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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるタジキスタンの集中豪雨被害による緊急観測結果

中央アジアのタジキスタン南部において、2010年5月6日から7日にかけて起きた集中豪雨と急激な雪解けにより土砂崩れや洪水などの被害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2010年5月11日15時32分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1により現地の緊急観測を実施しました。

図1は今回観測した画像全体の様子を示したものです。各地で発生した河川の増水や土砂崩れの様子が確認できました。いずれの画像もバンド3, 2, 1を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており、人の目で見た色に近くなっています。
図1: 今回観測した画像全体
図1: 今回観測した画像全体
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取得日時: 2010年5月11日15時32分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角度: +25°、紫枠: 図2~図5の範囲

図2は災害後の2010年5月11日、およびおよそ一ヶ月前の2010年4月14日に観測された画像から、Imeni Vose付近を拡大したものです。災害前の画像と比べ、災害後の画像では赤丸で示した付近で河川が増水し、川幅が広がっていることが分かります。一部は農地や住宅地付近まで浸水しているようにも見えます。今後豪雨が続くようであれば、浸水被害が拡大するおそれがあります。
図2: Imeni Vose付近の河川増水の様子(それぞれ約5km×5kmのエリア)
図2: Imeni Vose付近の河川増水の様子(それぞれ約5km×5kmのエリア) 左:災害後(2010年5月11日), 右:災害前(2010年4月14日)
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図3はKhanabad付近で発生した土砂崩れの様子を拡大したものです。左の5月11日の画像上に赤丸で示したところに、土砂崩れ跡と考えられる茶色い筋が見受けられます。わずか一ヶ月前の右の画像では木や樹木などの植生で覆われ緑色で見えていることから、今回の豪雨にともなう被害と考えられます。河川南側の対岸には、Khanabadの町があります。
図3: Khanabad付近で発生した土砂崩れの様子(それぞれ約5km×5kmのエリア)
図3: Khanabad付近で発生した土砂崩れの様子(それぞれ約5km×5kmのエリア) 左:災害後(2010年5月11日), 右:災害前(2010年4月14日)
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図4はChagam付近で発生した大規模な土砂崩れの様子を拡大したものです。右の災害発生前の画像でも土砂崩れ跡らしき形跡が茶色で見えることから、この付近は土砂崩れを起こしやすい地形と考えられますが、左の画像では赤丸で示したところの茶色い箇所が多数増えていることから、今回の豪雨にともなう被害と考えられます。
図4: クラクフ付近の様子(それぞれ約4km×4kmのエリア)
図4: Chagam付近で発生した大規模な土砂崩れの様子(それぞれ約6km×6kmのエリア) 左:災害後(2010年5月11日), 右:災害前(2010年4月14日)
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図5はDashtidzhum付近で発生した洪水の様子を拡大したものです。左の画像上に赤丸で示したところは、右の今年3月の画像と比較して茶色に見えることから、河川の増水にともなう洪水が発生していると考えられます。右の画像を見ると、この場所には住宅らしき建物が点在していることが分かります。また、上流部分の河川は川幅が拡大しています。
図5: Dashtidzhum付近の洪水の様子(それぞれ約5km×5kmのエリア)
図5: Dashtidzhum付近の洪水の様子(それぞれ約5km×5kmのエリア) 左:災害後(2010年5月11日), 右:災害前(2010年3月28日)
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なお、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

取得された画像はセンチネルアジアを通じてタジキスタン緊急状況市民防衛委員会へ提供しました。

*1: 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):

青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は西側から25度で取得しました。

JAXA EORC