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地球が見える 2014年

バルカン半島で発生した大洪水

 2014年5月13日にアドリア海で発生した温帯低気圧タマラ(Tamara)が、14〜15日にかけてバルカン半島に停滞し、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアに集中豪雨をもたらしました。この低気圧は、偏西風の大きな蛇行により、上空の寒気が低気圧とともにバルカン半島に停滞した「カットオフ低気圧(Cutoff low)」で、この低気圧の南にアドリア海からの暖かく湿った空気が流入し続けたため、この地域で長時間激しい雨が降り続いたものです。

 降り始めからの降水量は、この地域の平均で100から200 ㎜、多いところで300 ㎜以上に達しました。5月15日の日降水量は各地でこれまで最高値を記録しました。またセルビアの首都ベオグラードでは、5月15日までの半月の降水量で、これまでの月降水量を超え、この地域の年間降水量の約3カ月分となりました。この大雨により、ボスニア・ヘルツェゴビナとクロアチア国境からセルビアに流れるサバ川や、その支流のボスナ川が増水・氾濫し、広域にわたって大規模な洪水や2,100か所にも及ぶ土砂崩れ・地滑りが発生しました。5月20日までに少なくとも死者62人、被災者は120万人にも及び、この地域ではここ120年で最悪の洪水被害となりました。さらにこの洪水では、ボスニア戦争(1992-1995)で残された22万個の地雷が流れ出る危険性が指摘されています。

 このバルカン半島での低気圧と洪水を、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)及び温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)等で観測しました。

 図1は2014年5月13日0時から17日0時(標準時、以下同じ)までの「世界の雨分布速報」(GSMaP)による降雨分布の動画です。静止衛星の雲画像にGCOM-W等のマイクロ波放射計で観測された降雨分布を合成して重ねていて、赤い色ほど強い降雨を示します。バルカン半島付近に低気圧が停滞することにより、強い降水域と雲がセルビアやボスニア・ヘルツェゴビナ付近に停滞し、この地域を中心に反時計回りに回転している様子がわかります。

「世界の雨分布速報」(GSMaP)による降雨分布の動画
図1 「世界の雨分布速報」(GSMaP)による降雨分布の動画

図2は5月15日にGOSATの雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)により観測されたバルカン半島上空の雲画像です。この地域を中心に、大きく渦を巻く雲の様子がよく分かります。

TANSO-CAIにより観測されたバルカン半島上空の雲画像
図2 TANSO-CAIにより観測されたバルカン半島上空の雲画像

 図3は洪水前後に相当する5月6日と21日にGOSATのTANSO-CAIが観測した画像です。TANSO-CAIセンサ バンド3の反射率で、上の図が東ヨーロッパ全体、下の図が洪水被害のあったセルビアやボスニア・ヘルツェゴビナとクロアチア国境付近(上図の矩形領域)を切り出したものです。水面では反射率が大きくなるので、洪水後にサバ川が氾濫して、水面が大きく広がっていることが分かります。

2014年5月6日観測2014年5月21日観測
2014年5月6日観測2014年5月21日観測
図3(左) 2014年5月6日観測      図3(右) 2014年5月21日観測

図4は、6日と21日で変化抽出された反射率の差分を青の濃淡で示し、21日の画像に重ね合わせたものです。青が濃いほど反射率の差分が大きいことを示し、洪水による変化が大きい箇所となっています。これを見ると、セルビア国内やボスニア・ヘルツェゴビナとクロアチア国境付近のサバ川の至る所で川が氾濫している様子がよく分かります。

6日と21日で変化抽出された反射率の差分を青の濃淡で示した画像
6日と21日で変化抽出された反射率の差分を青の濃淡で示した画像
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図4 6日と21日で変化抽出された反射率の差分を青の濃淡で示した画像

JAXAは、2014年2月28日に全球降水観測計画主衛星(GPM主衛星)を、5月24日に陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)が打ち上げました。今後GPM計画により、図1で示したような降水分布がより正確になります。また、だいち2号により、洪水で発生する土砂崩れ・地滑りを観測することができます。JAXAの地球観測衛星で、これからも高精度な災害観測を続け、情報を発信していきます。



観測画像について

観測衛星: 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)
観測センサ: 雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)
観測日時: 2014年5月15日 (図2)
2014年5月6日 (図3左)
2014年5月21日 (図3右)
変化抽出域の重ね合わせ(2014年5月6日、21日)(図4)

(図1)
世界の雨分布速報:
「世界の雨分布速報」では、世界の雨分布を準リアルタイム(観測から約4時間遅れ)で1時間ごとに、複数の静止・極軌道気象衛星と地球観測衛星の放射計やサウンダー(TRMM TMI, GCOM-W AMSR2, DMSP SSM/I, DMSP SSMIS, NOAA-19 AMSU, MetOp-A AMSU, GEO IR)のデータを一体的に利用して提供しています。なお、背景の雲画像には、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)の作成による全球雲データを利用しています。このデータは気象庁の静止気象衛星ひまわり(MTSAT)、米国海洋大気庁の静止気象衛星(GOES)、欧州気象衛星機関(EUMETSAT)の静止気象衛星(Meteosat)のIR情報を利用しています。


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画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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