地球が見える 2009年
ダイヤモンドの採掘跡、南アフリカ共和国
図1 南アフリカのキンバリー市近郊
図1はALOS(だいち)が2006年10月19日と2006年12月14日に撮影した南アフリカ共和国キンバリー市近郊の画像です。画像の中央右側に青白いところが見えますが、ここがキンバリーの町です。キンバリー市は、南アフリカ共和国の首都ヨハネスブルクから南西に400 kmのところにあります。画像の上側と下側には川が流れています。南アフリカ共和国の中心部を西に流れる大河オレンジ川は、キンバリー市の南方約120 kmにあります。画像の上側の川は、オレンジ川最大の支流であるヴァール川で、下側の川はその支流です。川沿いにオレンジまたは黒の丸い斑点が見えますが、これは円形農場です。このような、円の中心から散水機を回して水を供給する円形農場は、ほかの乾燥地帯にも多く見られます。 図2 キンバリー市の中心部
(Google Earthで見るキンバリー市(kmz形式、4.17MB低解像度版)) 図2は、キンバリー市の中心部の拡大画像です。画像の下側に、黒色の滑走路が交差しているキンバリー空港が見えています。画像の右側には乳白色の部分があり、いくつもの穴がありますが、ここが現在の採掘場です。町の中心部西側にも穴がありますが、水がたまって黒く見える半円形のこの穴が“ビッグホール”と呼ばれる採掘跡です。ビッグホールは1914年には廃坑となっていますが、人力で堀られた、世界で一番大きい穴といわれています。穴の周囲は1.6 km、240 mの深さがありましたが、現在は一部が埋められています。廃坑になるまでに約2,700 kgのダイヤが採取されたそうです。南アフリカにおけるダイヤモンド採掘の歴史を語るものとして世界遺産への登録の運動もおきています。 南アフリカとダイヤモンド
ダイヤモンドは、古くはインドから産出されました。南アフリカ共和国では1866年に、オレンジ川でダイヤモンドの原石が発見されたことにより発掘ラッシュとなりました。キンバリー市には採掘者が殺到し、彼らの採掘した跡がビッグホールです。画像からはいくつもの採掘場が見えますが、ほかの鉱物とは異なり、精錬といったプロセスがないため、町の規模としても大きくありませんし、付設の施設もあまりありません。 南アフリカの内陸部では、ダイヤモンドのほかに金も産出しています。このため、1880年と1899年にオランダ系の子孫であるボーア人とこれらの鉱山の利権を狙うイギリスとの間でボーア戦争が勃発しました。キンバリー市では、英軍がボーア軍に包囲されました。1902年に第2次ボーア戦争が終結しましたが、この結果現在の南アフリカ共和国の領土は、大英帝国に属することになりました。現在、ダイヤモンドの世界的な流通をにぎるデ・ビアス商会は、第1次ボーア戦争の最中にセシル・ローズが設立したものです。 図3 アフリカ南部
図3はNASAの地球観測衛星に搭載されているMODISによる南アフリカ南部の画像です。南アフリカ共和国の北側にボツワナがあります。オレンジ川が南アフリカ共和国の南部を西に流れ、ナミビア国境となり、大西洋に注いでいることが分かります。 南アフリカ共和国では、2010年の6月〜7月にサッカーワールドカップが開催されます。キンバリー市の採掘遺産も話題となるかもしれません。 観測画像について(図1〜2)
AVNIR-2 は、4つのバンドで地上を観測します。図は、いずれも可視域のバンド3(610 〜 690ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。
PRISMは地表を520〜770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。
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