「だいち2号」によるガラパゴス諸島シエラ・ネグラ山噴火の観測結果について

Posted: Jul. 13, 2018, 4:00 (UTC)

概要

  • ガラパゴス諸島イザベラ島シエラ・ネグラ山において、2018年6月26日より噴火活動が開始した。
  • JAXAは「だいち2号」による観測を行い、火口内の沈降と火口から北西側において複雑な地殻変動を捉えた。
  • 夜間あるいは雲や噴煙の下でも地表を観測可能な「だいち2号」の特性を活かし、火山活動の監視に貢献している。

 ガラパゴス諸島イザベラ島シエラ・ネグラ山において2018年6月26日より継続している噴火活動について、JAXA「だいち2号」(ALOS-2)搭載の合成開口レーダ「PALSAR-2」により継続的に観測を行います。表1に観測の概要を、図1に観測範囲を示します。

表1:「だいち2号」による観測の概要
観測日(UTC)軌道番号軌道方向観測モード偏波観測方向ビーム番号
2018年6月29日147南行軌道ScanSARHH+HVW2
2018年7月1日41北行軌道Stripmap 10mHH+HVF2-7
2018年7月3日145南行軌道SpotlightHH-
図1: シエラ・ネグラ山周辺の地形図とPALSAR-2による観測範囲。青線がStripmapモード、赤線がSpotlightモードの観測範囲を示す。黒線は図7の表示範囲。

図2: 2018年6月29日と5月18日のScanSARモードの観測データを用いた差分干渉画像(クリックで拡大画像へ)

 図2は2018年6月29日と5月18日のほぼ同時刻のScanSAR(広域観測)モードの観測データを用いた差分干渉画像です。この画像は衛星視線方向の地表面の変位量を色で表しており、水色から青、赤へ変わると地表が衛星に近づく方向に動いたことを示し、水色から黄色、橙、赤、青へ変わると衛星から遠ざかる方向に動いたことを示します。また、青から赤まで変化すると約12 cmの変動があったことを示し、縞の数が多いほど変動量が大きいことを意味しています。この解析結果では、山頂付近のカルデラ内では地下のマグマの減少によると思われる大きな沈降が見られる一方で、山頂の北西側では地下のマグマの移動によると思われる複雑な変動が見られます。

図3: 2018年7月1日と1月14日のStripmapモードの観測データを用いた差分干渉画像。
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 図3は2018年7月1日と1月14日のほぼ同時刻のStripmap(高分解能)10m解像度モードの観測データを用いた差分干渉画像で、観測領域の制約から山頂の西側は観測範囲外ですが、図2と同様にカルデラ内の沈降と思われるシグナルが見られます。

図4: 2018年7月1日と1月14日のStripmapモードの観測データを用いたオフセットトラッキング解析画像。左は電波照射方向の変動量 (Range)、右は衛星進行方向の変動量 (Azimuth)を示す。
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 図4は同じ2018年7月1日と1月14日のStripmap 10m解像度モードの観測データを用いたオフセットトラッキング解析画像で、電波照射方向 (Range)と衛星進行方向 (Azimuth)の2方向の移動量を推定できます。電波照射方向には沈降によると見られる変動が最大約4.1 m、衛星進行方向にはカルデラの中央に向かって収縮する方向の変動(図4右の矢印)が最大3.2 m見られます。

図5: 2018年7月3日と6月5日のSpotlightモードの観測データを用いた差分干渉画像。
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 図5は2018年7月3日と6月5日のほぼ同時刻のSpotlightモード(最も解像度の高いモード)の観測データを用いた差分干渉画像で、溶岩の流出が起きている山頂の北西側の変動の詳細を捉えています。

図6: 2018年7月3日と6月5日のSpotlightモードの観測データを用いたオフセットトラッキング解析画像。左は電波照射方向 (Range)の変動量、右は衛星進行方向 (Azimuth)の変動量を示す。
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 図6は図5と同じ2018年7月3日と6月5日のSpotlightモードの観測データを用いたオフセットトラッキング解析画像です。この画像からも、山頂の北西側において最大約2m程度の変動とカルデラ内西端の変動を捉えています。



「だいち2号」による2018年6月5日の観測画像
「だいち2号」による2018年7月3日の観測画像
図7: 2018年7月3日と6月5日のSpotlightモードの観測画像の比較
※ マウス等の操作により、画像中央に現れるスライダを左右に移動することで、画像間の変化を視覚的に比較することができます
(対応していないブラウザでは、単純に2つの画像が並べて表示されることがあります)。

 図7は同じ2018年7月3日と6月5日のSpotlightモードの観測画像の比較です。赤線で囲まれた領域は、2枚の画像の間で変化が起きたところを画像処理により抽出したもので、火口の北西部において溶岩流が流れたところを示していると考えられます。



関連リンク:
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