陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるフィジーのサイクロン被害にともなう観測結果

2009年12月14日にフィジーのヴィティ・レヴ島をサイクロン「ミック(MICK)」が通過し、各地で浸水などの被害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(以下, JAXA)では12月15日午後8時14分(日本時間,以下同じ)頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による観測を実施しました。

図1:ALOS搭載のPALSARによって観測されたヴィティ・レヴ島(フィジー)の水害前後の観測結果とカラー合成画像、左: 水害後(2009年12月15日)、中央: 水害前(2009年 9月 9日)、右: 水害前後カラー合成画像(R:B=災害後[偏波HH]:災害前[偏波HH])

図1: 水害前後の観測結果とカラー合成画像 (クリックで拡大画像へ)

左: 水害後(2009年12月15日)
中央: 水害前(2009年 9月 9日)
右: 水害前後カラー合成画像(R:B=災害後[偏波HH]:災害前[偏波HH])

図1左は、2009年12月15日(水害後)にPALSARで取得されたフィジー / ヴィティ・レヴ島東部の画像、図1中央は2009年9月9日(水害前)、図1右は水害前後のカラー合成画像です。図1右は水害後の水平-水平偏波(HH)の画像に赤、水害前の水平-水平偏波(HH)の画像に青を割り当てたカラー合成画像で、青色が浸水域の可能性が高い地域を表していると考えられます(注1)。

図2:図1右の白枠Aの拡大図

図2: 図1右の白枠Aの拡大図
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図1右の白枠A部分を拡大したのが図2で、ナウソリ(Nausori)近郊に位置し、図2中央上側にはナウソリ空港の滑走路が確認できます。また、蛇行する暗い曲線は河川に相当します。この河川周辺に青色部分が所々広がっており、広い範囲で浸水しているものと考えられます。

図3:図1の白枠Bの拡大図

図3: 図1の白枠Bの拡大図
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図1の白枠Bを拡大したのが図3で、暗い曲線は山間を流れる河川を表します。この河川に沿って青色部分が広がっており、谷間を流れる河川周辺が広く浸水している様子を表すものと考えられます。

図4:図1右の白枠Cの拡大図

図4: 図1右の白枠Cの拡大図
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図4は図1右の白枠Cの拡大図で、北(上)から南(下)へ流れる河川と西(左)から東(右)へ流れる河川が合流して南東(右下)へ流れを変える地点に相当します。この河川に沿っても青色部分が広がっており、特に河川が合流する地点では広く浸水しているものと考えられます。

図5:観測位置、青枠はPALSAR画像の観測位置を示す。

図5: 観測位置 青枠はPALSAR画像の観測位置を示す。
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JAXAでは今後も「だいち」によるフィジーのサイクロン被害に関する観測を継続していく予定です。

(注1)
この解析では、水面が暗く写るという合成開口レーダの特性を利用し、災害前に明るく、災害後に暗くなった領域を浸水域と推定しています。レーダ画像は、暗い領域が必ずしも完全に水域と一致するとは限りませんが、広い範囲の状況を大まかに把握することに役立てられています。これらの観測データの一部は国際機関にも提供されました。

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