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地球が見える 2021年

東日本大震災-JAXA地球観測の記録

2021年3月11日、東日本大震災から10年を迎えます。改めて、東日本大震災の被害を受けられた地域の皆様に、謹んでお見舞い申しあげます。震災当時の地球観測、災害観測の現場を改めて記録に残すべく、振り返ってみたいと思います。本日から連載で、当時の記録や宇宙から見た復興10年間の様子、10年間のJAXAの防災の取り組みについてご紹介していきます。

目次
1. 巨大地震発生!JAXA地球観測の現場はどう動いたか
2. 国際協力による被災地の観測
3. 政府機関、防災機関との連携
4. だいちの使命を引き継ぐ衛星たち
5. 地球観測以外のJAXAの取り組み
6. 震災後の防災への取り組み
7. 参考

1. 巨大地震発生!JAXA地球観測の現場はどう動いたか

2011年3月11日14時46分頃、東北地方の太平洋沖で国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が発生しました。

JAXA筑波宇宙センターは震度6弱の揺れに襲われました。センター内の建物や設備等で被害が発生しましたが、幸い人的被害・衛星フライト品等への直接の被害はありませんでした。JAXAでは震災発生後、社内の被害状況確認に追われながらも、直ちに陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)を用いた緊急観測を行う準備を開始しました。

東日本大震災10年 知見をいかし未来へつなぐ (JAXA施設部)

宇宙空間を飛行する人工衛星と通信できるタイミングは限られています。また、被災地域の上空を通過するタイミングも限られています。筑波宇宙センターも被災した状況でしたが、衛星をコントロールするための計画を作成し、翌日午前中に「だいち」が被災地上空を通過するタイミングに備えた準備を行いました。

緊急観測では限られた観測機会を最大限に生かすための迅速な判断が必要となります。衛星から観測できる範囲や撮影性能、地上の捜索や航空機による観測で被害状況がまだ明らかになっていない地域の有無など、様々な条件をもとに観測計画が決定されました。

そして、震災の翌日午前中には東北地方を幅70km、長さ350kmに渡って縦断する緊急観測に成功しました。さらに連日にわたって観測を行い、3月14日には東北地方の沿岸全域が快晴となり、津波による被害の全貌が初めて撮影されました(図1)。

震災直後は多くの航空機やヘリコプターが津波被災地に集中的に投入された一方で、福島第一原子力発電所から半径30km以内は航空機の飛行が禁止されるなど、航空機観測でも全貌を把握できない状況となっていました。そのような状況の中、宇宙から広範囲を一度に観測することで、大規模災害の全貌が初めて明らかにされることとなりました。

衛星データが得られるまでには時間がかかりますが、震災当日のうちに、過去に観測された震災前のデータを政府機関に提供することも行われました。特に災害発生時には様々な情報が錯綜します。衛星データの解析には専門知識も必要となるため、JAXAでは「だいち防災マップ」のように様々な情報を分かりやすく地図上に示したものを用意し、関係機関に情報提供する取り組みを行っています(図2)。

霞ヶ関の政府機関への情報提供は、当時、東京の大手町にあったJAXA防災利用システム室が担当していました。震災直後に交通機関や通信が滞る中、会社に泊まり込みで勤務し、大きく印刷した衛星画像を背中に担いで、深夜に霞ヶ関まで自転車で届ける職員もいました。

震災前の「だいち」の画像に地理情報を重ねた「だいち防災マップ」

図2. 震災前の「だいち」の画像に地理情報を重ねた「だいち防災マップ」

2. 国際協力による被災地の観測

JAXAの衛星のみでは観測機会が限られてしまうため、東日本大震災では国際災害チャータとセンチネルアジアによる国際協力の枠組みも生かされました。震災発生から1時間以内に支援要請を行い、国際協力による緊急観測も開始されました。最終的には14か国・地域の27機もの海外衛星の協力を得ることで、5700シーン以上もの膨大な衛星データを取得することができました。それらの衛星データを用いながら、世界各地の研究機関による解析も行われました。

アメリカ地質調査所(USGS)により、宮城県の公園に書かれたSOSのメッセージが発見されたこともありました。膨大なデータの中から重要な情報を取り出すために、多くの人の協力を得て解析作業が行われていたことも忘れてはなりません。

国際災害チャータによる国際協力による仙台近郊の観測結果の例

図3. アメリカ地質調査所(USGS)によって発見されたSOSのメッセージ
(2011年3月19日、宮城県女川市女川町運動公園。JAXAではただちに宮城県に連絡し、避難地の安全が確認されました)

JAXAでは海外の宇宙機関や国際機関と協定を締結し、緊急時の観測支援や研究開発の協力を進めています。海外で災害が発生した際にはJAXAの衛星を使って緊急観測を行うなど、相互に協力できる体制を築いています。詳細については次回以降の記事で詳しくご紹介します。

国際災害チャータ
センチネルアジア

表1. 観測支援を受けた海外衛星の一覧

観測支援を受けた海外衛星の一覧

3. 政府機関、防災機関との連携

JAXAでも使える限りの計算機を動員し、海外の協力機関からも届く膨大な衛星データの解析を行い、解析結果を関係機関へ提供する日々が続きました。

被災から数日間、筑波宇宙センターでは水道が止まり食堂も閉鎖された状況でしたが、食料不足のスーパーで何とか食料を調達し、連日連夜にわたって解析を続けたという職員もいました。ガソリン不足の中、いつでも避難できるように貴重品を身に着けながら勤務にあたった職員もいました。

このような困難な状況であったにもかかわらず、JAXAでは広範囲にわたって、土砂崩れや橋・堤防の損壊、津波による浸水、津波により流出した漂流物、地殻変動、液状化、火災の状況などの解析結果を得ることができました。

以上のような災害観測の取り組みによって得られた約80種類、1700件以上もの解析結果が、政府機関や防災機関、地方自治体等に迅速に提供され、被害状況の把握や災害救助、復興に役立てられました。

「だいち」による地殻変動の解析結果

「だいち」による地殻変動の解析結果

図5. 「だいち」による地殻変動の解析結果
図5の詳細:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(34)

表2. 「だいち」のデータ提供、利用状況

観測支援を受けた海外衛星の一覧

また、地球観測に関する政府間会合(GEO)を通じて、世界の地震研究者にもデータを提供し、東日本大震災の地震・津波の発生メカニズムの研究など、サイエンスの分野でも役立てられました。


4. だいちの使命を引き継ぐ衛星たち

「だいち」は2006年1月に打上げられた後、日本を含む世界各地を観測し続けてきました。震災前の長期間にわたるデータが整備されていたからこそ、緊急観測の結果から変化を即座に抽出し、広範囲の被害の特定や地殻変動の解明に貢献することができました。しかしながら、震災発生から6週間後の2011年4月22日、電力系の異常により観測が停止し、そのまま回復することなく5月12日に運用を終了することとなりました。

東日本大震災当時、「だいち」はすでに設計寿命(目標)の5年を経過しており、緊急観測と電力系の異常は技術的には無関係の事象と考えられています。しかしながら、設計寿命を超えた後であったにも関わらず、震災発生から観測停止までに643シーンもの観測を完遂することができたのは「だいち」の使命感によるものだったのかもしれません。

現在、JAXAでは「だいち」の後継機として、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(2014年5月打上げ)が防災などに関する観測を行っています。そして、いよいよ2021年度には「だいち3号」、2022年度には「だいち4号」が打上げられる予定です。東日本大震災を経験した「だいち」の使命を引き継ぎながら、より高性能化したセンサーを搭載することで、宇宙から安心・安全な社会を見守り続けます。

陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)

陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)

先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)

先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)


5. 地球観測以外のJAXAの取り組み

衛星通信や宇宙科学、有人宇宙開発で培われた宇宙の技術は、災害時という特殊な状況で強みを発揮します。東日本大震災にあたっては、JAXAでは地球観測以外にも様々な活動を行ってきました。詳細はこちらのページでご紹介しています。

  • ●人工衛星による衛星通信回線の提供
  • ●航空機搭載合成開口レーダ「Pi-SAR-L2」による遺留品の捜索
  • ●実験用航空機による福島第一原子力発電所周辺の放射線量計測の協力
  • ●「超広角コンプトンカメラ」による放射性物質の可視化
  • ●JAXA COSMODE PROJECT製品による企業からの支援
  • ●職員用宿舎の貸与

6. 震災後の防災への取り組み

この10年間、JAXAの地球観測分野では、多くの海外の災害に対する緊急観測対応や、災害シミュレーションなどの技術開発、関係機関との連携強化を進めてきました。震災当時、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)と全球降水観測計画(GPM)は打上げ前の開発段階でしたが、幸い直接的な被害はなく、現在では宇宙から地球環境や豪雨災害を見守る重要な役割を担っています。

10年間の復興の様子については、衛星データからも明らかになってきています。10年間の復興の様子や、10年間のJAXAの防災への取り組みについては次回の記事で詳しくご紹介します。


7. 参考

JAXAの東日本大震災の災害対策支援の取り組み

東日本大震災対応報告書~地球観測衛星及び通信衛星による対応の記録~
(詳細な対応報告を公開しています)

ALOS利用推進研究プロジェクト 防災・災害 2011年
(震災当時に得られた各地の衛星画像を当時のまま公開しています)

※衛星データは政府機関や防災機関による被害予測や被害状況把握に利用されますが、解析や解釈には高度な専門知識が必要となります。災害時には必ず政府機関やお住まいの市町村から発令される情報を参照し、行動するようにしてください。


観測画像について

画像:観測画像について


図1

観測衛星 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ 高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)
観測日時 左:2011年3月14日(JST)
右:2011年2月27日(JST)

図4

観測衛星 TerraSAR-X
観測日時 赤:2010年10月21日
緑・青:2011年3月13日

図5

観測衛星 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)

関連リンク

本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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