有明海は、大潮の時には7mにも達する大きな潮の満ち引きがある内海であり、これに伴って広大な干潟が表出すると言われています。
また、有明海はこの大きな干満を利用した海苔の養殖でも有名です。
以下では、ALOS搭載の高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)によって観測された2006年10月・11月の有明海の様子をご紹介します。
図1はAVNIR-2によるRGB画像(トゥルーカラー)です。有明海北部の青白く見えている懸濁物質がそれぞれの日で異なったパターンを示しています。
図1: AVNIR-2による2006年10月10日、13日、18日の有明海のRGB画像 (クリックで拡大画像へ)
潮汐は地球の自転に伴い、1日2回干潮と満潮を繰り返し、また、月や太陽の位置により干満の差が大きい大潮と差が小さい小潮を繰り返します。
図2の灰色線は各日付のALOSの観測時刻付近の気象庁大浦(おおうら)験潮所(場所は図1に矢印で示す)における潮位です。このうちAVNIR-2観測時刻に近い10時・11時・12時の値を、青・黒・赤の線で示しています。
この図2のグラフから、図1の10月10日の画像は潮の高い時刻、13日は満ち潮に向かう時刻、18日は干潮に向かう時刻に対応していたことが分かります。
図2: 大浦験潮所の潮位(基準面からの高さ)
図3: 2006年10月10日、13日、18日のAVNIR-2画像の有明海北部の拡大図で、
RGBのRに近赤外チャネルを、GとBに赤チャネルを割り振ったもの (クリックで拡大画像へ)
図3は有明海北部をチャネルを替えて示したものです。
近赤外光は水で良く吸収されるので、土地が水上に出た場合(上図では赤色)と水面下の場合(暗色)の差を良く表すことができます。
図4は上の3日間の違いがある海域を色(黄緑は10月13日と10日の差、水色は18日と10日の差)で表したものです。
最適なチャネルを用い、複数の画像を比較することで、潮汐に伴って水上に現れた領域が良く分かります。
図5: AVNIR-2による2006年10月18日と11月25日の有明海北部のRGB画像(トゥルーカラー画像)
(クリックで拡大画像へ)
上図は、有明海北部のRGB画像を拡大したものです。
10月から始まった海苔の養殖棚が11月の画像ではっきりと見えています(右図の赤破線で囲んだ領域)。
このように、複数の衛星画像と地上の観測や情報を組み合わせて解析することによって、潮汐に伴う干潟や養殖棚などの変化を2次元的に把握することが可能となり、沿岸の環境監視や仕組みの解明に役立てることが期待されます。
©JAXA EORC