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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるタイ集中豪雨被害の緊急観測結果

東南アジアのタイにおいて、2010年10月中旬からの断続的な豪雨により洪水などの被害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2010年10月21日12時51分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1により現地の緊急観測を実施しました。

図1は今回観測した画像全体の様子を示したもので、アブニール・ツーのバンド3, 2, 1を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており、人の目で見た色に近くなっています。明るい白色は雲ですが、雲の隙間から河川や湖の増水、農耕地が冠水している様子を確認することができました。
図1:今回観測した画像全体
図1:今回観測した画像全体
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観測日時: 2010年10月21日12時51分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角: 0° 黄色枠: 図2~4の範囲

図2、図3は災害後の2010年10月21日に観測された画像から、河川が氾濫している箇所を拡大したもので、それぞれChainarai (首都バンコクから北東約180km)、Hin son(同, 約130km)付近です。アブニール・ツーのバンド4, 3, 2を合成したフォールスカラー画像で表示しており、植生(赤色)と冠水域(水色)が明瞭に区別できるため、冠水域を明確にとらえることができます。災害前の画像と比べ、災害後の画像では河川が氾濫し、農耕地の冠水や建造物の浸水している様子が分かります。
図2: Chainarai付近の河川氾濫の様子(それぞれ約18km×18kmのエリア) 左:災害後(2010年10月21日)、右:災害前(2010年9月5日)
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図3: Hin Son 付近の河川増水の様子(それぞれ約12km×12kmのエリア)
図3: Hin Son 付近の河川増水の様子(それぞれ約12km×12kmのエリア) 左:災害後(2010年10月21日)、右:災害前(2010年7月21日)
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図4は、災害後の2010年10月21日に観測された画像から、Chan Thuk(同、約160km)付近の湖が増水している箇所を拡大したもので、図2、図3と同様にフォールスカラー画像で表示しています。災害前の画像と比べ、災害後の画像では湖の面積が拡大しており、建造物の集まっている地域にまで水が迫っています。
図4: Chan Thuk付近の湖の増水の様子(それぞれ約18km×18kmのエリア) 左:災害後(2010年10月21日)、右:災害前(2010年9月5日)
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なお、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

取得された画像はセンチネルアジアを通じてタイ地理情報宇宙開発機構(GISTDA)へ提供しました。

*1 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):

青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は0度で取得しました。また、7月21日と9月5日の画像も0度で取得しました。

JAXA EORC