陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による中国四川省で発生した地震に関する観測結果について(5)

平成20年5月12日(日本時間、以下同じ)に中国四川省で発生したマグニチュード8.0の大地震による被害状況を把握する為に、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、平成20年6月11日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測は、地震前の平成20年4月26日に取得した同じ軌道からの画像を使用し、差分干渉処理によって地殻変動状況を把握いたしました。「だいち」は、南から北に向かって飛行し、震央からすぐ西の領域を観測しました 。(図1)

図3:観測地域全体図

図1: 全体図
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図2:陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による平成20年6月11日(同年6月10日UTC)観測の中国四川省大地震被災地域(震央からすぐ西の領域)画像。左は地震前と地震後を比較した差分干渉画像、右は南北450kmにわたる地震後の画像を示したもの。

図2: 左:PALSAR差分干渉画像 右:地震後南北450km画像
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図2左は地震前と地震後の画像を比較した差分干渉画像、右は比較前の南北450kmにわたる地震後の画像を示したものです。

図3:図1の地震前と地震後を比較した差分干渉処理画像で変動が大きかった箇所(図2白枠内)の拡大図(南北200km×東西75km)

図3: 南北200km×東西75km 干渉画像(図2中白枠内拡大図)
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図3は変動が大きかった領域約200km×75km(図2中白枠内)を拡大したもので、断層運動による変動の様子をより細かく把握する事ができます。大きな半目玉状の縞が観測され、地震による地殻変動が震央から約100km西または北西の領域にまで及んでいた可能性があります(図4も参照)。これまでの「だいち」による観測から、地震に伴って広い範囲に渡る大きな地殻変動が生じたことが確認できました。


図4 左:これまでの観測結果(左から、パス477(今回)、476、474、473、471)。図中の黒い部分は、解析に用いた標高データが欠損している領域。右:これまでの観測結果2。推定される断層周辺(図4の白枠内) これまで実施してきた観測結果(全体) 左図内白枠部分の拡大図(推定される断層の周辺)

図4: 左:これまで実施してきた観測結果(全体)
右:左図内白枠部分の拡大図(推定される断層の周辺)。
なお図中の黒い部分は、解析に用いた標高データが欠損している領域。

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図4はこれまでに「だいち」によって観測された差分干渉画像をつなぎ合わせたものです(一番左の干渉画像が今回の観測地域)。

JAXAでは今後も「だいち」による四川省被災地の観測を継続していく予定です。

(注1) 青 → 緑 → 黄 → 赤 → 青(青い領域から青い領域まで、ここまでで1周期=11.8cmの変動)の順番の色の変化は、衛星に近づく変動を表わします。

(注2) 使用データの取得日は、協定世界時(UTC)で平成20年6月10日と4月25日(それぞれ日本時間で平成20年6月11日と4月26日)です。

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