Posted: Dec. 6, 2017, 2:00 (UTC)
概要
図2中央は、図1白枠のアグン山付近を拡大したものです。ここでは視覚的な分かりやすさのために画像を回転し、画像の上方向を観測中の衛星の方向(およそ西南西)としています。図2左は比較のために噴火前の2017年10月6日に観測された画像です。今回の画像では火口内の様子が変わっており、溶岩が火口内に出現したものと思われます。合成開口レーダの画像では標高が高いものほど衛星に近づいて見える性質があり、逆に火口内の低い位置にある溶岩は衛星から遠い側(図2の画像上では火口縁よりも下側)にずれた像となって見えます。このずれから推測すると、火口縁から溶岩の表面までは依然として100メートル以上の落差があります。図2右は、今回の観測画像に火口内の見え方を表す模式図を入れたものです。
図3は、図2と同じ噴火前後の2時期のデータを干渉処理(インターフェロメトリ)することにより得られた差分干渉画像です。干渉処理によって、噴火に伴う地殻変動(隆起や沈降など)があった場合にはその変動量を求めることができますが、今回の観測ではPALSAR-2の干渉処理の検出限界を超える有意な変動は見られませんでした。バリ島南部に見られる青い領域は、2時期の観測時の気象条件の違いによる疑似的な変動で、今回の火山活動による変動ではないと考えられます。
図4は、干渉処理の際に得られる干渉度の画像です。干渉度は2枚の画像の類似性を示す度合であり、2時期の間に地表面状態が大きく変わると低下します。図5では干渉度が0.5以上の場所を灰色で、0.5以下を黄色から赤色で示しています。画像全体の干渉度はおおむね高いですが、火口の南側で干渉度の低下が起きています。これは、降灰や火山噴出物の堆積などにより地表面状態に変状が起きており、これが火口の南側だけに集中しているのは、風向きによるものと考えられます。なお、アグン山の北西側にも干渉度の低い地域がありますが、ここはバトゥール湖であり、一般的に水面では干渉度は低くなるためです。
これらの観測はセンチネルアジアからの要請に基づいて行われており、観測データはJAXAからセンチネルアジアを通じて現地機関に提供されています。
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