方を表す模式図を入れたものです。
図3は、図2と同じ噴火前後の2時期のデータを干渉処理(インターフェロメトリ)することにより得られた差分干渉画像です。干渉処理によって、噴火に伴う地殻変動(隆起や沈降など)があった場合にはその変動量を求めることができますが、今回の観測ではPALSAR-2の干渉処理の検出限界を超える有意な変動は見られませんでした。バリ島南部に見られる青い領域は、2時期の観測時の気象条件の違いによる疑似的な変動で、今回の火山活動による変動ではないと考えられます。
図4は、干渉処理の際に得られる干渉度の画像です。干渉度は2枚の画像の類似性を示す度合であり、2時期の間に地表面状態が大きく変わると低下します。図5では干渉度が0.5以上の場所を灰色で、0.5以下を黄色から赤色で示しています。画像全体の干渉度はおおむね高いですが、火口の南側で干渉度の低下が起きています。これは、降灰や火山噴出物の堆積などにより地表面状態に変状が起きており、これが火口の南側だけに集中しているのは、風向きによるものと考えられます。なお、アグン山の北西側にも干渉度の低い地域がありますが、ここはバトゥール湖であり、一般的に水面では干渉度は低くなるためです。
これらの観測はセンチネルアジアからの要請に基づいて行われており、観測データはJAXAからセンチネルアジアを通じて現地機関に提供されています。
JAXA EORC