図1は、ALOS/PALSARのFBSモード(HH偏波)で伊豆諸島の三宅島付近を2006年6月12日に観測した画像です。御蔵島の南西に位置するイナンバ島から北東方向に伸びる、約20kmに渡る渦列が確認できます。また、図2は、ポラリメトリックモードで6月18日に観測した画像(HH偏波)です。御蔵島の後方に図1よりも空間スケールの大きな渦対がみられます。
大気の流れによる渦列は、冬季に強い北西風が持続するときに、韓国の済州島の風下に形成されるのが良く知られています。これらの渦列は雲のパターンとして可視化され「ひまわり画像」等で見ることが出来ます。
Courtesy of JAXA/TOKAI UNIVERSITY
図3: MODISにより観測された6月17-19日の海面水温(SST)場 (クリックで拡大画像へ)
図4: 図3の赤枠で囲った領域での海底地形 (クリックで拡大画像へ)
PALSARで観測された渦列はその海洋版であり、海流(黒潮)により形成されます。図3はMODISにより観測された6月17-19日の海面水温(SST)場です。高温帯で示される黒潮は三宅島、御蔵島付近を東北東方向に流れているのが分かります。黒潮は幅約100km、流速は毎秒1-2mで北大西洋を流れるメキシコ湾流に次いで流れが強く、速いことが知られています。
図3の赤枠で囲った領域での海底地形を図4に示します。青枠、白枠はそれぞれ図1、2の領域を表しています。渦列が形成されたイナンバ島、御蔵島は円錐形に近く、また、黒潮の流れの方向に他の障害物(海山)も少ないため渦列の形成に適した島であると言えます。以上のように、1)強流が持続する黒潮、および、2)適した海底地形という条件が重なって、イナンバ島、御蔵島後方に渦列が形成されたということが出来ます。これらの渦列が島付近の海洋環境に対して与える影響は興味深く、今後の研究課題といえます。
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