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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるカザフスタン大雨・雪解け水の被害にともなう緊急観測
カザフスタン南東部のアルマトイ州で2010年3月11日から12日にかけて大雨と雪解け水のためにダムが決壊し、発生した洪水により下流地域にある村が被災しました。宇宙航空研究開発機構(以下, JAXA)では3月17日(日本時間, 以下同じ)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(パルサー)、高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)による緊急観測を実施しました。
図1は3月17日午前2時24分頃、パルサーによって観測されたアルマトイ州付近の全体画像です。パルサーは能動型のマイクロ波センサのため夜間でも雲がかかっていても地表面を観測することができます。
図2は災害前後の比較として、災害発生後の2010年3月17日のパルサー画像を赤と緑、災害前の2006年9月29日に高分解能観測モード、オフナディア角41.5度で観測されたパルサー画像を青色に割り当てカラー合成した画像です。二時期の観測間で6度程度のオフナディア角の違いがありますが、カラー合成画像において黄色や青色で見える色の違いは地表面状態の違いを表していると考えられます。
図3は決壊したと思われるKyzylダムからKyzyl-Agash付近を拡大したパルサー画像で、左が災害前の2006年9月29日観測、真中が災害後の2010年3月17日観測、右が二時期のカラー合成画像です。カラー合成画像中に赤丸で示すように、拡大画像の下部にダムがあります。カラー合成画像においてダム湖付近は黄色に見えます。これは災害後の画像で湖の輝度が高いことを示しており、結氷していると考えられます。またダム湖の上端は黒く見えていることから、ダム湖の一部は水面が現れていると考えられます。その水面部が流れるダムの左上部の提体では災害前後で形状が変化しており決壊した様子を捉えているものと考えられます。さらに、ダムの提体から画像上部のKyzyl-Agash村を結ぶ川はカラー合成画像で青く見えることから増水していることが予想され、決壊したダムの水がKyzyl-Agash村に流れ込む様子を捉えたものと考えられます。
図4は3月17日午後14時20分頃にアルマトイ州付近を観測したアブニール・ツーの全体画像です。白く見えるのは雲と雪です。決壊したと思われるダム上空はうす雲に覆われており、また被災した村も南側半分程度が薄雲に覆われていましたが、色補正をすることにより薄雲の下の様子を確認することができました。
図5は決壊したと思われるKyzylダム付近を拡大したアブニール・ツー画像です。左側が災害後の画像、右側が洪水発生の3-4日前にあたる3月8日に観測された画像です。ダム湖の北西側がダムの堤体ですが、災害後の画像では色補正をしても雲の下の様子を見ることができず、決壊しているかどうかを確認することはできませんでした。災害前後の湖面に見える水色の部分は、氷とその氷の上の積雪と思われます。災害前の湖面は全体が氷と雪で覆われているのが分かります。災害後には湖面の中央部分が黒くなっていますが、これは湖面の氷が解けて水面が見えていると考えられます。
図6は被災したKyzyl-Agash村付近のアブニール・ツーの拡大画像です。左側が災害後の画像、右側が洪水発生の3-4日前にあたる3月8日に観測された画像です。災害前の画像で白く見えるのは雲か雪ですが、村と東側に流れる川がはっきりと見えています。災害後の画像上に黄色丸枠で示したところは災害前と同じく村の東側に流れる川がありますが、災害前と比較して川幅が広がっている様子が分かります。
取得された画像は、センチネルアジアを通じて関係機関へ提供されました。
なお、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。
*1 フォールスカラー画像:
AVNIR-2のバンド4, 3, 2を用い植生を赤く強調しているため、浸水などによって植生が水没している様子が分かりやすくなります。
JAXA EORC