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2001年11月掲載



  人工衛星による宇宙からの観測で日々変化する海氷の謎を解明する

  冬のオホーツク海の名物、流氷。そうした海に浮かぶ「海氷」は、その温度の低さゆえに、大気にも大きな影響を与えています。気象の変化などの地球環境の仕組みを調べるには、海氷の変動のようすも調べなくてはいけないのです。

海に接するか氷に接するかで違ってくる大気のようす

 海氷というのは耳慣れない言葉かもしれませんが、流氷といえば、ほとんどの人はその映像をテレビなどでご覧になったことがあるでしょう。海氷と流氷は、ほぼ同じ意味と考えて差し支えありません。日本では、運がよければ2月から3月にかけて、北海道のオホーツク海沿岸で見ることができます(写真)。

 びっしりと海氷に覆われた海は、一見すると不動の大地のようにも見えますが、じつはかなり身軽であり、1日に数十kmも動くことがあります。岸までびっしりと海氷に覆われていても、次の日には陸からはまったく見えなくなってしまうということもめずらしくありません。

 こうして、移動したり凍ったり融けたりする海氷の変動は、地球の気候にも大きな影響を与えていると考えられています。しかも、北海道沿岸に海氷が長くいすわる年や、まったくやって来ない年があるように、年によってもその分布は大きく異なります。ですから、その影響は、決して毎年同じものとすることはできないわけです。

 このような海氷の分布の変化が、地球の大気や海洋に影響をおよぼすしくみは、このように考えるとわかりやすいでしょう。たとえば大気の下に接している海、そこに海氷がなければ、せいぜいマイナス1度程度の「暖かい」海です。しかし、もし海面が海氷に覆われていれば、マイナス数十度にも達するような、雪と氷の大地に大気は接していることになります。

 これは、少し極端にいえば、お湯をはった浴槽にふたをするのとしないのでは、浴室の温度が違ってくるのと同じように考えてもいいでしょう。海の上にある大気にとっては、それぐらいの差が生じるのです。

 では、海氷が変動することによって地球の気候がどう影響を受けるのか、それを知るためにはまず、海氷が何によって変動しているのかを知る必要があります。


海氷の観測には人工衛星が最適

 海氷の変動についての研究は、これまで十分になされてきたわけではありません。その理由のひとつに、観測がむずかしいことがあげられます。海氷に覆われた海には普通の船で入って行くことはできませんし、気象条件も苛酷だからです。

 しかし、最近の数十年は人工衛星からの地球観測が可能になり、海氷の分布に対する知識は急速に深まりました。とくに1972年からは、雲の影響を受けずに広い範囲の観測ができる、マイクロ波放射計による観測が始まり、その変動のようすがどんどん解明されてきています。

 図1はそのマイクロ波放射計の観測によって、1994年と今年2001年のオホーツク海の海氷の広がりをみたものです。海氷の広がりには年によって差があり、今年は海氷が多かったことがわかります。




 このように、衛星からの観測によって、海氷に関するいくつかの種類の情報を得ることができます。ひとつは図1のような情報、つまりどこがどの程度海氷に覆われているかということです。

 これはもっとも基本的で重要な情報です。また、海と氷では見た目や温度が違うように、いろいろな性質が違うことから、比較的得やすい情報でもあります。これまでの多くの研究は、この「どこが海氷に覆われているか」という情報を用いて、海氷に覆われた領域(海氷域)の変化のようすや、海氷域の変動と地形や気温、風速との関係について行われてきました。

 しかし、この情報だけでわかることには限りがあります。たとえば、昨日は海氷がなかったところに海氷があるとしても、それがそこで凍ったものなのか、それとも流れてきたものなのかはわかりません。

 このような実際の海氷の変化のしくみがわからないと、海氷が周囲の大気や海洋におよぼしている影響もわからないのです。

 そこで、さらに別の情報、たとえば海氷の状態や、氷の上に積もっている雪の深さ、海氷の動きなどを知るための研究が、最近10年くらいの間にさかんになってきました。ここでは、それらの研究のうちの、海氷の動きについて紹介します。


海氷の動きのようすと風向きや海流との関係

 衛星から見たある時刻の画像に、ある場所の海氷が写っていたとします。いくらか時間がたった後の同じ場所の画像を見たとき、海氷が違う位置にあるのなら、その海氷は動いていると考えられます。そこからは、海氷の動く向きと速さがわかります。このように考えることで、広い範囲での海氷の動きがどうなっているかを知ることができます。

 図2はNOAA衛星のAVHRRというセンサの赤外画像(おもに温度を反映した画像です)から計算した、オホーツク海南西部(北海道の近く)の海氷の動きです。岸に沿った流れやいくつかの渦などが見られ、かなり複雑な動きをしていることがわかります。



 また、このような結果を風速などと比較することにより、たとえば図3に見えているような渦は海の流れによるものであり、もっと全体的な大まかな動きは風によるものであることなどがわかってきました。

 しかし、ここで使ったAVHRRの画像は、雲がかかっていると海氷のようすを観測することができません。オホーツク海など多くの海域では、冬期はほとんど雲に覆われていますので、これでは困ります。

 図3は、DMSP衛星のSSM/Iというマイクロ波放射計の画像から計算した、北半球全体での海氷の動きです。雲の影響をほとんど受けないこのデータを使えば、気象条件の影響を受けずに、毎日の海氷の動きがわかります。しかし、残念ながら分解能はかなり低くなります。そのため、図3で見られるスケールの現象の多くは、これでは観測することはできません。






 そこで、ここでは大まかな動きに注目してみます。まず、全体的な流れの速さをみると、海氷域の端に近い低緯度の海域で、より速くなっていることがわかります。また、北極海には時計回りの大きな循環があります。

 毎日の海氷の動きと風速との比較から、このような大規模な海氷の動きは、一定の海の流れによる動きと風速の変化に同調した動きによってほぼ決定されていることがわかりました。また、風速の変化から受ける影響の大きさは、海域によってかなり異なることなども明らかになりました。

 図4は、1980年と1989年の、冬の北極海の海氷の動きを比べたものです。1980年は時計回りの大きな循環になっていますが、1989年にはほぼ一直線の流れになっています。このような違いも、おもに風速の違いによってもたらされています。また、海の流れも少しずつ変化してきているようです。






 このほかにも、日々の海氷の動きと海氷域の変化を検討することによって、どこで海氷ができてどこで融けているのか、海氷域の変化は何によってもたらされているかなど、いろいろなことがわかってきました。こうした成果が蓄積されていけば、なんらかの環境の変化があったときに(たとえば温室効果ガスが増えたときなど)、地球の気候がどう変化するかということを、今よりも正確に予測できるようになります。もちろん、毎日の天気予報の精度向上にもつながるでしょう。


期待される日本の衛星ADEOS−II

 このように、人工衛星による観測によって、海氷の変動について多くのことがわかるようになってきました。とくに、気象条件の影響を受けないマイクロ波放射計による観測は、海氷の研究にとって極めて大きな役割を果たしています。しかし、先にも述べたように、残念ながら分解能が悪いという欠点があります。

 今、もっとも期待されているのが、来年打上げ予定のADEOS−IIに搭載されるマイクロ波放射計AMSRです。これは現在の観測の、およそ2倍の分解能で観測できる装置で、これによる毎日のデータが取得されるようになれば、海氷の広がりや動きについて、さらに詳細なことが明らかになってくるでしょう。

 海氷については、まだまだわからないことがたくさんあります。たとえば海氷の厚さについては、人工衛星による観測からでは正確にはわからないため、それがどう変化しているのかは調べられていません。そうした未知の現象を解明するための挑戦は、これからも続けていかなくてはならないでしょう。



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