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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による中部地方の観測結果

2011年3月12日3時59分頃(日本時間、以下同じ)、長野県・新潟県の県境付近の深さ約10kmでマグニチュード(M)6.7(気象庁、暫定)の地震が発生し、長野県栄村では最大震度6強を観測しました。その後も、震度6弱を2回観測するなど、余震とみられる大きな地震が発生しています。
2011年3月15日22時31分頃、静岡県東部の深さ約15kmでM6.4(気象庁、暫定)の地震が発生し、静岡県富士宮市では最大震度6強を観測しました。その後も、震度4を観測するなど余震とみられる地震が続いています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2011年4月11日22時9分頃陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により、これらの地震の震央を含む範囲を観測しました。本観測では2011年2月24日に同じ軌道から取得した画像と比較し、これらの地震に伴った地殻変動の検出を試みました。

図1:2011年4月11日22時9分頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により観測された全体図(赤枠がPALSARでの観測位置。星印は3月12日(a)および3月15日(b)の地震の震央を示す。)

図1: 全体図

図1は今回観測した範囲を示したもので、赤枠がPALSARでの観測位置です。星印は3月12日(a)および3月15日(b)の地震の震央を示しています。

図2左:2つの地震に伴う地殻変動を検出するため、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により観測された地震前(2011年2月24日)と地震後(2011年4月11日)の画像を使用して作成した差分干渉処理画像
図2右:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により地震後(2011年4月11日)に観測された画像

図2: (左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)。
(右)地震後に観測されたPALSAR画像。

(地震前)2011年2月24日、(地震後)2011年4月11日観測
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2つの地震に伴う地殻変動を検出するため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析(DInSAR解析)を行いました。図2左は地震前後のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図2右は地震後に観測されたPALSAR画像です。図2左の差分干渉画像には、ほぼ水平な虹色の縞模様(干渉縞)が見られます。この縞には、3月11日の東日本大震災(M9.0)の影響が含まれていると考えられます。図2左の白枠の範囲を拡大した画像を図3および図4に示します。

図3:図2(左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)より、長野県栄村付近の拡大図(補正済)

図3: 長野県栄村付近の拡大図(補正済)
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判読のため、図3の画像については広域的変動の影響とみられる縞を除去してあります。同図からは、衛星から遠ざかっている(沈降した、または東に移動した)領域と衛星に近づいている(隆起した、または西に移動した)領域が複数存在していることがわかります。 この地域では3月13日以降も比較的大きな規模の地震が複数回発生していることから、多数の地震の影響が組み合わされて複雑な変動が生じたものと考えられます。
中央部がノイズに覆われているため明確ではありませんが、沈降箇所と隆起箇所の相対的な変動量は最大数10cm程度と見られます。

図4左:図2(左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)より、静岡県富士宮市付近の拡大図
図4右:図2(左)PALSAR差分干渉画像(地殻変動図)より、静岡県富士宮市付近の拡大図(位相差を2倍に強調)

図4: 静岡県富士宮市付近の拡大図(右は位相差を2倍に強調)
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図4は、富士宮市周辺の拡大図です。元の画像(左)では不明瞭ですが、変化の度合いを2倍に強調すると(右)、富士宮市の一部(富士山頂の南西側)が衛星に近づく方向に、富士山頂から北東〜東側斜面にかけてが衛星から遠ざかる方向に変動している様子が見られます。変動量は、海岸付近との相対量で数cm程度です。
周囲の山岳地などではこれ以外にも変動しているように見える領域がありますが、こちらは大気(水蒸気)に起因するノイズ成分を含んでいる可能性があります。

JAXAでは今後も「だいち」による当該地域への観測を継続していく予定です。

(注1) パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮像が可能です。

(注2) 差分干渉処理:
PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星−地面間の距離』に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星−地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。本例では、青→緑→黄→赤→青の色の変化は地面が衛星に近づくことを、逆の色の変化は地面が衛星から遠ざかることを表します。(今回の観測では画像の西側から東側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく場合は西向きの水平変動もしくは隆起を、地面が衛星から遠ざかる場合は東向きの水平変動もしくは沈降、を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を表します。

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