陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるポルトガル森林火災の緊急観測結果

2009年8月中旬頃からポルトガル、スペインの北部の森林地帯では山林火災が続いている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2009年9月3日20時03分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*1によりポルトガル中部の森林火災発生地の緊急観測を実施しました。

図1:2009年9月3日20時03分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)により観測された画像全体(ポインティング角:-38.0度, 黄枠:図2の範囲)

図1: 今回観測した画像全体
(クリックで拡大画像へ)
観測日時: 2009年9月3日20時03分頃(日本時間)
センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー)
ポインティング角度: -38.0°
黄枠: 図2の範囲

図1は今回観測した画像の位置を示したもので、ポルトガルの首都リスボンから北東へ約200kmに位置します。9月3日に観測されたアブニール・ツー画像を4シーン結合して解析を実施しました。

図2:火災により焼失したと考えられる箇所周辺の拡大(それぞれ約30km×30kmのエリア、左:火災後(2009年9月3日)、右:火災前(2008年6月20日)、トゥルーカラー画像)
)

図2: 火災により焼失したと考えられる箇所周辺の拡大
(トゥルーカラー画像*2、それぞれ約30km×30kmのエリア)
左: 火災後(2009年9月3日)、右: 火災前(2008年6月20日)
黄色丸: 火災により焼失したと考えられる場所

(クリックすると高解像度画像が見られます)

図2は図1の黄枠の範囲を拡大した画像で、火災により焼失したと考えられる場所がグレー色に見えており、それぞれ黄色丸で示しています。画像を詳細に確認したところ、特にアブニール・ツーの近赤外チャンネル(バンド4)で今回の火災により消失したと考えられる場所が判別できることが分かりました。

図3: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)により観測されたポルトガル、スペインの北部の森林火事被災地付近、約1.5秒で火災により焼失したと考えられる場所が赤色で表示されます

図3: 火災域の推定マップ (クリックで拡大画像へ)
(約1.5秒で火災により焼失したと考えられる場所が赤色で表示されます。)

図3は解析を実施した4シーン分の範囲について、火災により消失した場所を赤色で示しています。推定された火災発生場所は広範囲に点在していることが分かります。赤色で示した面積の合計は約261平方kmで、これは東京都のJR山手線内の面積のおよそ4倍、東京ドームの面積のおよそ5,600個分に相当します。

なお、取得したデータは欧州の全球環境・安全監視プログラム(Global Monitoring for the Environment and Security, GMES)へ提供しました。

*1
高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー): 青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は西向きに38度で取得しました。

*2
トゥルーカラー画像: AVNIR-2のバンド3、2、1を用い、人の目で見た色に近い色で表示した画像。

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