PALSARによるオーストラリア大規模山火事火災跡抽出

2009年1月下旬に発生したオーストラリア・メルボルン近郊の大規模山火事は、長期間にわたって燃え続け、広い領域が消失しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では発災直後から「だいち」による被災地の観測をしてきました[1]。「だいち」搭載のL-band合成開口レーダー(PALSAR)は天候に左右されずに地面を観測でき、風水害、地震による地殻変動に高い感度を持っておりますが、観測データの解析により本山火事による消失箇所が推定できることがわかりましたので、お知らせします。

図1左に、2009年3月8日にメルボルン北部の町キルモア近郊を夜間に観測した画像に、過去(2008年10月21日)の画像との比較から推定した消失域を薄赤く表示しました(この図ではA、B、Cの3カ所確認できます)。背景の画像には、メルボルン市街やキルモア等の町が明るく(雲ではありません)、その間が暗く映っています。一方、右の図はNASAのMODISが1ヶ月以上も前の2月9日に同地域を観測した画像です。両画像は1ヶ月以上も隔たっていますが、レーダー、光学センサから抽出した山火事跡の大きさは類似しています。縮尺から、被災地は最大20km程度に及ぶことがわかります。また、PALSARは雲の下でも消失箇所をとらえることがわかります。図2に本被災地とオーストラリアの全体図を示します。

図1:図1左に、2009年3月8日にメルボルン北部の町キルモア近郊を夜間に観測した画像に、過去(2008年10月21日)の画像との比較から推定した消失域を薄赤く表示しました(この図ではA、B、Cの3カ所確認できます)。背景の画像には、メルボルン市街やキルモア等の町が明るく(雲ではありません)、その間が暗く映っています。一方、右の図はNASAのMODISが1ヶ月以上も前の2月9日に同地域を観測した画像です。両画像は1ヶ月以上も隔たっていますが、レーダー、光学センサから抽出した山火事跡の大きさは類似しています。縮尺から、被災地は最大20km程度に及ぶことがわかります。また、PALSARは雲の下でも消失箇所をとらえることがわかります。

図1: PALSARによる被災地域(薄赤)とMODISの画像 (クリックで拡大画像へ)

図2:オーストラリア山火事箇所

図2: オーストラリア山火事箇所

図3左が比較に使用した発生前の画像、図3中が発生後の画像です。見た目はほとんど変わりません。しかし、火災後は、地面が乾燥すること、植物等が消失して地面が滑らかになることのためにレーダー信号の後方散乱はほんのわずかですが小さくなります。これを利用して、明るさが発災前より80%以下(1デシベル以上)になったところを薄赤く色付けして、画像に重ねたものが図3右です。同じ手法を、発災前の2007年10月19日と2008年10月21日に適用してもこのような場所は現れません(図4)。

図3: 左が比較に使用した発生前の画像、図3中が発生後の画像。火災後は地面が乾燥すること、植物等が消失して地面が滑らかになることの為にレーダー信号の後方散乱はほんのわずかですが小さくなる。これを利用して、明るさが発災前より80%以下(1デシベル以上)になったところを薄赤く色付けして、画像に重ねたものが図3右。

図3: 火災前後の比較画像(火災発生時期を挟む画像) (クリックで拡大画像へ)

図4: 図3と同じ手法を、発災前の2007年10月19日と2008年10月21日に適用しても、レーダー信号の後方散乱の変化は現れない。

図4: 火災前後の比較画像(火災前の2枚の画像) (クリックで拡大画像へ)


注)[1]
関連記事: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるオーストラリア山火事の緊急観測結果(2009年2月10日)

HVについて: PALSARは電磁波を地表に向けて発射し、地面からの反射波を受信します。電磁波は進行方向と垂直に振動しながら伝わってゆく性質(縦波)がありますが、さらに、振動する方向が地面に水平か垂直かで性質が異なります(この振動する面を偏波面といいます)。HVとは送信を水平偏波で、受信を垂直偏波で受信した信号のことで、市街地、森林は明るいが、平地、裸地は暗いという特徴があります。今回は、HHとHVを同様に比較して、感度が高かったHVの画像を紹介しています。

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