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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による台風18号通過後の観測結果

2009年10月8日、大型で強い勢力の台風18号が日本に上陸し本州を縦断しており、各地で大雨や強い風による被害が発生しています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では和歌山県からの要請にもとづき、2009年10月8日10時58分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1により、台風18号が通過した和歌山県付近の観測を実施しました。

図1は今回観測した画像のうち地表面が確認できた場所を示したもので、三重県尾鷲市から和歌山県串本町付近です。報道によれば、この付近の和歌山県那智勝浦町では10月6日から8日午前9時までの総降水量は380mmを超え、1時間あたりの降水量は79.5mmを記録したということです。この画像と台風通過前の2009年9月16日観測のアブニール・ツー画像の比較から現地の状況の確認を行いました。
図1: 今回観測した画像全体
図1: 今回観測した画像全体
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観測日時: 2009年10月8日10時58分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角度: 14.0° 黄枠: 図2~5の範囲

図2は和歌山県那智勝浦町の太田川付近の拡大図です。黄色い枠で囲んだ部分は、山間部に降った雨水や、東西に流れている太田川へ流れ込む水路や河川の影響により、大規模な冠水が発生していると考えられます。冠水している面積はおよそ32ヘクタールありますが、9月16日の画像と比較すると、農地以外の場所のそばまで冠水していることが分かります。
図2: 和歌山県那智勝浦町の太田川近くの拡大(それぞれ約2.5km四方のエリア)
図2: 和歌山県那智勝浦町の太田川近くの拡大(それぞれ約2.5km四方のエリア) 左:2009年10月8日(台風通過後)、右:2009年9月16日(台風通過前)、フォールスカラー画像*2
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図3は和歌山県新宮市佐野・三輪崎付近の拡大図です。黄色の枠で囲んだ部分が浸水していると思われる箇所で、市街地のすぐそばで冠水していると考えられることから注意が必要です。
図3: 和歌山県新宮市佐野・三輪崎付近の拡大(それぞれ約3km四方のエリア)
図3: 和歌山県新宮市佐野・三輪崎付近の拡大(それぞれ約3km四方のエリア) 左:2009年10月8日(台風通過後), 右:2009年9月16日(台風通過前), フォールスカラー画像*2
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図4は三重県御浜町付近の拡大図です。農業用の用水路から水が流入し農地で大規模な冠水が発生していると考えられます。冠水している面積はおよそ11ヘクタールあります。
図4: 三重県御浜町付近の拡大(それぞれ約3km四方のエリア)
図4: 三重県御浜町付近の拡大(それぞれ約3km四方のエリア) 左:2009年10月8日(台風通過後), 右:2009年9月16日(台風通過前), フォールスカラー画像*2
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図5は熊野川流域の拡大図です。9月16日の画像と比較すると、川幅が広がっている様子が分かります。川幅ぎりぎりまで増水しているため、川沿いにある国道168号線、小船紀宝線(三重県道740号線)の通行には注意が必要です。
図5: 熊野川流域の拡大(それぞれ約6km四方のエリア)
図5: 熊野川流域の拡大(それぞれ約6km四方のエリア) 左:2009年10月8日(台風通過後), 右:2009年9月16日(台風通過前), トゥルーカラー画像*3
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なお、観測された画像は和歌山県および内閣府へ提供しました。

*1 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):

青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は東向きに14度で取得しました。

*2 フォールスカラー画像:

AVNIR-2のバンド4、3、2を用い、植生を赤く強調しているため浸水などにより植生が水没している様子が分かりやすくなります。

*3 トゥルーカラー画像:

AVNIR-2のバンド3、2、1を用い、人の目で見た色に近い色で表示した画像。

JAXA EORC