データセット

ALOS/PALSAR等を用いた全球森林・非森林分類図の作成について

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2006年より運用している陸域観測技術衛星(ALOS)「だいち」に搭載したレーダーセンサー(PALSAR)を用いて、世界で初めて、全球の10m分解能の画像と森林・非森林の分類図(2009年、2007年)を作成し、ホームページで分類図画像を公開いたします。併せて、名古屋で開催中の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)のサイドイベント並びに、北京で開催予定の2010年地球観測に関する政府間会合(GEO)閣僚級会合において紹介することとしましたのでお知らせします。今後は、過去のデータの解析処理も行い、全球規模での森林炭素量変化を把握することにより、森林の減少及び劣化の抑制方策に役立つデータ作成を目指していきます。また、データ配布については、協力機関と協定を締結の上、行っていく予定です。

地球上の全陸域の約3割を占める森林の減少と劣化は、地球温暖化の加速や生物多様性の減少等の地球環境に影響を及ぼすため、森林の現状とその時間変化を全球規模で把握することは緊急課題となっています。特に、森林の減少と劣化に伴う二酸化炭素の排出量は、化石燃料(石油、天然ガス、石炭)の燃焼についで、全体の2割強を占めており、地球環境保全にとって極めて重要です。

地球を短時間で周期的に観測する地球観測衛星は環境変化の把握に適しており、古くは米国のランドサット衛星(光学センサ)が1970年以降実施してきました。しかし、光学センサの弱点は晴天画像が得られにくいということでした。それに対し、レーダーは天候に左右されずに観測が可能です。図1は「だいち」に搭載されたレーダー(PALSAR)が2009年6月から9月までの乾期に観測した全世界データを10m分解能で処理(幾何学補正*1、ラジオメトリック補正*2)し、全球86000シーン相当分のモザイク処理(接続処理)をしたものです。本画像は、PALSARの有する2種類の情報(水平偏波、垂直偏波)を赤、緑に、そしてこれらの比率に青を着色し、カラー画像としたものです。緑色がかったものが森林を、暗い緑から黄色が非森林を表します。

地上バイオマス量100t/haを一つの目安として、それ以上を森林として緑色、それ以下を非森林として黄色の2つのカラー(2値画像)で表現したのが図2に示す森林・非森林分類図(2009年分)です。この2値画像の森林・非森林の分類精度は地上基準データセット*3との比較で84%の正確さを持つことを確認しています。

2009年の10m分解能の全球モザイク画像(PALSAR, FBD)
図1: 2009年の10m分解能の全球モザイク画像(PALSAR, FBD)(クリックで拡大画像へ)
全球森林・非森林分類図(2009年分)
図2: 全球森林・非森林分類図(2009年分)(クリックで拡大画像へ)

図3は一部の拡大画像として、アマゾン、アフリカ、東南アジアを示しています。東南アジアについては中央カリマンタンを最大10mで拡大しています。この分解能でのパランカラヤ地方の森林・非森林状況がわかります。(図3中の赤枠部分については、10m分解能のPALSAR観測画像をダウンロードすることができます。 こちらのページからダウンロードください。)

代表的熱帯地方の森林・非森林分類図
図3: 代表的熱帯地方の森林・非森林分類図(拡大図:アフリカ、アマゾン、インドネシア)と中央カリマンタンの10m分解能SARモザイク画像、森林・非森林分類図、AVNIR-2画像。(クリックで拡大画像へ)

図4は1993年から2010年までのアマゾン・パラ州における森林変化を表します。1990年代はまばらだった森林伐採(画像中暗く見える)が、2006年以降の画像では急激に進んだことがわかります。1990年代の画像は地球資源衛星1号(JERS-1)「ふよう1号」のレーダを用いたものです。このように得られた画像を時間順に比較することで、全球で進行している森林の減少・劣化状況を把握できます。

アマゾン・パラ州に於ける1993年から2010年までの森林の時間的変遷
図4: アマゾン・パラ州に於ける1993年から2010年までの森林の時間的変遷©JAXA。 左から画像、森林・非森林、森林変化であり、赤が森林減少、薄緑が森林再生をあらわす。 場所は南緯8°、西経55°付近である。

今後、JAXAでは、「だいち」/PALSARを用いた森林観測を継続するとともに、JERS-1データの解析処理もあわせて行い、1990年代以降、全球規模で森林がどのように変化したのかを森林炭素量変化も含めて把握する予定です。また、これらの情報の高精度化を目的として各国の現地機関と共同で研究を実施する予定です。データの配布は、この一環として協力機関と協定を締結の上、行っていくとともに低分解能データはJAXAのホームページで随時公開する予定です。

*1 幾何学補正: レーダー画像に見られる倒れ込み補正を行ったもの
*2 ラジオメトリック補正: 勾配補正といい地形による画像の濃淡を補正したもの
*3 地上基準データセットはDegree Confluence Project: https://confluence.org/で集められた緯度経度一度格子点毎の現地データを元に作成されたもの

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