陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による2008年9月のハリケーン「アイク」洪水観測の結果について

2008年9月にアメリカ大陸に上陸し、ハイチ、テキサス州、ルイジアナ州などで大きな被害をもたらした大型ハリケーン「アイク」による洪水の状況について、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)では、2008年9月9日から18日にかけて陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により各地の観測を実施しました。

1. ハイチ(9月9日観測)

図1:図1左は、2008年9月9日(災害後、緊急観測)にPALSARで取得したハイチ西部の画像です。図1中央は、2008年2月9日(災害前)に取得されたほぼ同じ地域の画像です。合成開口レーダによる画像では、水面などの平坦な面は暗く写る傾向があり、画像の赤枠内にみられる暗い領域は、この洪水による浸水域と考えられます。図1右は、災害前の画像(中央)に青色、災害後の画像(左)に黄色を割り当てて重ね合わせたカラー合成画像で、青色が、災害後に暗くなった領域、すなわち浸水域の可能性が高い地域です。

図1: ハイチの観測結果(クリックで拡大画像へ)

左:災害後(2008年9月9日)、中央:災害前(2008年2月9日)、
右:災害前後カラー合成画像(黄色:災害後、青:災害前)
偏波:HH

図1左は、2008年9月9日(災害後、緊急観測)にPALSARで取得したハイチ西部の画像です。図1中央は、2008年2月9日(災害前)に取得されたほぼ同じ地域の画像です。合成開口レーダによる画像では、水面などの平坦な面は暗く写る傾向があり、画像の赤枠内にみられる暗い領域は、この洪水による浸水域と考えられます。図1右は、災害前の画像(中央)に青色、災害後の画像(左)に黄色を割り当てて重ね合わせたカラー合成画像で、青色が、災害後に暗くなった領域、すなわち浸水域の可能性が高い地域です。


2. テキサス州(9月16日観測)

図2: 左は、2008年9月16日(災害後、緊急観測)にPALSARで取得された米国テキサス州ヒューストン付近の画像、図2中央は2008年9月6日(災害前)、図2右は災害前後のカラー合成画像です。赤枠で示した沿岸部などに洪水域とみられる領域があります。

図2:テキサス州の観測結果 (クリックで拡大画像へ)

左:災害後(2008年9月16日)、中央:災害前(2008年9月6日)、
右:災害前後カラー合成画像(黄色:災害後、青:災害前)
※災害後の画像で海が明るく反射していますが、小さい入射角での撮影のため海面の波が反射したもので、波の少ない内陸の浸水域の検出には大きな影響はありません。
偏波:HH

図2左は、2008年9月16日(災害後、緊急観測)にPALSARで取得された米国テキサス州ヒューストン付近の画像、図2中央は2008年9月6日(災害前)、図2右は災害前後のカラー合成画像です。赤枠で示した沿岸部などに洪水域とみられる領域があります。


3. ルイジアナ州(9月18日観測)

図3: 図3左は、2008年9月18日(災害後)にPALSARで取得された米国ルイジアナ州ラファイエット付近の画像、図3中央は、2008年6月18日(災害前)、図3右は災害前後のカラー合成画像です。洪水域とみられる青い領域は広範囲にわたっています。

図3:ルイジアナ州の観測結果 (クリックで拡大画像へ)

左:災害後(2008年9月18日)、中央:災害前(2008年6月18日)、
右:災害前後カラー合成画像(RG:B=災害後:災害前)
偏波:HH

図3左は、2008年9月18日(災害後)にPALSARで取得された米国ルイジアナ州ラファイエット付近の画像、図3中央は、2008年6月18日(災害前)、図3右は災害前後のカラー合成画像です。洪水域とみられる青い領域は広範囲にわたっています。

このルイジアナ州の観測はPALSARの二重偏波モード(FBD HH+HV)を用いて行われました(注1)。図4は災害後の水平-水平偏波(HH)の画像に赤、同じく災害後の水平-垂直偏波(HV)の画像に緑、災害前の水平-水平偏波(HH)の画像に青を割り当てたカラー合成画像で、青色が浸水域の可能性が高い地域です。図4の白枠1では、密度の低い植生地帯であったところが浸水していると考えられます。白枠2では耕作地や市街地を含む広い範囲が浸水していると思われます。白枠3部分では大きな浸水域はなく、一部にみられる青い領域は計画的に冠水させている耕作地の可能性があります。

図4: ルイジアナ州の偏波カラー合成画像、災害後の水平-水平偏波(HH)の画像に赤、同じく災害後の水平-垂直偏波(HV)の画像に緑、災害前の水平-水平偏波(HH)の画像に青を割り当てたカラー合成画像で、青色が浸水域の可能性が高い地域です。図4の白枠1では、密度の低い植生地帯であったところが浸水していると考えられます。白枠2では耕作地や市街地を含む広い範囲が浸水していると思われます。白枠3部分では大きな浸水域はなく、一部にみられる青い領域は計画的に冠水させている耕作地の可能性があります。

図4: ルイジアナ州の偏波カラー合成画像 (クリックで拡大画像へ)

白枠1〜3部分をさらに拡大した画像(番号をクリック)  (   1   2   3   )

赤:災害後HH、緑:災害後HV、青:災害前HHのカラー合成画像
(青色や水色が浸水域の可能性があり、赤や黄色は農作地などの浸水していない土地、緑色が森林や畑など植生の多い地域、淡い緑色やピンク色は市街地を表していると考えられる)

ここでは、水面が暗く写るという合成開口レーダの特性を利用し、画像の暗い領域を洪水域と推定しています。レーダ画像は、暗い領域が必ずしも完全に水域と一致するとは限りませんが、広い範囲の状況を大まかに把握することに役立てられています。これらの観測データの一部は、国際災害チャータにも提供されました。

図5: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)のハリケーン「アイク」による洪水の被害状況把握を目的とした2008年9月9日から18日にかけてのPALSAR観測領域

図5: 観測位置

(注1) PALSARは、電界が地面と平行に振動する「水平偏波」と地面に垂直に振動する「垂直偏波」と呼ばれる、性質の異なる2種類の電波を観測に用いることができます。今回用いられた二重偏波モードFBD(HH+HV)では、衛星から水平偏波(H)を地上に照射し、地上で水平偏波(H)と垂直偏波(V)に分離した反射波をそれぞれ受信することにより2種類の画像を同時に取得します。これにより、1つの偏波のみ受信する単偏波モードと比べ、地表の状態についてより多くの情報を得ることができます。

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