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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるポーランドの洪水被害による緊急観測結果
ポーランド南部において、5月初めからの長雨により過去10年で最大級の洪水に見舞われています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2010年5月21日18時59分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1により、現地の緊急観測を実施しました。
図1は、今回観測した画像全体の様子を示したものです。バンド3, 2, 1を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており、人の目で見た色に近くなっています。白く見えるのは雲で、洪水被害が報道されているクラクフ上空は雲に覆われていますが、画像の右上図2の範囲は図1画像全体からも分かるほど浸水域が広がっています。
図2は災害後の2010年5月21日、および約一ヶ月前の2010年4月12日に観測された画像から、クラクフから東へ約52kmのところにあるPrzemykowという町のビスワ川流域付近を拡大したものです。バンド4,3,2を合成したフォールスカラー合成画像で表示しており、植生を赤く強調しているため浸水などにより植生が水没している様子が分かりやすくなります。災害前の画像と比べ、災害後の画像では川幅が広がり、さらにビスワ川の東側の畑へ広く氾濫している様子が分かります。
図3は、クラクフから東へ約32kmのところにあるNowe Brzeskoという町のビスワ川流域付近を拡大した画像(災害前後)です。災害前の画像と比べ、災害後の画像では川幅が広がり、畑にも川の水が溢れている様子が分かります。また、黄色丸で囲ったビスワ川の南にある支流も川岸が黒く見えることから、浸水した跡と考えられます。
図4はクラクフ付近の様子を拡大したものです。災害後の画像(左)は広く雲に覆われていますが、雲の隙間に見えるビスワ川は災害発生前の画像(右)と比較して川幅が広くなっており、住宅地にも水が迫っている様子が分かります。クラクフは、1978年にユネスコの世界文化遺産に指定されています。
なお、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。
取得された画像はALOS欧州データノード(ALOS Data European Node, ADEN)へ提供しました。
*1: 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):
青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は西側から14度で取得しました。
JAXA EORC