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コラム4 台風観測の最前線
コラム4 雲と雨からわかること  
宇宙航空研究開発機構 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター(EORC)


副主任研究員 理学博士
清水 収司 しみずしゅうじ

宇宙航空プロジェクト研究員 理学博士
広瀬 正史 ひろせまさふみ
前回に引き続き、TRMMプロジェクトの清水さんと広瀬さんを訪ね、「TRMM」についてもう少しお話ししていただきました。

●「雲」と「雨」から地球のことがわかる!


前回は、「台風」がどんな形をしていて、どんな風に動いているのかなど紹介したけど、今回は、「雲」と「雨」についてもう少し話をするね。空を見上げれば「雲」が見えるし、「雨」が降る日もあるけれど、みんなはどのくらい「雲」や「雨」のこと知ってる?

「雲」と「雨」が私たちの生活とどのくらい関係しているのかなんて、気にしたことがないかもしれないけど、実は、「雲」と「雨」のことを知ることによって、地球のいろいろなことがわかってくるんだよ。

●雨はどこでいつ降っているの?

私たちは「TRMM」という熱帯降雨観測衛星から主に「雨」観測をしています。TRMMは、熱帯地方の雨の分布を観測するための衛星です。世界の雨の約3分の2は、熱帯地方に降るといわれていますが、そのほとんどは海やジャングルのような密林で人が住んでいないところなので、これまでは雨がどのくらい降っているのか調べるのが困難でした。

TRMMによって、いろんな場所のいろんな時間の雨が測れるようになったので、人がいない場所も含め、どこで何時ごろどのくらい雨が降るかということが、ようやくはっきりわかるようになりました。

下の図は、午前中12時までと午後夕方までの実際に降った雨の量を比較し、午前が多いのか、午後が多いのかを表したものです。青色が午前に多いところ、赤色が午後に多いところです。海上では午前に雨が多く、陸上では午後に雨が多いことがわかります。

午前と午後の雨の分布
(クリックすると大きな画像が見られるよ)

●雨の分布と大気の循環

地表面が暖められて蒸発した水分は、上空に上っていくと、水滴や氷滴にかわります。これが雲です。雲の中の水滴や氷滴が成長すると雨粒となり、地表に落ちてきます。これが雨です。

雲の中では雨粒ができたり蒸発してなくなったりしています。その時、熱を出したり吸収したりします。雨がどこでたくさんできて、どこで蒸発してなくなっているかがわかると、そこの大気がどれだけ暖められているかということがわかります。つまり、上空のどこの高さのどこに雨があるかというのがわかると、そこでどれだけ熱が出たかということがわかります。この熱が 大気の循環を引き起こすエネルギーとなります。つまり、大気の循環は、雨の量を調べることによって見えてくるわけです。

世界の雨の約3分の2を占める熱帯地方の雨の分布が正確に把握できれば、地球規模の大気の循環の様子がより正確にわかることになります。

●TRMMと私たちの生活

私たちが熱帯地方の「雨」について調べている理由は、地球全体の大気の循環を理解し、私たちの生活の中で役立てるためですが、どんな分野で役に立っているのか紹介しましょう。

<天気予報>

天気予報はいつもあたっているわけでなく、時々はずれてしまうこともあります。天気予報がもっとあたるようにTRMMのデータが使われています。日本の天気を予報するときに、少し離れた海の方から雲がどのようにやってくるのかを知ることはとても重要です。これまでは気象衛星がとらえた雲から予報をしてきましたが、雲だけでなく雨や海水の温度の変化の様子がわかれば、予報がより正確になります。TRMMでは、雨の分布や海水温度の観測を行なっているので、このデータが天気予報にも活用されるようになってきました。

<気象災害を見守る>

台風や集中豪雨など気象災害により深刻な被害がもたらされることがあります。宇宙から気象災害を見守ることはとても重要なことです。

昨年(2004年)7月18日に福井で集中豪雨があり、たいへんな被害がもたらされましたが、これはその時の様子です。TRMMはこの日の午前8時前にこの豪雨を観測しました。この時間は、最も降雨が激しかった時間にあたります。上から見た画像を見ると雨が降っている地域が北西から南東にかけて伸びていることがわかります。また、福井県上空に赤色で示された非常に強い雨が集中的に降っていたことがわかります。

福井豪雨
上から見た雨雲の様子
雨雲の切り口(断面)を見たときの立体的な雲と雨の様子
(クリックすると大きな画像が見られるよ)

<漁業>

TRMMでは、降雨データの他に、海面の水温を測ることが出来ます。下の図は、それぞれの季節の海水の温度と漁場を重ねた図です。赤丸が「漁場」で魚がたくさんいるところです。温かい水と冷たい水の境目の「潮目」という場所に良い漁場があるといわれていますが、そのことは、この図からもよくわかります。

逆にいうと、衛星から取りたい魚が集まりそうな水温の場所を見つけて、そこに行けば、たくさんの魚がとれる可能性が高いということになります。


各季節のTMIによる日平均水温場と漁場位置
季節ごとの日平均水温と漁場の位置
(クリックすると大きな画像が見られるよ)

<農業>

TRMMでは、雨がどこにどれだけ降るのがわかります。それだけでなくて、土の中(地表面に近いところ)の水分の量を測ることもできます。つまり、上からと下からの両方の水の量を知ることができるので、農業にとても役に立ちます。

下の図は、1998年2月と8月の土の中の水分量を示した図で、青い色が水分量が多いことを示します。季節によって、土が湿っている地域が全く違うことがわかります。また8月のアジアでとても水分量が多いことがわかります。

土の中の水分量(土壌水分)の分布
(クリックすると大きな画像が見られるよ)


このようにTRMMのデータは私たちの生活に役立てられています。まだまだいろいろな分野で役立つ可能性があるので、TRMMのデータを活用してもっと多くの分野で役立てていきたいと思っています。


わたしたちの身近な「雨」を観察することで、地球のいろいろなことが見えてくるのね。最後に、将来TRMMを含めた地球観測の現場で働きたいな...と思っているみんなのために、どんな人がこの仕事に向いているか聞いてみたよ。

(清水さん)
好奇心が強くて、ものを見たときに「これはいったいなんだろう?」と思える人がいいですね。「なんだろう?」と思った時に、それを自分で調べてみるという意欲のある人が研究者には向いていると思います。

(広瀬さん)
わからないことがいっぱいあると思いますが、そんなのわからなくてもいいや...って、そのままにする人も多いと思います。でも、わからないことを自分自身の力でわかるように努力すること、また、そのことに喜びを見出せる人が向いていると思います。

もう一つ付け加えるとしたら、JAXAの職員は、研究だけでなく、衛星の計画を立てたりもしています。世界で今何が求められているか、その中で衛星を打ち上げるということはどういう意味があり、どういうことに役立つのか、どういうことに貢献できるのかなど全体を見通す力があることも求められますね。


清水さん、広瀬さん、どうもありがとうございました。

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