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地球が見える 2020年

宇宙から見たオーストラリアの大規模森林火災

オーストラリアは、もともと干ばつや森林火災が多い地域ですが、2019年9月頃にオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州を中心に多発した森林火災は、次第に規模を拡大し、複数の場所で発生した森林火災が合流して制御不能となる「メガ火災(Mega Fire)」も発生するなど、2020年1月末の段階でも終息の目途が立たない状況となっています。森林火災は、人的・経済的被害だけでなく、多くの動物の生息環境の悪化や、大量の温室効果気体である二酸化炭素の大気放出を招きますが、オーストラリアの森林火災でも、コアラなどの野生動物の生息域への深刻な打撃が懸念されています。ここでは複数の衛星データを用いて、今回の森林火災を多角的に解析した結果を紹介します。

■ 干ばつの状況

今回の森林火災の背景のひとつに、オーストラリアの特に東部が、平年に比べて雨が非常に少ない「干ばつ」の状況にあったことが挙げられます。JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)において、GPM主衛星や水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)など複数の人工衛星データを用いて、「衛星全球降水マップ(GSMaP)」という世界の降水分布データを作成して提供しています。GSMaPは2000年3月以降のデータが整備されており、20年弱の衛星降水データとしては長期データセットであるため統計解析にも利用できます。
降水量のみで干ばつを評価できる統計指数である「標準化降水指標」(SPI: Standardized Precipitation Index)を、GSMaPから計算し、現在オーストラリアで発生している干ばつの検出を試みました。図1左は2019年12月の1か月間のGSMaP降水量から計算したSPI、右は2019年10-12月の3か月間の降水量より計算したSPIです。2019年12月のGSMaP降水量から計算した場合でも、2019年10-12月の降水量から計算した場合でも、オーストラリアの大部分が負のSPI値となっており、平均よりも降水量が少ないことがわかります。特に、東部では主要な穀倉地帯であるマレー・ダーリング盆地を含めて-1.5を下回る著しい乾燥や-2.0を下回る極端な乾燥の地域が広がっています。この結果は、オーストラリア気象局による2019年12月の干ばつ報告と一致しています。

2019年12月の1か月間のGSMaP降水量から計算したオーストラリアのSPI

2019年10-12月の3か月間の降水量から計算したSPI

図1 (左)2019年12月の1か月間のGSMaP降水量から計算したオーストラリアのSPI、(右)同様に2019年10-12月の3か月間の降水量から計算したSPI。SPIの値と干ばつの規模、現象の頻度の関係は、WMO (2012)で整理されており、SPIが「-1.5以下で-2.0より大きい」値を取る場合は、概ね「20年に1回」の著しく乾燥した(雨の少ない)状態、SPIが-2.0未満の場合は、現象の頻度が「50年に1回以下」の極端な乾燥に該当し、社会的影響が非常に大きい干ばつが発生する恐れのあることを示す。

このように昨年秋から、オーストラリアの広い範囲、特に東部が平年よりもかなり乾燥した干ばつの状態にある状況で、南東部のニューサウスウェールズ州を中心に森林火災が多発しました。

■ 火災にともなう煙・エアロゾルの状況

図2は2019年12月30日~2020年1月5日の期間について、静止気象衛星ひまわり8号搭載のAHIによる10分毎の観測によるRGB合成画像の動画です。雲域は白、火災による煙は茶色に見えており、オーストラリア東部の火災で発生した煙がニュージーランドを超えて広域に広がっている様子がわかります。図3は、同じ時期・領域について、熱赤外輝度温度差(11umと12umの波長の観測輝度温度の差)を示したもので、図1で茶色に見えた領域で輝度温度差が青系統の色で示す小さい値になっていないことから(鉱物粒子の場合は、差が小さくなる)、この領域はダストではなく煙であると推測されます。

また、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)搭載の多波長光学放射計(SGLI)では、静止気象衛星に比べると観測頻度は低いものの、より高解像度かつ詳細な観測により、情報を得ることができます。図4は2020年1月1日(上段)と1月5日(下段)に「しきさい」が観測したカラー画像(左列)と偏光反射率(右列)です。衛星から偏光観測を行うと、火災の煙が太陽光を散乱する際に偏光することにより明るく見えます(「しきさい」偏光近紫外観測の紹介)。1月1日にはシドニー付近から煙があがり、その周辺で偏光反射率が高くなっている様子が見えています。1月5日にはこの煙がニュージーランド付近まで広く到達していました。

「しきさい」による観測した2020年1月1日降交軌道のオーストラリア周辺の観測、カラー画像(黒いエリアは観測範囲外)

「しきさい」による観測した2020年1月1日降交軌道のオーストラリア周辺の観測、偏光反射率(白いエリアは観測領域外または雲域)

「しきさい」による観測した2020年1月5日降交軌道のオーストラリア周辺の観測、カラー画像(黒いエリアは観測範囲外)

「しきさい」による観測した2020年1月5日降交軌道のオーストラリア周辺の観測、偏光反射率(白いエリアは観測領域外または雲域)

図4 (上段) 「しきさい」による観測した2020年1月1日降交軌道のオーストラリア周辺の観測、(下段)同様に1月5日の観測。(左列)「しきさい」によるカラー画像(黒いエリアは観測範囲外)。(右列)「しきさい」による偏光反射率(白いエリアは観測領域外または雲域)。

JAXAではひまわり8号や「しきさい」の観測に整合性のあるアルゴリズムを適用してエアロゾル特性も推定していますが、これらの衛星観測のエアロゾルに関する情報をエアロゾル輸送モデルに同化する研究を気象庁気象研究所及び九州大学と共同で実施しています。図5は、このモデルの出力による1時間毎のエアロゾル種別の分布を、2019年12月30日~2020年1月5日の期間について動画で示したものです。なお、この共同研究による成果は、2020年1月29日から気象庁の現業の黄砂予報での利用が開始され、ひまわりによるエアロゾル情報の同化での利用が始まりました(2020年1月24日合同プレスリリース)。

全球範囲の動画
ひまわりエアロゾルを同化した気象研モデルによる日々のエアロゾル

エアロゾル輸送モデルは、気象庁気象研究所のModel of Aerosol Species IN the Global AtmospheRe (MASINGAR)で、ひまわりとMODISのエアロゾル光学的厚さの同化を行っている。MASINGAR同化予測システムは気象研究所/九州大学によって開発・運用されており、処理済プロダクトはJAXA分野横断型プロダクト提供サービス(P-Tree)より提供中。

■ 焼失域の把握

オーストラリア東部を温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)搭載の雲エアロソルセンサ(CAI)が観測した画像を示します。2019年9月1日には火災による煙は見えませんが、9月7日には大規模な火災による煙が黄色く2か所で発生し、消失したエリアは黒く見えています。その後、11月6日には煙は下火に見えますが、11月9日には火災による煙が太平洋に流れ、消失した場所は更に広がり、火災による延焼が広がっていることがわかります。両日の差分を取り、着色した画像によると、この3日間の変化として、緑色の発色は火災により焼失したエリア、黄色の発色は11月9日の勢いを増した火災による煙であることがわかります。

図7は、同じ領域について、2019年11月6日~21日の期間の3日毎の観測画像を動画にしたものです。11月の間に火災により焼失した箇所が黒く広がっていくことがわかります。特に画像南側の赤で囲ったエリアは11月のうちに激しく消失しました。

「いぶき(GOSAT)」搭載のCAIによるオーストラリア東部のRGB合成画像(2019年9月1日)

「いぶき(GOSAT)」搭載のCAIによるオーストラリア東部のRGB合成画像(2019年9月7日)

■ 森林減少域の把握

さて、「しきさい」や「いぶき」では、光学センサを利用しているため、火災域の上空に雲が存在するとその下の地表面の状況がわかりません。これに対して、陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンド合成開口レーダ「PALSAR-2」は、昼夜や天候、煙の影響を受けずに地表面を観測可能です。JAXAではオーストラリア東部で続いている林野火災について、2020年1月9日にALOS-2/PALSAR-2による緊急観測を行い、森林面積の減少域の検出を試みました。
図8の赤枠は今回PALSAR-2を用いて解析を行った範囲を示しており、オーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州からビクトリア州に位置します。
図9は解析範囲全体について、火災前後のPALSAR-2画像(火災前は2016年1月14日に観測)の比較から検出した森林面積の減少域を赤プロットで重ねたものです。
また、図10は図9の黄色枠内を拡大した例ですが、背景画像は今回取得したPALSAR-2のHV偏波画像としています。一般的にPALSAR-2のHV偏波画像では、森林域は明るく見えます。今回検出された森林面積減少域(赤プロット)は森林内に点在していることが分かります。なお、本解析結果は2016年から2020年の間に発生した森林伐採などの影響も含まれていることが予想されます。

このように、複数の衛星やセンサによって観測することにより、観測物理量・観測頻度・空間解像度・雲の透過といった観測能力など、各衛星の長所を生かして短所を補完し、地球の姿をさまざまな切り口で捉えることができるようになります。

観測画像について

画像:観測画像について


図1

観測衛星 全球降水観測計画主衛星(GPM core observatory)
水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)
観測センサ 全球降水マップ(GSMaP)
高性能マイクロ波放射計(AMSR2)
観測日時 2019年12月(左)
2019年10月~12月(右)

図2、3、5

観測衛星 静止気象衛星ひまわり8号
観測センサ 可視赤外放射計(AHI)
観測日時 2019年12月30日~2020年1月5日

図4

観測衛星 気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
観測センサ 多波長光学放射計(SGLI)
観測日時 2020年1月1日(上段)
2020年1月5日(下段)

図6、7

観測衛星 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)
観測センサ 雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)
観測日時 2019年9月1日、2019年9月7日(図6、上段左から)
2019年11月6日、2019年11月9日(図6、下段左から)
2019年11月6日~21日(図7)

図10

観測衛星 陸域観測技術衛星2号「だいち2号」
観測センサ フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)
観測日時 2020年1月9日

関連リンク

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