画像ライブラリー
PALSARによるカナダ、ニュー・ブランズウィック州の洪水観測
2008年4月終わりから5月始めにかけて、大雨と融雪水により、カナダ、ニューブランズウィック州(New Brunswick)のセント・ジョン(St. John)川周辺で大きな洪水が起こりました。JAXAでは、国際災害チャータの要請に基づき、被害状況把握のため「だいち」による緊急観測およびデータの提供を行いました。
図1は「だいち」搭載のフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)の高分解能モード水平偏波で観測した災害前の2007年9月18日の画像(図1上)、同じく高分解能モードで観測した災害後の2008年5月5日の画像(図1上)です。観測領域を図2に示します。
PALSARの画像では、一般的に、冠水した領域は暗く見える特徴があり、洪水後の画像では、セント・ジョン(St. John)川およびOromoctoで合流する支流周辺で暗い領域(冠水域)が広がっていることが分かります。 一方、森林域が浸水している状況では、2重散乱(水域で鏡面反射したマイクロ波が樹幹部でさらに反射して強い後方散乱を生じる)により、通常より明るく見える(強い後方散乱)特徴があります(図3)。実際、洪水後のHH(水平送信、垂直受信)偏波の画像では、暗く見える冠水域の外側に洪水前よりも明るい領域が確認できます。
洪水前後の変化抽出のため、2008年5月5日の画像を赤、緑、2007年9月18日の画像を青に割り当てて3色合成画像を作成しました(図4)。セント・ジョン川、およびその支流周辺の青く浮き出ている領域が冠水した領域です。青色領域の周辺の黄色領域が浸水林を表しています。このように、PALSARでは、マイクロ波の散乱特性を考慮することにより、可視(光学)画像では検出が困難な浸水林の広がりを検出できるという特徴があります。
JAXA EORC