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EarthCAREがめざすサイエンス


JAXAではEarthCAREでの観測を通し、より正確な地球温暖化予測の実現を目指しています。そのため国内外の多くの研究者と密に関係を持ちながら、EarthCAREに求められる性能を評価し、その実現に向けて研究開発を続けてきました。多分野の研究者を衛星観測データのユーザとして迎えることにより、様々な利用研究が期待されています。例えば、一番の目標として掲げているものは、最近地球温暖化関連の話題で取り上げられることの多い「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)のレポートへ、日本が大きな貢献をすることです。

EarthCAREが目指すサイエンス

図1に示しますように、このプロジェクトでは衛星観測データと気候モデル・気象予報モデルなどが密接に連携を取りながら研究を進める体制を構築しています。これまでの研究では衛星観測と気候モデルを用いた数値計算の結果を結びつけて理解しようにも、2つのデータを単純に比較できませんでした。それは気候モデルを用いた計算の粗さや、不確定要素を多く含むパラメタリゼーションの問題などに起因しています。

しかし近年になって、計算機の能力の急速な発展と共に、非常に現実的な非静力学雲解像全球モデル(NICAM等)による計算が行われるようになり、そのモデル計算の結果と衛星観測とを緻密に比較できるようになりました(図2はその一例)。

図2 衛星画像(左)とモデル計算(右:NICAM)の結果。
モデルはMadden-Julian Oscillation(MJO: 赤道季節内振動)に伴う、東南アジア島嶼部の水平スケール数百キロの組織化された雲群を再現しています(三浦らによる。2007年12月にScienceに掲載)。

そこでEarthCAREにより得られた観測データをこのモデルの改良に用いることで、さらに正確な計算が可能となります。また、この高精細な非静力学雲解像全球モデルと衛星観測が高い整合性を得られるようになれば、そこで解明された物理現象のメカニズムを、より現実的なパラメタリゼーションとして気候モデルに適応することによって、精度の良い地球温暖化の研究が行えるようになります。特に全球に渡る雲の鉛直構造と、その内部の運動の様子をCPRで観測することは、雲の生成プロセスを直接観測することとなり、モデルを用いた研究に与えるインパクトは非常に大きいと考えられます。

<出典>
Hiroaki Miura, Masaki Satoh, Tomoe Nasuno, Akira T. Noda, and Kazuyoshi Oouchi,
Science 14 December 2007 318:1763-1765 [DOI: 10.1126/science.1148443]