TANSO-FTS
TANSO-FTSの主系ポインティングシステムには、角度レゾルバで検知できないポインティングオフセットがあります。ポインティングオフセットは、搭載カメラ(CAM)を使用して推定されてきました。2015年1月以前のオフセットは、月毎の時間スケールで緩やかに変化していました。観測後2週間ごとに、オフセットの最良推定値が更新され、国立環境研究所(NIES)からGOSAT Data Archive Service(GDAS)経由で提供されます。これらの補正値の適用により、地理的位置の変動は1 km未満まで低減します。2013年8月5日以来、測定点観測モードの計画にポインティングオフセットを考慮してきました。本変更と上述の1 kmの変動により、特定点観測は基本的に2 km未満のポインティング誤差で実施されてきています。
2015年1月26日から使用されている従系ポインティング機構部のポインティングオフセットは異なります。角度レゾルバのオフセットはまだ検知されておらず、従系システムのポインティング静止は主系システムより大幅に安定しています。しかし、光線軸とCT回転に若干の位置ずれがあり、CT角度依存のオフセットが生じています。TANSO-FTS L1B(V201)プロダクトでは地理的位置が補正され、補正後の精度は0.5 kmより良くなっています。特定点観測では、幾何オフセットおよびGOSATの衛星バスとTANSO-FTSの間の位置ずれが2015年8月30日から考慮されています。ポインティング位置およびポインティングオフセットの最良推定値は、現在、TANSO-FTS L1B V201で提供されています。
下記の図は、打ち上げから2016年9月までの、TANSO-FTS L1B(V161)データの幾何評価結果です。ここでは格子点・特定点観測別に、TANSO-FTSのポインティング角度誤差を時系列で示します。
TANSO-FTS L1B(V161)幾何評価結果(上段:ATオフセット角、下段:CTオフセット角、赤点:格子点観測、青点:特定点観測)
従系のTANSO-FTSポインティング機構による観測が開始された2015年1月28日以降、その特性は変化しており、下記の図の上段に示すように、格子点観測・特定点観測ともCT角に大きく依存する傾向が見られます。そのため、TANSO-FTS L1BにおけるAT/CT角の角度誤差を、それぞれ1次式、2次式のCT角の関数系で近似しました。下段は、近似式を適用した残差を示します。
TANSO-FTS従系幾何評価結果(L1B(V161):2015年1月28~2016年9月30日)(上段:補正前、下段:補正後)
下記の図は2009年4月からのTANSO-FTS L1B(V201)データの幾何評価結果を示します。TANSO-FTS L1B(V201)データでは、レベル1処理にて、2軸回転軸でのオフセットが設定されています。そのため、TANSO-FTS L1B(V161)に見られたようなオフセットは取り除かれており、現在の角度誤差は安定して推移していることが分かります。
2024年2月1日までのTANSO-FTS L1B(V201)幾何評価結果(上段:ATオフセット角、下段:CTオフセット角、赤点:格子点観測、青点:特定点観測)
TANSO-CAI
各画素の正確な視線ベクトルは、打ち上げ前に、実験室でコリメーターを使用して幾何学的に校正されました。光学的収差や光軸から離れた画素の位置ずれが大きい場合、ATとCTの両方向の幾何モデルを、以下に述べる三次多項式を使用して表すことができます。打ち上げ後、係数が地上校正点(GCP)を使用して見直されてきました。ただし、打ち上げ前の値からの差は非常に小さいです。
(1)
(2)
この方程式で、は多項式の係数、とは直下視からのATおよびCT角、nは画素数、ncは中心画素数(バンド4では256、それ以外では1024)。
バンド1 | バンド2 | バンド3 | バンド4(偶数) | バンド4(奇数) | |
---|---|---|---|---|---|
Px3 | 1.1042E-11 | 1.3544E-11 | 1.1480E-11 | 2.0181E-10 | 2.0181E-10 |
px2 | 1.2405E-08 | 7.9231E-09 | 2.6799E-09 | 1.0315E-07 | 1.0315E-07 |
px1 | 1.4054E-05 | 2.7562E-05 | 1.8661E-05 | 7.4481E-05 | 7.4481E-05 |
px0 | -2.5041E-02 | -2.5083E-02 | -2.7217E-02 | -7.9300E-02 | 3.7578E-02 |
バンド1 | バンド2 | バンド3 | バンド4 | |
---|---|---|---|---|
py3 | -8.9523E-10 | -2.6717E-09 | -2.6257E-09 | -2.6057E-08 |
py2 | 9.2563E-09 | -1.0567E-08 | -1.7011E-08 | 1.4569E-07 |
py1 | 4.3143E-02 | 4.3109E-02 | 4.3053E-02 | 1.2924E-01 |
py0 | -9.0261E-02 | -8.4981E-02 | -6.1074E-02 | -1.1705E-01 |
TANSO-CAIレベル1B、1B+および2では、地理的位置は上述の式と数値標高モデル(DEM)データを使用して補正されます。バンド4のみが、512画素のInGaAs検出器と、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を使用しています。偶数と奇数の画素に、それぞれの2つの異なる読み取り方向があります。検出器の偶数番号画素用読み取りマスクの不透明性が十分でなく、その視野領域が広がっています。これらの異常は、TANSO-CAIのレベル1B、1B+およびレベル2プロダクトの偶数画素と奇数画素の地理位置を別々にシフトすることにより最小化されます。