中国では急速な経済成長と緩い規制に伴う大気汚染が深刻な問題となっています。2013年には北京で世界保健機関(WHO)が推奨する基準値の40倍を上回るPM2.5が検出されたため、中国政府はこの年北京に厳しい大気汚染防止策を導入しました。
2019年には大気汚染が大幅に改善しPM2.5濃度が前年比約20%低下しました。さらに、2020年初めにはCOVID-19によるロックダウンに伴い改善していた大気汚染が、同年5月には経済活動の再開に伴い再び悪化しています。
図1は2009年~2020年5月の中国・北京周辺を捉えたGOSAT TANSO-CAIの観測値から算出したバンド1(380nm)の簡易的な大気反射率(*1)の月平均値画像です。380nmはレイリー散乱しやすいため、散乱角を用いて簡易的にこの影響を補正し、大気エアロゾル粒子による散乱を強調しています。エアロゾル粒子が多いところではこの値が大きくなります。北京の位置を十字で示しています。
この画像からこの12年間で北京付近のエアロゾルが増減を繰り返していることが分かります。2012年、2013年頃にはエアロゾルが多かったものの、2019年には2013年に導入された大気汚染防止策以降で最もエアロゾルが減少していることが分かります。また、2020年には前年よりエアロゾルが増加していることも確認できます。
図2にAERONETの北京サイトで観測されたAOT380nmの2010~2020年の5月の月平均値(左軸)と、北京を中心とした0.5度格子の領域で平均したCAI バンド1の簡易的な大気反射率の月平均値(右軸)を示します。後者はエアロゾルの相対的な増減を求める簡易的な手法ですが、AERONETの地上観測値と時系列的な傾向が概ね整合していることが分かります。
(*1)簡易的な大気反射率とは、バンド1の大気上端反射率と、撮像日前後15日のデータから算出した地表面反射率との差分を、散乱角を用いて簡易的にレイリー散乱の影響を補正した値。使用データにはCAI L2雲プロダクトを用いて雲スクリーニングを実施している。
図1 中国・北京(図中の+)周辺の2009年~2020年5月の、CAI バンド1(380nm)の簡易的な大気反射率の月平均値。レイリー散乱の影響を簡易的に補正。
図2 AERONET BeijingサイトでのAOT380nmの5月の月平均値(左軸)と北京中心0.5度格子領域のCAI バンド1の簡易大気反射率の月平均値(右軸)
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