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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の緊急観測結果について(3)

平成20年6月14日(日本時間、以下同じ)に岩手県南西部で発生したマグニチュード7.2(気象庁発表)の地震(岩手・宮城内陸地震)による被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、平成20年6月23日(21:00頃)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測では、平成19年6月21日に取得した同じ軌道からの画像を使用し、差分干渉処理によって地殻変動状況を把握いたしました。「だいち」は南から北へ飛行しながら、震央を含む領域を観測しました。(図1)
図1: 全体図
図1: 全体図
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図2左は地震前と地震後の画像を比較した差分干渉画像です。図2右は南北約200kmに渡る地震後のPALSAR画像を示したものです。
図2左: PALSAR差分干渉画像
図2左: PALSAR差分干渉画像
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右: 地震後PALSAR強度画像
右: 地震後PALSAR強度画像
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図3は変動が大きかった領域約70km×70km(図2左中白枠内)を拡大したもので、断層運動による地殻変動の様子をより細かく把握する事ができます。推定される断層直上及びその近傍(震央の周辺)では,狭い範囲での変動(変動の勾配)が大きすぎて、差分干渉処理では変動量の検出が困難であると思われます(虹色が不明瞭で、これを干渉度が低い(=検出が困難)と言います)。しかし、その領域の東西では明瞭な干渉縞が確認でき、少なくとも、震央の東側では2周期=23.6cmの衛星に近づく向きの地殻変動が、西側では8周期=94.4cmの衛星から遠ざかる向きの地殻変動があったことがわかります。この画像からだけでは、干渉縞から分かる衛星視線方向の地殻変動を上下成分と水平成分に分解することはできませんが、国土地理院によるGPS観測の結果(注3)を参考にすると、水平成分が大きく影響していると思われます。今回の「だいち」による観測から、岩手・宮城内陸地震に伴って広い範囲に渡る大きな地殻変動が生じたことが確認できました。
図3: 南北70km×東西70km 干渉画像(図2中白枠内の拡大図)
図3: 南北70km×東西70km 干渉画像(図2中白枠内の拡大図)
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JAXAでは今後も「だいち」による岩手・宮城内陸地震被災地の観測を継続していく予定です。

(注1) 震央の東側では緑→黄→赤→紫→青→緑(緑の領域から緑の領域まで、ここまでで1周期=11.8cmでこの順番の色の変化は、衛星に近づく変動を表わします)が2周期確認されるため11.8cm×2=23.6cmの変動と推定されます。西側は緑→青→紫→赤→黄→緑(これは反対に遠ざかる順番)で8周期確認されるため11.8cm×8=94.4cmの変動と推定されます。

(注2) 図2左に見られる仙台市周辺の干渉縞は、気象等の影響によるノイズであると考えられます。

(注3) 参照HP:国土地理院・平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動(第2報)

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