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地球が見える 2009年

ヨーロッパへの郷愁を映しだす街並み、ブエノスアイレス

図1 ブエノスアイレス周辺図
図1は2008年3月に捉えたブエノスアイレス周辺の画像です。図中央に見える灰色の市街が南アメリカ大陸の大西洋側に位置するアルゼンチンの首都ブエノスアイレスです。人口約300万の南米有数の大都市であり、大西洋の一角に注ぎ込むラプラタ川の上流に港町として発展しました。図中央を斜めに流れる黄褐色の帯のような大河がラプラタ川です。その支流をなすパラナ川やウルグアイ川を含む流域は世界でも5番目の規模(360万平方km)を誇り、上流から運ばれた砂や泥のために黄色く濁って見えます。
ラプラタとは「銀」の意味のスペイン語です。大航海時代の16世紀初頭に、この地を探検したスペイン人が銀の産地と誤解したことから名づけられました。ラプラタ川の両岸(図右上のウルグアイ側と図左下のアルゼンチン側)に広がる緑地と耕地が迷彩を施したかのように見える大地は、肥沃な大平原のパンパです。そこではアルゼンチンの主産業である農牧業が営まれています。

図2 ブエノスアイレス市内拡大図
(Google Earthで見るアルゼンチン・ブエノスアイレス(kmz形式、5.13MB、低解像度版))
図2はブエノスアイレス市内の拡大画像です。市街はラプラタ川に面した平らなパンパの上に広がっています。市街中心部は区画された道路に沿って近代的な建物が並んでいるため衛星から眺めると方眼紙を敷いたように見えます。都市発展の基点となったブエノスアイレス港はラプラタ川に突き出た長い埠頭が目印です。港の傍には、パンパの農畜産物を港まで運ぶために敷設された鉄道線路が見えています。その発着点となるのがネオ・ゴシック様式の欧風駅舎で知られるレティーロ駅です。駅直下の緑豊かな区域はサンマルティン広場です。そこには19世紀初頭に始まったアルゼンチン独立運動を指揮したサンマルティン将軍の勇壮な騎馬像が立っています。

図左上に見えるパレルモ地区の広大な緑地は「2月3日公園(通称パレルモ公園)」です。総面積400ヘクタールの敷地内にはゴルフ場、競馬場、テニスクラブ、動物園、バラ園、日本庭園などの娯楽施設があり、まさに市民の憩いの場となっています。
アルゼンチンといえばタンゴが想起されますが、芸術に対する市民の関心は高く、市内には数多くの劇場・美術館があります。なかでも2008年に創立100周年を迎えたコロン劇場は、ミラノのスカラ座、パリのオペラ座と並ぶ世界三大劇場のひとつと言われ、市街を南北に貫く「7月9日大通り」に面しています。劇場近くの大通りの中央に丸く見える塔は市内観光の道標ともなる白亜のオベリスコです。そこから斜行する通りの先にある茶色の空地が「5月広場」です。その名は独立運動のきっかけとなった1810年の5月革命に由来します。広場の正面に見えるピンク色の建物は大統領府(カサ・ロサーダ)です。その前庭の位置を占める広場は、大統領就任時、抗議デモなど、事あるごとに大勢の市民が集まる場所でもあります。
アルゼンチンは熱狂的なサッカー国として有名です。2008年の北京オリンピックで金メダルに輝いたことは記憶に新しいところです。その人気を裏付けるように市内にはサッカー場がいくつも見えています。図右下の旧市街ボカ地区にあるのは人気クラブ「ボカジュニアーズ」のスタジアムです。アルゼンチンが1986年ワールドカップメキシコ大会で優勝したときの中心選手マラドーナもかつてこのクラブに所属していました。ボカはヨーロッパからの移民が最初に上陸したところで、タンゴ発祥の地としても有名です。

アルゼンチンは、地球上のあらゆる気候を一国で体験できるとたとえられるほど、南北に長く(約3,800km)、日本の約7.5倍(約280万平方km)の広大な国土を有する国です。その国名は「銀」という意味のラテン語「アルヘントゥム」に由来します。全輸出品の80%を農畜産業が占める農業国ですが、近年国名に違わぬように鉱業にも積極的に投資を始めました。ブエノスアイレスは、その長大な国土のほぼ中央に位置し、日本と同じく(南半球に位置するため夏・冬は正反対ですが) 明瞭な四季のある穏やかな気候帯に属しています。そこに広がる光景は19世紀に施行された移民政策によってもたらされた多様な外国文化と新大陸特有の自由な気風の賜物です。特に、欧風建造物を散りばめた街並みは、「南米のパリ」と称されるほどに、遥かなるヨーロッパへの郷愁を濃厚に映し出しています。



観測画像について:


観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
パンクロマチック立体視センサ(PRISM)(図2)
観測日時: 2008年3月16日13時59分頃(世界標準時)(AVNIR-2、図2左PRISM)
2008年5月 1日13時58分頃(世界標準時)(図2右、PRISM)
地上分解能: 10m(AVNIR-2)および2.5m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2 は、4つのバンドで地上を観測します。図1は可視域のバンド3(610 〜 690ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)とバンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

緑色: 草地、農地
灰色: 市街地、道路
赤っぽい茶色: テニスコート
黄褐色: ラプラタ川の濁水
深緑色: ラプラタ川のデルタ地帯

(図2)
PRISMは地表を520〜770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。
AVNIR-2の、バンド1 (420〜500ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド3 (610〜690ナノメートル)を青、緑、赤色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5mのカラー画像を作成することができます。図2はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
世界の瀑布(その3) 大地を揺るがすイグアスの滝、アルゼンチン・ブラジル
光学センサとマイクロ波レーダによる、湿原モニタリング
二つの森と環状道路に囲まれた芸術の都:パリ
アンデス山脈とグランチャコ
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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